「ともすれば」という言葉は、あまり聞きなれないイメージを持っている人は多いのではないでしょうか。日常生活では頻繁に使う機会はありませんが、『竹取物語』のように有名な古典文学にも「可能性を表す表現」として登場します。
この記事では、「ともすれば」の意味や使い方、類語・言い換え表現、英語表現をご紹介します。
「ともすれば」の意味・古語
「ともすれば」の意味は「場合によっては」
「ともすれば」とは「場合によっては」などの意味を持っている言葉です。簡単に言うと「かもしれない」「ひょっとして」「可能性がある」という意味で、古文でも用いられている歴史の古い言葉です。「ともすると」と同じ意味の副詞(=品詞の一種)でもあります。
『竹取物語』などの古文・古語にも登場する
平安時代初期に作られたと言われている『竹取物語』を見てみると、「ともすれば、人間(ひとま)にも月を見ては、いみじく泣き給ふ」という一文が書かれています。
現代の言葉に訳してみると「どうかすると、人のいない間にも月を見ては、ひどくお泣きになる」となります。竹から生まれたかぐや姫が、「場合によっては、人のいない間に月を見て、泣いてしまう」と、可能性を認める表現として使われています。
「ともすれば」の使い方と例文
ネガティブな内容で使う機会が多い
「ともすれば」には、「場合によっては」といった意味があり、「物事がとかくそうなりがちであるさま」を表現する言葉になりますが、使う際に続く言葉は、基本的にはネガティブなイメージで使用されることが多くなっています。
例えば「ともすれば(場合によっては)、この件はダメになるかもしれない」や「ともすれば(もしかすると)、大きなトラブルに発展してしまう危険性も~」などのマイナスな表現で使う場合がほとんどです。
使う場合は「解決策」も併せて提案する
「ともすれば」をビジネスシーンで使う場合、基本的にはネガティブな内容になりがちです。そのため、解決策をあわせて提案するのが賢い使い方だとも言えます。
例えば「ともすれば、この件はダメになるかもしれない…」などとマイナスな発言で終わらせるのではなく、前向きな解決策を提案することを心掛けるとよいでしょう。
「ともすれば」の例文
- ともすれば、考え方が悪い方向に傾きやすい。
- ともすれば、あなたは頭が固い、時代遅れだと食って掛かったこともあった。
- ともすれば、会社を休みがちになる。
- ともすると、明日は雨が降るかもしれない。
- 大事な話を聞けば聞くほど、ともすると忘れがちになる。
- 重い空気が漂う中で、私たちはともすると沈黙しがちだった。
「ともすれば」の類語・言い換え
類語は「ややもすれば」
「ともすれば」に近い意味を持つ言葉として、「ややもすれば」という言葉があります。「ややもすれば」は「物事がとかくそうなりがちであるさま」を表しています。「ややもすれば、明日の件は中止になるかもしれない」といった、「可能性を認める」表現の使い方が多くされています。
「かもしれない」「可能性がある」に言い換え可能
「ともすれば」という言葉は、「かもしれない」や「可能性がある」「ひょっとして」「もしかすると」などのさまざまな類語でも言い換えることができる言葉です。以下に例を挙げます。
- ともすれば、来月の懇親会は中止になる。
- 来月の懇親会は中止になるかもしれない(中止になる可能性がある)。
日常会話では、わざわざ意味を知らない人が多い「ともすれば」を使うことは少ないかもしれません。丁寧な言葉を使うことは大事なことではありますが、会話は相手にしっかりと意味が伝わることも大切です。
「ともすれば」の英語表現は?
英語表現は「be given to doing」
「ともすれば」を英語で表現する場合、「とかく~しがちだ」や「とかく~しやすい」などの意味がある「be given to doing」を使うのが良いでしょう。
まとめ
実生活のなかで実際に使っている人が少ない以上は、「ともすれば」という言葉をビジネスシーンのなかで率先して使う必要はないとも言えます。ただし、文面や文章においては、ともすれば、その言葉がたびたびでてくることがあります。
そのため、「ともすれば」という言葉の意味や使い方を頭の中にいれておくことは、ともすれば、無駄なことだと思いがちですが、実際は大事なことだと言ってもよいでしょう。