「申し出」の意味とは?「申し入れ」との違いや敬語訳なども解説

「申し出」とは、自分から相手に何かを申告したりする時に使われることが多い言葉です。取引先やお客様、また会社の上司など自分よりも立場が上の人に対して使う際は敬語の形をとります。今回はこの「申し出」の意味や使い方の例文、また敬語・英語表現までを詳しく解説していきます。「申し入れ」など似た表現との違いや類語もあわせて紹介します。

「申し出」の意味と類似表現との意味の違いとは?

「申し出」の意味は”希望や意見を申告すること”

「申し出」の意味は、“希望や意見などを相手に申告すること、またはそういった内容”です。「申し出」には、“自分から対象となる相手に積極的に伝える”というニュアンスがあります。そのため、日常会話の中でなんとなく口にするのではなく、伝えようという意思のもと相手に伝えています。

「申し出」と「申し入れ」との違いは”対象となる相手”

「申し入れ(もうしいれ)」の意味は、”希望や意見などを相手に伝えること”または”そういった内容・申し出”と同じです。どちらもかしこまっている表現ですが、2つの言葉には以下のように対象となる相手に違いがあります。

「申し出」と「申し入れ」の違い

・「申し出」・・・対象が目上の人・自分よりも立場が上の人と限定されている
・「申し入れ」・・・対象者が限定されていない、基本的に誰に対しても使える

「申し出」と「申し付け」との違いは”伝える相手と伝え方”

「申し付け(もうしつけ)」の意味は”自分よりも上の立場の人が目下に命令すること
“です。この意味からわかるように、「申し出」と「申し付け」は伝える相手も伝え方のニュアンスも異なる言葉だとわかります。

「申し出」と「申し入れ」の違い

  • 「申し出」・・・申告者が希望や意見を自分よりも立場が上の人に伝える
  • 「申し入れ」・・・自分より上の立場の人が目下の人に何か命令する

「申し出」と「申す」との違いは”対象者に限定はない”

「申す(もうす)」は「言う」の謙譲語、丁寧語、尊大語です。意味はただ「言葉に出す」ということを表しているため、「申し出」のように対象者に限定はなく、“申告する”といった意味もありません。

「申す」の説明

  • 謙譲語
    相手に敬意を示すため自分をへりくだって言い表す言葉
    例)「言う」→「山本と申します」
  • 丁寧語
    相手に敬意を示すために丁寧な言い方にした言葉
    例)「言う」→「そう申しましても」
  • 尊大語
    聞き手よりも話し手である本人を高い位置において言い表す言葉
    例)「言う」→「其方の名を申せ」


「申し出」の使い方と例文とは?

「申し出」は目上や立場が上の人に対して使う

「申し出」は、基本的に役所や上司など自分よりも立場が上の人に対して使います。“結婚の申し出”などパートナーになる相手やその家族に対して使うこともあり、この場合も申し出をする相手は同等かそれ以上の関係性であることがほとんどです。基本的な使い方はどの場面でも同じと覚えておくといいでしょう。

「申し出」は自分に対しても使える

「申し出」は自分よりも立場が上の人に使うという定義はありますが、とくに謙譲語・丁寧語ではありません。そのため、何か要望などを申告する時は自分に対して使うこともできます。

具体的な例
・「本日は、来年予定している都市開発についての申し出に参りました」

・「明日、このプロジェクトの申し出をいたします」

「申し出」を使った例文

「申し出」を使った例文をご紹介しましょう。

  • 「役所に提出した申し出は取り下げられた」
  • 「彼から参加の申し出があったことは聞いている」
  • 「ついに、相手のご両親に結婚の申し出を伝える時がきた」

「申し出」の敬語表現とは?

