「拝承」は、ビジネスシーンなどかしこまった場面で使うことが多い言葉です。とくに日立系の企業によく使われるということで、“日立用語”とも言われています。
今回はその「拝承」の意味や使い方の例文、そして言い換え表現や反対語などを詳しく解説していきます。よく耳にする表現「拝承いたしました」は正しいのかどうか、また英語表現もあわせて紹介します。
「拝承」とは?
「拝承」の意味とは”謹んで承ること”
「拝承」の意味は、“謹んで承ること”です。「聞くこと」または「承知すること」を、へりくだって表現した言葉です。これは、「拝」と「承」それぞれが持つ意味を見ることでより理解できます。
ほぼ同じ意味を表す「承知」という表現より堅いため、通常敬語を使うような場面よりかしこまった場面で使われます。
「拝受」と「拝承」は意味が異なる
「拝承」と似た表現に「拝受(はいじゅ)」がありますが、この2つは言い換え表現にはなりません。なぜなら、「拝受」の意味が「受け取ること」をへりくだった言葉だからです。
・拝受…受け取ること
このように、表現は大変似ていますが意味はまったく異なります。混同して使わないよう気をつけましょう。
「拝承」の使い方と例文とは?
「拝承」は動詞的に使うのが一般的
「拝承」は、基本的に名詞として単体で使われることはありません。ほとんどが「拝承する」と動詞的に使われます。主にビジネスシーンでは、「拝承しました」や「拝承いたしました」などのように敬語表現で用いられています。
「拝承いたしました」という表現は二重敬語
とくに日立系の企業で使われている「拝承いたしました」は、謙譲語である「拝承」と「いたす」が重なった表現なため、厳密にいうと二重敬語になり正しいとは言えません。
しかし、「拝承いたしました」は多くの人が使っていることもあり、現代では誤用扱いになっていません。意味も通じるため、許容範囲の二重敬語表現として積極的に用いられています。
「拝承」を使った例文
「拝承」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。
- 「顔合わせの時間変更の件、拝承しました」
- 「お申し出の内容について、拝承しました」
- 「あの企画については、すでに拝承しております」
- 「明日〇〇さまが弊社にお越しになるということで、拝承いたしました」
- 「例の件、拝承いたしました。プロジェクトメンバーには本日中に伝達いたします」
「拝承」の言い換え表現や反対語とは?
「承諾」は“相手を受け入れる”を意味する言い換え表現
「承諾(しょうだく)」は、他の人の意見や希望・要望などを聞き、それを受け入れることを意味します。「拝承」にも同じように「承知する」という意味が含まれているため、言い換え表現として使えます。
「了解」は“理解・承認”を意味する類語
「了解(りょうかい)」は、ある物事の内容や事情などを理解、そして承認することを意味します。「拝承」が持つ“承知すること”と似た意味を表現しているため類語と言えます。「拝承」と違いカジュアルさがあるため、目上の方やかしこまった場面で使うことはおすすめしません。
「拝送」は“お見送り”を意味する反対語
「拝送(はいそう)」は、「見送ること」をへりくだった表現です。同じ敬語表現ですが、「拝承」の“受け入れる”に対しては反対語と言えます。使い方は「拝承」と同じで、「拝送します」や「拝送いたします」となります。
「拝承」の英語表現とは?
「拝承」の英語表現は「being informed」「hearing」「understanding」
名詞「拝承」を英語にする場合は、「being informed」「hearing」「understanding」のどれかで表現するといいでしょう。「being informed」は「拝承」のようなかしこまった表現ですが、「hearing」や「understanding」はカジュアルな表現なため、日常会話で使っても不自然ではありません。
- being informed・・・拝承
- hearing・・・聞くこと、聞いてやること、聴力
- understanding・・・理解、合意、申し合わせ、了解
「拝承しました」なら別の表現もあり
「拝承しました」を英語にするなら、以下のような表現もできます。日本語に訳すとそれぞれ異なりますが、どれも「拝承しました」というニュアンスを持っています。英語の場合、話している内容やシチュエーションによって答え方が変わります。
- I understand.・・・わかりました
- No problem.・・・問題ありません
- Sure.・・・もちろんいいですとも
- All right.・・・大丈夫ですよ
- I get it.・・・わかりました
まとめ
「拝承」は、“聞くこと”や“承知すること”をへりくだった言葉です。通常の敬語表現よりもかしこまっているため使用頻度はそこまで高くなく、ビジネスシーンでも限られた場面で用いられます。
「承知いたしました」という表現は、文法的には二重敬語で誤用です。しかし、現在では多くの人がこの表現を使用していることから、ビジネスシーンなどで使っても問題はありません。
・承(しょう)…うけたまわる、受けつぐ、上から下に手渡される