「動機づけ」の意味とは?「動機づけ面接」と「衛生理論」も解説

「動機づけ」は行動するための過程を意味していて、動機づけにより私たちのパフォーマンスは向上すると考えられています。今回は「動機づけ」の意味と、スポーツや保育などの各分野での「動機づけ」を使った例についてまとめました。また、セラピー等で用いられる「動機づけ面接」、仕事の満足感と不満足を動機づけに関連させた「衛生理論」についても解説します。

「動機づけ」とは?

「動機づけ」の意味は「行動に向かわせる過程」

「動機づけ」の意味は、「人が行動する原因となり、目標に向かって維持するための過程」です。モチベーション(motivation)とも呼ばれ、心理学的な用語です。

動機づけは人に行動しようとする気持ちにさせて、目標に到達しようという前向きな感情も出てくることで、その行動を持続させる機能があります。

動機づけには「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」がある

動機づけには「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」の2つがあります。人が行動を起こすとき、やりたいからするという動機づけを「内発的動機づけ」と呼び、報酬や評価などのために行動することを「外発的動機づけ」と言います。

「内発的動機づけ」では本人の関心や興味、意欲によって行動するのに対して、「外発的動機づけ」では行動したことで得られる何かのために、または義務や強制といった行動しなくてはならない理由から行動します。

「動機づけ」がモチベーション理論へと展開

動機づけは心理学のテーマのひとつとして扱われ、人がどのように動機づけられやる気が高まるのかを研究するモチベーション理論へと展開していきます。

初期のモチベーション理論は1950年代、マズローの欲求階層説、ハーズバーグの衛星理論、マクレガーのX理論Y理論などへと発展しました。現代のモチベーション理論はこの三つのモチベーション理論をベースにしています。

多くのモチベーション理論がアメリカ人の研究者によるものなのでアメリカ人に適した理論が多いのですが、日本でも学習面やスポーツ、社員教育などでやる気をアップするための手段として動機づけが活用されています。

スポーツ・保育・企業で活用される「動機づけ」とは?

動機づけはパフォーマンスを上げる手段として、様々な分野で活用されています。ここではスポーツと保育、企業で活用される動機づけを紹介します。

スポーツを楽しむのなら内的動機づけが大切

スポーツは内発的動機づけを利用すると、より充実させることができます。トレーニング自体を楽しむようになり、スポーツをすることが目的になります。そのため苦しいトレーニングでも取り組むことができます。

一方、外発的動機づけによるスポーツは勝利や報酬などが手段のため、スポーツそのものを楽しむ姿勢が低くパフォーマンスの向上を妨げることがあります。

保育では外発的動機づけが育児を助ける

内的動機づけによって行動することが理想的ですが、保育では、乳幼児の内的動機づけが表れるのを待っているだけではなく、外的動機づけで誘導しながら育児を行うことでより能動的な育児になります。なぜなら賞罰や競争などの外発的動機づけにより乳幼児は行動を起こしやすいからです。しかし外発的動機づけを多用すると、賞罰がなくてはやらないなど子供のやる気をなくさせる可能性もあるので、適度な活用が大切です。

企業のマネージメントに活用される動機づけ

企業では、仕事をしたい、スキルアップをしたいという内発的動機づけが社員の成長につながり、仕事の生産性も向上することが考えられます。一方、外発的動機づけも報酬や評価が動機づけとなり社員の競争心を煽るため、短期的で効果が出やすいというメリットがあります。

社員の教育において、上司は部下の内発的動機づけにつながるようなフィードバックやアドバイスを行い部下のやる気を促すように指導すると、パフォーマンスが向上します。また達成可能な目標を設定するといった外発的動機づけも一手段です。

「動機づけ面接」とは?

「動機づけ面接」とはクライアント主導の面接法

動機づけ面接とは、変わりたいと思っているクライアントの動機を引き出すために行われる面接方法です。カウンセラーは思いやり、受容、協働、喚起の基本の態度でクライアントに接し、会話の進行はクライアントに任せます。インタビュアーからのアドバイスにもクライアントの許可が必要です。

動機づけ面接でクライアントへアプローチ

動機づけ面接は、うつ病やアルコール依存症などのセラピーや、糖尿病や高血圧などの生活習慣病患者の援助、教育現場でのコミュニケーション技術として活用されています。

クライアントや患者に動機づけ面接を通してアプローチをして、抱えている問題に対する考えの矛盾から内的な動機づけを自覚してもらい行動に変化を与えます。

「動機づけ面接」の具体例

ここでは禁煙支援のための動機づけ面接例を紹介します。

具体例
インタビュアー「タバコについてどう思いますか」
クライアント「体に悪いのはわかっている。でも、やめられない」
インタビュアー「ご自身の健康についてはどう思っていますか」
クライアント「健康が大切だと思ってる」
インタビュアー「それでは健康のためにはなにができるでしょうか」

健康を守ることを軸にクライアントとの会話を続けて、クライアントが喫煙に話を戻した段階で、禁煙の代わりにガムや張り薬から試すことができるなどと情報を提供します。そしてクライアントから禁煙に関する意見や決意を引き出します。

「動機づけ衛生理論」とは?

「動機づけ衛生理論」の意味

動機づけ衛生理論とは、アメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバースにより提唱されたモチベーション理論です。仕事に対する不満足を感じる要因を解消しても、満足感を感じる要因が増えることはないという考え方です。

仕事の満足感を増やすためには仕事に満足できる動機づけを充実させます。仕事そのものへの関心を高めて達成感を得られるようにしたり、昇進といった外発的動機づけも重要です。

「動機づけ要因」と「衛生要因」

動機づけ要因とは仕事で満足感を感じられる要因で、主に仕事内容や達成感、承認、責任、昇進が挙げられます。

一方、衛生要因とは、仕事で不満足を感じる要因で、主に会社の政策や経営方針、給与や対人関係などが挙げられます。苦痛を避けようとする動物的欲求がベースとなっているため衛生要因と名付けられています。

まとめ

「動機づけ」とは行動を起こすための要因であり過程のことで、動機づけを利用してパフォーマンスを向上するためにスポーツや企業でも活用されています。また動機づけ衛生理論などの数々のモチベーション理論へと発展しました。

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「難解なワードでもわかりやすく」をモットーに、常識ワードからビジネス用語、時には文化・アート系など、幅広く記事を書かせていただいています。ドイツ在住で2児の母。好きな食べ物はビターチョコレートとナッツ類。