「いただきます」は、生き物のいのちを「いただく」という意味をもつ食前のあいさつとしてよく知られていますが、では食後の「ごちそうさま」の意味をご存じでしょうか?今回は、「ごちそうさま」の意味や由来について説明します。
「ごちそうさま」の意味とは?
本来の意味は「もてなしのお礼」
「ごちそうさま」は本来「もてなしのお礼」という意味です。「馳走」という漢字には、どちらも「はしる・はしらせる」という意味があり、もともと「奔走」をあらわす言葉です。
今のように物質が豊かではなかった時代、大切な客人をもてなすためには走り回って準備を整える必要がありました。このことから、「ごちそうさま」は手厚いもてなしを受けた時のお礼のあいさつでしたが、近代になって食後のあいさつとして用いられるようになりました。
「ごちそうさま」は漢字で「御馳走様」
「ごちそうさま」は漢字で「御馳走様」と書きます。
「御馳走」は「馳走(ちそう)」に「御」を付けた丁寧語で、最後の「様」は「お疲れ様」「お互い様」「お世話様」のようにものごとを丁寧にいうときに用いられます。「お(ご)~さま」という言い方は丁寧なだけでなく、短い言葉の中にたくさんの気持ちを込めることのできる便利な表現です。
「ごちそうさまです」「ごちそうさまでした」でもっと丁寧に
今では食事の支度を整えてくれた人への感謝をあらわす言葉として定着している「ごちそうさま」ですが、料理した人やごちそうしてくれた人に「おいしかったです」「お腹いっぱいになりました」と食後の満足感を伝える意味で「ごちそうさまでした」と過去形にするのが一般的です。自分が作ったお弁当を食べて「ごちそうさまでした」という場合は、食前の「いただきます」に対して「(いのちを)いただきました」という感謝を意味します。
「ごちそうさま」と言われたら何と返事する?
飲食店で「ごちそうさま」といえば「ありがとうございました」という返事がかえってきますが、それ以外では何と応えればよいでしょう。
謙遜して「お粗末さまでした」
家で家族が「ごちそうさま」といった場合、作った人は「はい」とシンプルに返事をする人が多いようです。年配の人を中心に「おそまつさまでした」という謙遜の表現も古くから使われていますが、近年はややネガティブな印象があるとして避ける人も増えています。
「お口に合いましたか」でスマートに
「はい」だけではちょっと味気ないというときや、飲食店で食事をご馳走したとき、自宅に人を招いたときなどに「お口に合いましたでしょうか」と答える人も多いです。
意味合いとしては同じ謙遜ですが、「お粗末」ではご馳走になった人が何となく恐縮してしまうのに対して、「お口に合いましたか」と聞いてもらえると「おいしかったです」とスムーズに感謝を伝えることができるのでおすすめです。
「食後のあいさつ」以外での「ごちそうさま」の用法
「ごちそうさま」は食べ物のお礼としても使える
食べ物をいただいたときのお礼として、食べる前から「ごちそうさまです」ということもあります。
お礼としてはややカジュアルな表現ではありますが、気軽なお土産やおすそ分けをいただいたときに「ごちそうさまです」を使うことで、より親密な感謝の気持ちを伝えることができます。この場合は「ごちそうさまでした」と過去形にしないのがポイントです。
「ごちそうさま」は「のろけ」を聞かされた時にも使える
幸せの真っただ中にある新婚さんに近況を語らせると、何でもないことが初々しく感じられて「惚気(のろけ)」に聞こえてしまうもの。
そんなとき、「幸せのおすそ分け」への感謝として「ごちそうさま」という場合もあります。のろけに限らず、普通は愚痴になるような「今朝、生ごみを出してきました」「門限に遅れて締め出されました」といった内容でも、「ごちそうさま」と返すことで「のろけ」に変換されてしまう魔法の言葉です。
「ごちそうさま」は外国語で何という?
日本語の「いただきます」や「ごちそうさま」のような食事のあいさつは外国には存在しないといわれますが、それに相当する直接的な表現や感謝の言葉があります。ここでは、外国語で「ごちそうさま」といいたいときに役立つフレーズをあつめました。
英語の「ごちそうさま」
- Thank you for the delicious [Wonderful] meal.(おいしい食事をありがとう)
- I’m done.(食べ終わった)
- I’m stuffed.(お腹いっぱい)
イタリア語の「ごちそうさま」
- Era molto buono.(とてもおいしかった)
- Era tutto molto buono.(ぜんぶおいしかった)
中国語の「ごちそうさま」
- 我吃飽了、都很好吃(おなかいっぱいです、おいしかった)
- 谢谢你请我吃饭(おごってくれてありがとう)
韓国語の「ごちそうさま」
- 잘 먹었어(よく食べました)
- 잘 먹었습니다(やや丁寧な言い方)
まとめ
日本人が食事のときにつかう「ごちそうさま」は、客をもてなすために走り回った時代の名残りである「馳走」が語源でした。料理を作ってくれた人への感謝はもちろん、いのちをいただくことへの謙虚な気持ちを食事のたびに思い起こさせてくれる、祈りのような言葉です。これからも心をこめて、日々の糧に「ごちそうさま」をいいたいですね。