「賞与」とはボーナスとも呼ばれ楽しみにしている人も多いのではないでしょうか。しかしボーナスがいつでも支払われるとは限らないことをご存知ですか。
今回は「賞与」の意味や種類、労働基準法における定義と査定期間、海外赴任中の賞与支給、更には賞与の計算方法とパートへの賞与支払いについて解説します。
賞与とは?
「賞与」の意味は「ボーナス」または「褒美としての金品」
「賞与」の意味は、”ボーナス”または”褒美としての金品”です。2つの意味を詳しくみてみましょう。
- 「企業が臨時に社員に支給する金銭」のことで、給与とは別に支払われます。「ボーナス」や「一時金」、「夏季手当」や「年末手当」などとも呼ばれています。
- 「功労の褒美として与えられる金銭や物品」という意味もあります。
「賞与」には三つの種類がある
「賞与」には「ボーナス」「業績賞与」「決算賞与」の三つの種類があります。
- 「ボーナス」とは、基本給金とは別に年2回ほど定期的に支給される特別手当のことです。
- 「業績賞与」とは、企業や部署、個人の業務成績に応じて賞与額が決まる特別手当のことです。
- 「決算賞与」とは、企業の決算時に、業績が好調な場合に利益配分として支給される特別手当のことです。
企業における「賞与」とは?
労働基準法における「賞与」の定義は「賃金の一種で労働の対価」
労働基準法によれば、「賞与」は「賃金の一種で労働の対価」という位置づけです。ただし月給などの定期給与と違い、「賞与」は法的に必ず支払わなくてはならない賃金ではありません。
会社が支払うと決めたとき、またはそうした決まりを就業規則等に記載されている場合に賞与は支払われます。
ボーナスは2ヶ月分で年2回とは限らない
ボーナスは給与の2~3ヶ月分、年2回、支払われる企業が多くあるものの、ボーナスの金額や支払回数は法的に定められてはいません。
ボーナスの金額は、企業が作成する就業規則や、企業と労働組合または個人の間で交わされる労働協約または労働契約を根拠にして決められます。多くの企業では、基本給の何ヶ月分や何%分という形で支給額を提示し、その金額は企業の業績や社員の成果、スキル、勤続年数等を加味して決定します。
ボーナスなしもあり得る
「賞与」は法的に支払うことが保証されていないので、ボーナスがこれまでに支払われていたとしても、また正社員であったとしてもボーナスが支払われないことはあります。
しかし、支払いが約束されていたはずの賞与やボーナスが未払いの場合や、就業規則などに賞与の支払いを義務付ける旨が記されている場合には、社員は雇用主に支払いを請求できます。
査定期間に賞与額を決める
会社によっては賞与額(ボーナス額)を判断するのに査定期間を設けていることがあります。年に2回のボーナスを支給するためには、支給数カ月前の半年間を査定期間として社員を査定し、その査定内容次第で賞与額を決めます。
海外赴任のタイミングで賞与の税率が変わる
海外赴任中に賞与を受けた場合、海外赴任のタイミングによって所得税額が変わります。
賞与の査定期間後に出国し賞与を受けた場合、賞与全額に所得税率である20.42%が課せられます。一方、査定期間中に出国した場合は、賞与全体から査定期間の初日から出国日までの賞与額を算出した分にのみ所得税が課せられるので、税率20.42%を掛け合わせて税額を算出します。
海外赴任者には社会保険料等の控除はありませんので、対象となる金額全体に課税されます。
「賞与(ボーナス)」の正しい計算の仕方とは?
ボーナスにも課税される
ボーナスは提示されたそのままの金額が手取りになるのではなく、課税されます。社会保険料である健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料に加えて雇用保険料を差し引き、さらに源泉徴収税額を差し引いた金額が手取り額になります。
ただし社会保険に加入していない社員のボーナスからは、社会保険料は差し引かれません。
賞与の手取りの計算方法
賞与の手取り分を算出するための計算式は次の通りです。
- 賞与の手取額=賞与-(健康保険料+介護保険料+厚生年金保険料+雇用保険料)-源泉徴収税額
その詳細を計算式と照らし合わせながら説明してみましょう。
- 賞与から健康保険や介護保険、厚生年金、雇用保険からなる社会保険の保険料を差し引きます。
- 扶養家族の数と社会保険料の金額を基に、国税庁が公開する「賞与に対する源泉徴収額の算出率の表」から税率を確かめます。
- 賞与から社会保険料を差し引いた額に税率を掛け合わせて、小数点以下を切り捨てた金額が、賞与に課せられる所得税額です。
「賞与支払届」は支給日から5日以内に提出
「賞与支払届」とは「被保険者賞与支払届」を略したもので、賞与が支払われた際に健康保険組合または年金事務所に提出される書類です。被保険者の保険料や年金金額を決めるために必要とされる書類ですので、賞与支給日から5日以内には提出します。
賞与支払届の対象となる賞与とは年3回まで支払われたボーナスで、年4回以上支払われると月給と同等扱いになるため賞与支払届の対象外となります。
パートは「賞与」をもらえるのか?
パートはボーナスをもらえないことが多い
パートやアルバイトに賞与を支給する企業もあるのですが数は少なく、正社員に支給してもパートやアルバイトには賞与が支給されないことが多いです。その代わり、パートやアルバイトの実績、または企業の経営状況から「寸志」として数万円支払われることがあります。
寸志も賞与のように賃金の一種になりますので、所得税の課税対象になります。
まとめ
「賞与」とは賃金の一種で労働の対価として支払われる特別給金のことです。ボーナスは年2回、月給の2~3か月分というのが一般的だと言われていますが、法的には支払う義務はありません。また「賞与」には功労の褒美として与えられる金品という意味もあります。