「ご配慮」という言葉はビジネスシーンでよく耳にします。意味は何となくわかるものの「配慮って具体的には何のことだろう?」と疑問に思っている人は多いのではないでしょうか。今回は「ご配慮」の正しい使い方や、よく似た「お気遣い」との違いについても解説します。この機会に「ご配慮」を正しく理解しておきましょう。
「ご配慮」の意味と読み方
ご配慮の意味は「考えたことを配る」
「ご配慮」とは自分以外の人や物事を気遣って振る舞うという意味です。日常の人付き合いや、ビジネスシーンの多くでは、あらゆることに対して「どうすれば良いか」と「考えて」行動することが求められます。考える方としては、相手の立場に立って考えたり、物事のスムーズな進行についてなど、トータル的に「考え」なくてはいけません。
読み方は「ごはいりょ」
「ご配慮」は「ごはいりょ」と読みます。
「ご配慮」の「慮」は「おもんぱかる」とも読み、「考える」「用心する」という意味を持っています。配慮とは自分以外の人や物事についておもんぱかる気持ちを周囲に配ることです。この「自分以外の人や物事」について「考えて」「その気持ちを配る」ことが「ご配慮」と言えるでしょう。
「ご配慮」の使い方
目上の人への感謝の気持ちを表す
たとえば、目上の人が自分のことをいつも心配してくれていたり、何かと気遣ってくれているとしたら、その方へは「いつもご配慮いただきありがとうございます」という言葉で感謝の気持ちを伝えることができます。
お礼の言葉と言えば「ありがとうございます」ですが、間柄が特別であったり、相手からの恩が大きい場合は、使い慣れたお礼の言葉では気持ちを伝えきれない気がするものです。そんなときに「ご配慮」を使えば「あなたがいつも私のことを慮って、気にかけてくれていることに感謝しています」という、具体的な想いを伝えられます。
注意を促すときにも「ご配慮」は使える
「ご配慮」が「考えて行動する」という意味を持つことはお話しましたが、これは必ずしも相手への純粋な思いやりが真意であるとは限りません。たとえば、「注意してください」「気をつけてください」など、相手に対して「よく考えてから行動してください」と伝えたいときにも「ご配慮」は使われます。
「本日の会議は非公開のため、録音録画などはお控えいただきますよう、ご配慮ください」などとすれば、暗に「非公開ですから、音源や映像を持ち出すことはできません、考えて行動してください」と相手の行動を抑止しています。このように「ご配慮」という言葉がでてきても、場合によっては
自分が相手を思っての行動は「配慮」
「ご配慮」の「ご」は敬語表現なので、自分以外の人にしか使いません。「ご配慮」の「ご」を取ると、自分の振るまいについて使うことができます。たとえば、ビジネスシーンで来社されたお客様が「道に迷って遅くなってしまった」という場合に「さようでございましたか、少々道が入りくんでおりますので、お迎えに上がるべきでした。配慮が足らず失礼をいたしました」などと使えば、単なるお詫び以上の気持ちを伝えることができます。
その他にも、これから起るかもしれない事柄について「気をつけておきます」と言いたい場面でも「配慮いたします」とすれば、ビジネス感も出ますし、真摯に受け止めている印象を相手に持ってもらうこともできるでしょう。
「ご配慮」の類語
「ご配慮」の類語「ご厚情」
「ご配慮」の類語「ご厚情」は相手から受けた親切を意味します。相手から何かをしてもらった事実よりも、自分のために何かをしたいと思ってくれた気持ちがうれしい、ということがあります。つまり、相手からの「親切」や「情」です。これを「ご厚情(ごこうじょう)」といいます。
厚情とは、文字の通り「厚い情」のことで、相手が自分に向けてくれた気持ちそのものに対しての感謝の気持ちを表します。「格別のご厚情を賜り、心より感謝申し上げます」などとして、お礼の言葉に使われることが多いでしょう。
ちなみにご厚情は相手に対してのみ使う言葉なので、自分が相手に情をかけたことについては基本的には使いません。
「ご配慮」の類語「お気遣い」
