工具として使われる「クランプ」や看護用語としての「クランプ」など、「クランプ」は分野ごとに異なった意味を持つカタカナ語です。またクランプに似た言葉のクランプスという名の魔物までいます。
今回は「クランプ」の意味を、工具、看護、ダンスの分野ごとに解説します。加えて、魔物であるクランプスについても説明します。
「クランプ」は領域ごとに意味が異なる
「クランプ」の基本的な意味は、「締める」です。しかし、看護用語や工具を表す言葉・ダンスなど、使われる領域によって異なった意味を持っています。
例えば、工具としての「クランプ」と看護用語の「クランプ」は語源は違うものの「締める」という意味は共通していますが、ダンスのひとつである「クランプダンス」や魔物の「クランプス」は語源も意味も異なります。
看護に関わる「クランプ」の意味とは?
「クランプ」は”遮断する”の意味
看護や医療で使われている「クランプ」は、“遮断する”という意味でよく使われています。ドイツ語の「clamp」(読み:クランプ)が語源で、組織や器官を医療用の器具ではさんで固定して体液などの液体の流れを遮断するときに使われる言葉です。
「クランプ」には”鉗子・医療用クリップ”の意味もある
「クランプ」には、“鉗子(かんし)”または“医療用クリップ”という意味もあります。鉗子や医療用クリップとは、はさみのような形をした医療用器具で、器官などをはさみ固定して引っ張ったり圧迫したりするために使われる道具です。
「クランプ」は”こむらがえり”のことも指す
「クランプ」には、痛みを伴う、部分的な筋肉の痙攣という意味もあります。「こむらがえり」とも呼ばれる痙攣で、走ったり泳いだりしているときにふくらはぎなどの筋肉が硬直して痙攣を起こします。寝ているときに寝返りを打った時などの、静から動への小さな動きでもクランプが起こることがあります。
クランプの起こる原因は、筋肉疲労または大小にかかわらない筋肉への刺激と考えられています。
工具としての「クランプ」の意味とは?
工具の「クランプ」の意味は”はさんで固定する金具”
工具で使われる「クランプ」(英:clamp)とは、機械工作などで二つの物の面と面を重ね合わせたものを“はさんで固定するための金具”です。クランプは作業台と材料を固定するときにも使われます。
形状の異なるたくさんの種類があります。一部を紹介すると、シャコ万力と呼ばれるB型クランプやC型クランプは手のひらほどの大きさのクランプで、F型クランプはシャコ万力ほど締め付ける力が強くないものの、締め付け部分の開閉操作がしやすくなったクランプです。
「足場クランプ」とは”足場の鋼管を締め付ける金具”
「足場クランプ」は単管クランプとも呼ばれるクランプで、工事現場などで足場を作るための単管パイプを固定するために使われる金具です。足場クランプに単管パイプを挟み込み、ナットをラチェットレンチと呼ばれる工具で締めることで単管パイプが固定されます。
足場クランプとしてよく使われる種類は次の3つです。
- 直行型クランプ:単クランプが連結されていて、単管を直角に交差させて固定させるためのクランプ。
- 自在型クランプ:二つの単クランプが連結されていて、単管を好きな方向に固定することができるクランプ。
- 3連クランプ:直行型クランプか自在クランプの間に、単クランプを挟み込んだ3連式のクランプ。
「クランプメーター」とは”電流を測定する器械”
クランプメーターとは、電流を測定する器械です。クランプメーターが開発される以前は、電流を測定するためには回路を切断しなくてはいけなかったのですが、クランプメーターにより電流を流したまま、感電の恐れなしに電流を測定できるようになりました。
日本語で「架線電流計」と呼ばれるクランプメーターの使い方は簡単で、クランプメーターにコードをはさむだけです。電流が流れるとそのコードの周りに起こる磁場を利用して電流を測ります。
クランプメーターには、家庭用電流だけを測定できるものから、直行電流や交流電流を測定できるもの、また電圧や抵抗値も測れるクランプメーターなどさまざまあります。
ダンスのジャンル「クランプダンス」とは?
「クランプダンス」はロス発祥のダンス
「クランプダンス」とは、アメリカのロサンジェルスが発祥のダンスで、過酷な環境で生きるスラム街出身の若者たちのエネルギーの発散の手段として生まれました。クランプ(krump)またはクランピング(krumping)とも呼ばれ、胸や腰を大きく動かして怒りなどの激しい感情を表現しています。相手を威嚇するような動きも含まれています。
クランプダンスを踊るダンサーのことをクランパー(Krumper)と言い、現在では世界中に広まり各地でダンスバトルも開かれています。
魔物「クランプス」とは?
「クランプス」とは聖ニコラウスについて歩く魔物
「クランプス」(独:Kramps)とは、クリスマス前の12月6日(地域によっては5日)に、聖ニコラウスとともに子供たちのところにやってくる魔物です。クランプスの形相は恐ろしく、子供がいい子ならば聖ニコラウスからプレゼントをもらえますが、悪い子だと聖ニコラウスに命じられたクランプスにお仕置きをされます。
クランプスを連れて歩く聖ニコラススの行事は、主にドイツの南部やオーストリア、スロヴァキアなどのヨーロッパ中部で行われています。
聖ニコラウスはサンタクロースのモデル
クランプスを同行する聖ニコラウスとは、4世紀中旬、ローマ帝国リキュア地方の都市ミュラで大主教です。ミュラのニコラウスとも呼ばれて、キリスト教では聖人として崇められています。
貧しい娘たちに施しを与えたという伝承から、サンタクロースのモデルになったと言われていますが、赤い服を着ていたかは不明です。しかし、現存する聖ニコラウスの肖像画や彫刻には、サンタクロースのように白いひげをたくわえた司教として姿が描かれたことが多いです。
まとめ
「クランプ」という言葉は工具や看護用語、またダンス名としても使われていました。またクランプに似たクランプスは、ヨーロッパの伝承行事に登場する魔物で子供たちから恐れられています。