小学生のテストで「絵からパプリカとピーマンを判別する」という難問が出題されたそうですが、それくらいこの二つの野菜は似ていますよね。今回は「パプリカ」と「ピーマン」を品種や苗の育て方、栄養価などさまざまな角度から比較したうえで、見分け方や調理の仕方による味の違いなども紹介します。
「パプリカ」と「ピーマン」の違いとは?
「パプリカ」と「ピーマン」の違い①収穫時期
「パプリカ」と「ピーマン」の違いは、“収穫時期”にあります。「ピーマン」は開花してから20日ほどで未熟な状態で収穫します。一方、「パプリカ」は完熟してから収穫になりますので、開花から40日~50日ほど経ってから収穫します。
「パプリカ」と「ピーマン」の違い②栄養価と味
「パプリカ」と「ピーマン」の違いは、“栄養価と味”にもあります。栄養素は似ていますが、パプリカの方がピーマンよりもビタミンCとカロテンを多く含んでいます。風邪予防や疲労回復に効くビタミンCはパプリカがピーマンの約2倍、抗発がん作用もあるカロテンについてはパプリカがピーマンの3倍近く含んでいます。またパプリカでも赤いパプリカより黄色いパプリカのほうがビタミンCは多く含まれています。
味に関しては、パプリカは果汁が含まれていて甘みがありますが、ピーマンは青臭さに加えて「クエルシトリン」と呼ばれる成分による苦みを感じます。
「パプリカ」と「ピーマン」の違い③語源
「パプリカ」と「ピーマン」の違いは、“語源”にもあります。
「パプリカ」の語源はハンガリー語の「パプリカ(paprika)」だと言われています。パプリカは大航海時代に中南米からヨーロッパにトウガラシが持ち込まれ、ハンガリーで辛くないトウガラシとして品種改良されて「パプリカ」が生まれました。日本にはパプリカが普及したのは1990年代と遅く、最初のパプリカの輸入はハンガリーからではなくオランダからでした。現在ではオランダや韓国から輸入されているだけでなく、日本でも栽培されていています。
「ピーマン」の語源はフランス語のトウガラシを意味する「piment(ピマン)」です。ピーマンはパプリカよりもずっと早く明治時代には輸入されましたが、一般家庭に普及したのは第二次世界大戦後で、現在では日本国内で広く栽培されています。
「パプリカ」と「ピーマン」の共通点と見分け方とは?
「パプリカ」と「ピーマン」の共通点①品種
「パプリカ」と「ピーマン」は同じ品種で”ナス科のトウガラシ属”です。トウガラシに分類されるタカノツメやハラペーニョなどはどれも辛みがありますが、パプリカとピーマンはトウガラシ属の中でも辛みのない種類になります。
「パプリカ」と「ピーマン」の共通点②苗の育て方
「パプリカ」と「ピーマン」の“苗の育て方は同じ”です。2月ごろに種をまき、13枚ほど葉がついた苗となり一番花が咲いた5月頃が植え付けです。収穫時期は6月下旬から11月初旬ごろまでと長く、たくさんの実をつけるのが特徴です。
「パプリカ」と「ピーマン」の見分け方は”大きさと形”
見た目が似ていて見分けにくいとされるパプリカとピーマンですが、見分け方の決め手はその“大きさと形”です。「パプリカ」はピーマンに比べると大きく丸みがあるのに対して、「ピーマン」は小さめで細長い形をしています。
またパプリカは肉厚で、赤や黄色、オレンジ色、海外には紫や茶色などカラフルなのが特徴なのに対して、ピーマンは肉は薄く、色は一色で鮮やかな濃い緑色をしています。
調理の違いで比較する「パプリカ」と「ピーマン」
パプリカとピーマンを調理の違いで比較してみましょう。
マリネやサラダにはパプリカの甘みが生きる
マリネやサラダなど生のまま食べるのなら、パプリカの甘みが生きる調理法と言えます。ピーマンも生食ができますが、苦みが気になることもあるでしょう。
炒めるとピーマンの苦みが減る
炒め物にはパプリカとピーマンの両方とも向いています。熱に弱いビタミンCですが、パプリカとピーマンに含まれているビタミンCは加熱しても壊れないという性質を持っています。
また特にピーマンは炒め物に向いていて、なぜならピーマンは加熱すると苦みが薄れるので食べやすくなります。一方、パプリカは加熱時間が長いと栄養価が低くなりますので火の通しすぎに注意しましょう。
「ピーマン」から「パプリカ」になる?
ピーマンが赤く変色することがある
ピーマンは未熟果で完熟前に収穫されます。その時の色は緑色ですが、収穫せずに放置しておくとピーマンは赤くなります。この赤くなったピーマンは完熟している証拠で甘みも増します。
赤く完熟したピーマンは緑のピーマンよりも栄養価が高く、ビタミンCやカロチンが3倍に、抗酸化作用のあるカプサンチンも増えるので、美容と健康に効果的です。しかし完熟したピーマンは腐りやすく長期保存ができないため、市場にあまり出回っていません。
赤く熟したピーマンはパプリカではなく「カラーピーマン」
ピーマンは完熟するまでに黄色やオレンジ色にも変色します。また完熟すれば赤くなるピーマンですが、ピーマンが完熟してもパプリカになるわけではありません。完熟した赤いピーマンや、完熟前のカラフルなピーマンは「カラーピーマン」と呼ばれます。
まとめ
パプリカとピーマンは同じ品種ですが、成長したピーマンがパプリカになるようなことはなく別の野菜として区別されます。ピーマンは苦みがありますが、パプリカは果汁が多く甘みのある肉厚の野菜です。またパプリカは加工されてパプリカパウダーや着色料としても使われます。