「ご配慮」の類語「お気遣い」は心配する気持ちを意味します。そのため「お気遣いに感謝いたします」などの言葉で使われる「お気遣い」は「ご配慮」ととても似ている言葉です。「気遣い」の「遣い」には、相手に差し向けるという意味があります。つまり「自分の気持ちを相手に差し向けて、それを相手のために役立てて欲しい」という思いが「気遣い」です。
「ご配慮」と「お気遣い」の違いは、気遣いの方がやや「心配」のニュアンスが強いことです。日常的な言葉にすると「大丈夫ですか?」と相手に問いかけるような気持ちが、気遣いに近いでしょう。相手が自分のことを心配してくれている気持ちを感じたときに「お気遣いありがとうございます」など、お礼として伝えることができます。
「お気遣い」の「お」を取って「気遣い」とすれば、自分の行動を表すこともできます。ただし「配慮」と同じで、自分の至らなさを詫びるときに使う程度です。
よく使われる「ご配慮」の例文
「ご配慮のほどお願い申し上げます」の使い方
相手に対して「気をつけておいてください」と注意やお願いをするときに使えます。「気をつける」という言葉はいろんな側面を持っていますが、多くの側面で「ご配慮」に置き換えて良いでしょう。「本日来社される○○様には、日頃よりご愛顧いただいておりますので、皆さまご配慮のほどお願い申し上げます」などと使うこともできます。失礼がないように各自注意してください、ということです。
ただし、状況によっては「やめてください」「困ります」など、強い否定を表していることもあります。特に格式のある場所や、オフィシャルな場面では、このような拒否の意味で使われていることがあるので、解釈を誤らないようにしましょう。
「ご配慮いただきありがとうございます」の使い方
自分のために、考えて気を配ってくれた方へのお礼の言葉として良く使われています。「ありがとうございます」の部分を「感謝いたします」「痛み入ります」など他の言葉に変えても問題ありません。
お礼で使われる「ご配慮」には「いろいろと気遣ってもらった」というニュアンスがありますので、してもらったことを一つひとつ挙げはしないがとても感謝している、という気持ちを伝えることもできます。
「寛大なご配慮に感謝いたします」の使い方
相手が自分のことを慮って、こちらの都合が良いように取り計らってくれた場面でのお礼の言葉として「寛大なご配慮」は良く使われています。寛大という言葉が入ることで、大きな気持ちで受け入れてくれた、という状況を表すことができるためです。
これは自分に何かしらの落ち度があり、相手にそれを許してもらったり、寛大な処置をしてもらったときに使いやすい言葉です。「私の不注意でご迷惑をおかけしたにも関わらず、寛大なご配慮に感謝いたします」などと使います。
「ご配慮いただければ幸いです」の使い方
相手に「察して欲しい」という気持ちを伝えたいときに使える言い方です。ビジネスシーンなどでは、相手に話したくても話せないことや、どうしても引き受けられないことがあります。それを「言えません」「できません」と突っぱねるのではなく「ご配慮」という言葉を使って、やんわりと拒否することもできます。
「この資料は、まだ社外秘のためご配慮いただければ幸いです」などと言えば「あなたには見せられません」または「誰にも見せないでくださいね」という意味になります。
「配慮が足らず申し訳ございません」の使い方
自分の落ち度を詫びるときにも「配慮」は使うことができます。「考えて行動する」ということが、自分の中で欠けてしまったことによって、相手に迷惑をかけたり不快な思いをさせてしまった場合です。
「この度はご不快な思いをさせてしまいました。私の配慮が足らず申し訳ございません」などとすることで「自分がもっと気をつけておけば良かった」というお詫びの気持ちを伝えることができます。
まとめ
「ご配慮」という言葉には、相手のことを考えて行動するという、思いやりの気持ちが詰まっています。普段何気なく考えている「どうすれば喜んでもらえるか」という気持ちそのものが「配慮」です。「ご配慮」という言葉には言葉の意味以上の温度があります。相手からの温かい思いやりを感じたら「ご配慮ありがとうございます」と伝えてみませんか?