「申し出」の敬語表現は”お申し出”

「申し出」を敬語表現にする場合は、尊敬を表す接頭語の『お』を付け加え「お申し出」とします。この表現であれば、「何なりとお申し出ください」や「先方からのお申し出ですが」など、立場が上の人に対して使っても失礼にはなりません。

「お申し出」は自分には使わない

「お申し出」は相手への尊敬を表す接頭語がついているため尊敬語にあたります。自分自身に使うと不自然なため、基本的に自分に対して使うことはありません。

「お申し出」の言い換え表現

「お申し出」には、以下のようにいくつか言い換え表現があります。「お申し出」よりもかしこまった表現ではないので、使うシーンや申告したい内容にあわせて使い分けるといいでしょう。

  • ご要望(ごようぼう)
    例)「先方から新商品を購入したいとご要望(お申し出)がありました」
  • ご提案(ごていあん)
    例)「今朝、取引先から予算見直しのご提案(お申し出)をいただきました」
  • ご依頼(ごいらい)
    例)「お客様より宿泊先変更のご依頼(お申し出)がありました」
  • ご忠告(ごちゅうこく)
    例)「近隣の方々より、我が社の騒音についてご忠告(お申し出)がありました」

「お申し出」を使った例文

「お申し出」を使った例文をご紹介しましょう。

  • 「取引先からお申し出がありました」
  • 「何かご要望があれば何なりとお申し出くださいませ」
  • 「お客様のお申し出により、我が社の商品はより品質の良いものになりました」

「申し出」の類語とは?

類語①「志願」は“自ら願い出ること”を表す

「志願(しがん)」の意味は、「自分の意思に基づき進んで望むこと」または「願い出ること」です。「申し出」と同義語ではありませんが、意味だけではなく“自分から積極的に願いを伝える”というニュアンスも似ています。

類語②「依頼」は“他人に用件を頼むこと”を表す

「依頼(いらい)」の意味は、「他人に伝えるべき事・なすべき仕事などを頼むこと」です。自分の用件を他の人にお願いすることを表している点が、「申し出」の“要望を相手に申告する”と似ています。

類語③「提案」は“意見や議案を提出すること”を表す

「提案(ていあん)」の意味は、「物事に対する意見や議案を提出すること」です。「申し出」が持つ“意見を申告する”という意味、そして自分の意思に基づいての行動であるニュアンスどちらとも似ています。

類語④「プロポーズ」は“申し込むこと”を表す

「プロポーズ」の意味は「ある事を申し込むこと」です。ほとんどの場合、「結婚の申し出」という意味で使われます。使うシーンは他の類語に比べてだいぶ限定されますが、「申し出」にも同じ意味があるので類語と言えます。

「申し出」の英語表現とは?

要求を意味する「申し出」なら”request”

日本語の「申し出」の意味をすべて網羅している英語表現は今のところありません。そのため、申し出をしたい内容にあわせて使い分ける必要があります。

“要求”を意味する「申し出」なら、“懇願する”や“願い”などの意味を持つ「request」を使いましょう。名詞としても動詞としても使えます。

  • request:
    【名】願い、懇願、要請
    【動】懇願する、要請する、頼む

提案を意味する「申し出」なら”offer”

“提案する”を意味する「申し出」なら、“提案する”や“提供する”という意味を持つ「offer」を使うといいでしょう。

  • offer :【動】(意見や案などを)提案する、定義する、(〜しようと)申し出る

「結婚の申し出」なら”proposal”

“結婚の申し出”なら、“プロポーズ”の意味を持つ「proposal」が適切です。注意したい点は、日本語の「プロポーズ」と違い使うシーンは結婚の申し出に限定されていません。

  • proposal :【名】結婚の申し出、プロポーズ、提案、計画

まとめ

「申し出」は、上司や取引先など自分よりも立場が上の人に対して使う言葉です。自分の意思に基づいて要望や意見を伝えるときに使いますが、自分以外に対して使う場合は失礼がないよう「お申し出」と尊敬語の形をとる必要があります。

「申し出」はとてもかしこまっている表現なので、相手との関係性次第ではかしこまり過ぎない言い換え表現や類語など使うといいでしょう。