小説や舞台などで「伏線」という言葉が登場することがあります。話の筋やほのめかすようなニュアンスで使われますが、「伏線」の主旨や定義をご存知でしょうか?
今回は「伏線」の読み方や意味、使い方やよく使われる熟語表現、類語についてまとています。早速「話の展開」に大きく関係する「伏線」について解説しましょう。
「伏線」の読み方と2つの意味とは?
「伏線」の意味①”それとなく展開を呈示すること”
「伏線」の意味は、小説や映画などの創作作品において“話の展開において、これから起こる事柄やアイテムなどをほのめかすよう準備や仕込みをすること”です。簡単に言えば「ストーリ展開で必要な物事を読者や視聴者に気付かれないように呈示しておくこと」となりますが、視聴者が知りたいことに対し「ひそかに、気づかれないように、事前に事柄をほのめかす」のがポイントとなります。
たとえば、話の後半で主人公が訪れる場所やストーリーのカギとなるアイテムを、事前に「何となく」気付かれないように呈示し、後に「あ~、あのシーンは、実はこのことをほのめかしていたんだ…」と感じるような内容を指します。
「伏線」は明確にはっきりと表すのではなく、視聴者に「こうなるかもしれない」と好奇心をそそるように暗示することなのです。
「伏線」の意味②”将来に向けて事前に準備しておくこと”
「伏線」のもう一つの意味は、“ものごとが上手く行くように、将来に向けて事前に準備しておくこと”です。つまり、後に起こることに対し、事が上手く運ぶよう前もって備えておくことを指します。
先々に起こることに対しあらかじめ上手に手を打ち、プラン通り進むように行動をすることを意味しています。
「伏線」の「伏」「線」それぞれが持つ意味
もともと「伏線」の「伏」には「身体を低く保ち、うつむきになる」や「物の下に潜む・隠れる」などの意味があります。「線」は「話やものごとの筋」や「何かを通すための道筋」などの意味を持ち、またそれらを抽象化して考えたものを表す言葉でもあります。
「伏線」の読み方は”ふくせん”
「伏線」の正しい読み方は“ふくせん”です。「伏線」の「伏」は「ふせる」「ふす」と読みますが、この場合は音読み「フク」を使い「ふくせん」となります。「ふせん」や「ふしせん」などと読まないようにしましょう。
「伏線」の使い方とよく使われる熟語表現とは?
「伏線」の使い方とよく使われる熟語表現の例文を紹介します。
「伏線」は特にサスペンスや推理系の作品で必須項目
サスペンスものや推理小説など、自身の脳裏で「あれこれ」と考えや可能性を巡らす必要がある作品では「伏線」の存在は非常に大きなものとなります。ぜなら、「伏線」の最も大きな効果は「読者や視聴者の興味や好奇心をそそること」にあるからです。
「伏線」という言葉が主に使われるのは、やはり小説や映画などの創作作品いついて語り合う場面と、将来の計画やプランに対し用意周到に行動する時でしょう。「伏線」には2つの意味があるので、基本的な使い方をそれぞれマスターしておくことが大切です。
伏線を敷く・伏線を張る
伏線を使った熟語表現でよく使われる「伏線を敷く」「伏線を張る」について、例文を挙げてみます。
<ストーリ展開をほのめかす意味で使われる場合>
- このサスペンス映画は謎解きの殷ととなる伏線が至る所に敷かれていた。
- 冒頭で伏線が敷かれていたが、最後まで全く気付かず読み通してしまった。
- お気に入りのドラマでまさかの急展開。あのシーンで伏線が敷かれていたとは…。
- この推理小説は伏線が張り巡らされた素晴らしい作品である。
- 伏線が張られた場面を思い出した。あのアイテムが主人公の命を救うなんて…。
<計画への事前準備の意味使われる場合>
- 部長に電話して、今回の遅刻に対して伏線を張っておいたほうがいいよ。
- A社に提案を断られた時のために、言い争いにならないよう伏線を張っておこう。
- 用意周到に計画を進めるなら、要所要所に伏線を張り巡らせるほうが懸命だ。
- 会議で話が脱線しないように、口達者の田中を司会にすべく伏線を張っておいてくれ。
伏線を回収する
「伏線を回収する」はストーリー展開について使われる熟語表現で、伏線で事前にほのめかした部分が「後の展開として実る時」に使われます。つまり「伏線」で敷かれた後への品とが見事に花開く「ああ、このことか」という部分となります。
期待するストーリー展開の答えが予想通りになる場合もあれば、伏線に気づかず予想が外れることもありますが、「回収する」という言葉を加えて、「伏線で提示したヒントの答えがわかる」という意味で使われます。以下に例文を挙げてみます。
- この探偵小説では、クライマックスで見事に伏線を回収した。
- ドラマの最終回で伏線を回収した時「やっぱりこうなった」という満足感で一杯になった。
「伏線」の類語とは?
「伏線」と似たような意味を持つ類語はあるのでしょうか?
「布石」は囲碁用語で”要所に石を配置すること”
「伏線」の類語に「布石(ふせき)」があります。「布石」は囲碁用語の一つで、碁を打つ初めの段階(序盤戦)で、勝つための戦略を立てながら、要所に石を配置することを意味します。
また、囲碁の世界のみならず一般的にも意味が転じて「将来に備えた準備や用意をする」「将来に向けて手配りをする」「ものごとへの土台作りをする」という意味でも使われています。布石を使った例文を以下に挙げてみましょう。
- 海外進出の実現に向けて布石を打っておく。
- あらかじめ布石を打ちながら、未開マーケットへの挑戦に挑む。
「伏線」の類語は”示唆”や”下準備”など
「伏線」で「ストーリー展開を事前にほのめかす」という意味での類語は「示唆」「暗示」「諷示(ふうじ)」「手がかり」「ヒント」などがあります。物語の伏線は、すなわち「ヒント」や「手がかり」であるように、のちに続く話の行方について「示唆」したり「暗示」たりするのが「伏線」とも言えます。
また、「将来の計画を上手に行うために用意をすること」という意味の類語には「下準備」「道具立て」「手筈(てはず)」などがあります。将来に向けての土台を築き、事前に用意をすることというニュアンスを考えれば、これらの類語がが当てはまるでしょう。
「道具立て」も「手筈」は下準備を指す言葉ですが、言い換えをすると期は文脈によって適切なものを選ぶようにして下さい。
まとめ
「伏線」を入れる効果は読者や観客のドキドキ感を増長させ、これから展開されるストーリーについて、マックスの状態まで興味を引き付けることです。映画や小説に対し「観たい」「読みたい」という欲求をさらに刺激するのが「伏線」であり、「伏線」を時には隠したり、時には見せたりすることで、視聴者の脳に焼き付けて行くという目的があります。
また「伏線」の読み方は「ふせん」ではなく「ふくせん」です。言葉の意味や使い方、また「伏線」の効果と併せて、ぜひ覚えておきましょう。