「出る杭は打たれる」の意味や言い換え方は?類語・対義語も紹介

「出る杭は打たれる」は、日本社会の風潮をよく表すことわざであるため、時事を扱う記事などでもよく使われます。また、一部を言い換えて使うことも多いことわざです。

この記事では、「出る杭は打たれる」の意味や言い換え方・使い方を紹介します。あわせて類語や反対の意味の言葉や英語表現も紹介しますので参考にしてください。

「出る杭は打たれる」の意味や言い換え方・使い方とは?

「出る杭は打たれる」の意味①”才能のある人は妬まれる”

「出る杭は打たれる」の意味は、“才能のある人は妬まれる”です。才能があって人より抜きんでている人や、手腕があって頭角を現す人は、とかく他の人から嫉妬されたり、邪魔をされたりするということわざです。

とくに会社内や、学校、閉鎖的なグループなどでこのような状況がおきやすいといえます。人間の嫉妬心が、自分よりも才能のある人を排除しようとしたり、攻撃したりしてしまうという風潮をたとえています。

「出る杭は打たれる」の意味②”余計なことをする人は非難される”

二つ目の「出る杭は打たれる」の意味は、余計なことや、さし出たことをする人は、他の人から非難されたり、制裁を受けたりするものだ、という意味です。

嫉妬心から攻撃するという心理とは別に、自分や仲間たちとは違う考え方や行動を取る人を排除しようとする心理からの行動をたとえています。その風潮の根底には、違うものに対する不安や同調圧力が働いているといえます。

「差し出る杭は打たれる」「出る釘は打たれる」とも言う

「出る杭は打たれる」は、並んだ杭が1本だけ差し出て高ければ、他の杭にそろうよう打たれることをたとえているため、「差し出る杭は打たれる」と言われることもあります。

また、「杭」ではなく「釘」を使って「出る釘は打たれる」と言う人も一定数いることが文化庁の調査でわかっています。これは本来は誤りですが、今後用いる人が多くなれば、言い換えも可能という方向になっていくかもしれません。

「出過ぎた杭は打たれない」「出ない杭は朽ちる」などの言い換えもある

松下幸之助の名言として、「出る杭は打たれるが、出過ぎた杭は打たれない」がよく知られています。他に「出ない杭は朽ちる」という言い回しも流布しているようです。これらは、「出る杭は打たれる」の風潮に対するアンチテーゼとして、共感を覚える人が多いようです。

他にも、「「出る杭」にならないように気をつける」などと言ったり、「叩かれないように「出ない杭」に徹する」など、ことわざの一部だけを使うことがあります。また、権力支配の様子を表現するために「出る杭はすべて打つ」などと言い換えることもあります。「出る杭は打たれるというが、出る杭は抜かれるこもある」と言った政治家もいたようです。

「出る杭は打たれる」を使った例文

「出る杭は打たれる」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。

  • 「出る杭は打たれる」という風潮の会社では、イノベーションは望めない
  • 「出る杭は打たれる」というから、目立つ行動をしないようにとたしなめられた
  • 「出る杭は打たれる日本」のままでは世界と競争できないだろう
  • 「出る杭は打たれる」などと恐れずに、自由に発言できる環境づくりが大切だ
  • 世の中は「出る杭は打たれる」だから、思いがけないところで足をすくわれかねない

「出る杭は打たれる」の類語とは?

「出る杭は打たれる」の類語のことわざや慣用句を紹介します。

類語のことわざは「雉も鳴かずば撃たれまい」

「雉も鳴かずば撃たれまい(きじもなかずばうたれまい)」とは、雉は鳴かなければ撃たれることもなかったのにという意から、余計なことを言うと災いを招くことのたとえです。余計なことをしないことだという意味の「出る杭は打たれる」と同じく、教訓的に使われます。

同じ意味を表す慣用句は「分をわきまえる」

「分(ぶ/ぶん)をわきまえる」とは、自分の身の程をわきまえて、出過ぎたことをしないように戒める言葉です。自分の程度を知って相応の行動をするようにという意味で使われますが、「出る杭は打たれる」の意味である「余計なことをすると非難される」と同じ意味で使われることもあります。

同じ考え方を表す慣用句は「横並び精神」「横並び志向」

日本人の社会行動をよく表しているといえる「出る杭は打たれる」社会は、「みんな一緒であるべきだ」という考え方が根底にあるともいえます。異質なものを嫌い、同質性を求める風潮は、「横並び精神」「横並び志向」という慣用句で表すことができます。

「出る杭は打たれる」の対義語・反対語とは?

「出る杭は打たれる」の対義語のことわざや、反対の意味の言葉を紹介します。

反対の意味のことわざは「義を見てせざるは勇無きなり」

「義を見てせざるは勇無きなり(ぎをみてせざるはゆうなきなり)」とは、人としてすべき正しいことを知りながら、それをしないのは勇気がないからだという意味です。出典は『論語』です。「勇」とは「勇気」のことです。

「義を見てせざるは勇無きなり」は、「出る杭は打たれる」からと、信条に反して行動しない人の戒めの言葉であるともいえます。

反対の意味の名言は「出過ぎた杭は打たれない」

松下幸之助の名言として伝わる「出る杭は打たれるが、出過ぎた杭は打たれない」は、「出る杭は打たれる」へのアンチテーゼとして、「出過ぎた杭は打たれない」の部分を引用する人が多いようです。

「出過ぎた杭は打たれない」とは、批判を恐れずに強い気持ちを持って自分の信じる道を進むべきだという意味や、それくらいの気持ちがないと、新しいビジネスを推進していくことはできないという意味があるといえます。いずれにしても中途半端な気持ちや批判を恐れていては、良い仕事はできないという戒めの意味がくみ取れます。

反対の意味の慣用句は「我が道を行く」

「我が道を行く」は、周囲の雰囲気や世間の風潮に左右されず、自分の信念を貫くという意味の慣用句です。「出る杭は打たれる」という風潮には迎合しない考え方であるといえます。

「出る杭は打たれる」の英語表現とは?

英語にも「出る杭は打たれる」に近い意味の英語表現や、ことわざがありますので紹介します。

英語表現は”People that stick out too much get punished.”など

「出る杭は打たれる」の意味に類似する英語のことわざはたくさんあります。目立つ人を叩いたり、自分より優れた人に嫉妬するのは万国共通だということでしょう。わかりやすいものを紹介します。

  • 「People that stick out too much get punished.」(直訳:出過ぎる人はひどい目にあう)
  • 「Standing out from the crowd just invites trouble for yourself.」(直訳:周りの人より目立つと自らにトラブルを招く)
  • 「Envy is the companion of honour.」(直訳:嫉妬は名声の伴侶)

まとめ

「出る杭は打たれる」のことわざは、「才能のある人は妬まれるものだ」「余計なことをする人は非難されるものだ」という日本社会の風潮を表すことわざです。みんな同じでいるべきだ、という同調圧力や、横並び主義を表しているともいえます。

「出る杭は打たれる」という風潮は、多くの人は良いものだとは考えていないことから、アンチテーゼとして「出過ぎた杭は打たれない」や「出ない杭は朽ちる」などの言い換えも広く知られており、引用する人も多いようです。