「これ稟議にまわしといて」と言われて、頭の中が真っ白になった経験はありませんか?社会人になれば「稟議」は必須用語。意味や似た言葉「決済」との違いについては正しく把握しておきたいものです。ここでは「稟議」の読み方と意味、決済との違いと使い方、英語表現についても解説します。
「稟議」とは?
「稟議」の意味は”事柄を回覧して承認を得ること”
「稟議」の意味は、“官庁を含め企業や組織内で何かを導入したり、事柄が生じた時に、関係者に内容を書面にまとめ、回覧して承認を得ようとすること”です。つまり、ミーティングや会議を開くほどの課題や案件ではないものの、関係者に目を通してもらい最終的に最も上に位置する人から「承認」をもらうことを意味します。
「稟議」は社内やグループ内の関係者に、いちいち人を集めて説明をするにお及ばないような新規の内容について、相談の意図をもって同意してもらうことを指しています。そのため、会議で様々な意見を聞く必要があったり、時間をかけて検討しなければならない重要事柄に対して「稟議」を回すことはほとんど見られません。そもそも、本来の意味から考えても適切であるとは言えないからです。
「稟議」の読み方は”りんぎ”本来は「ひんぎ」
「稟議」の読み方は“りんぎ”です。企業に勤めてから社内でよく耳にする「稟議書」の「稟議」のことです。
「稟議」は本来は“ひんぎ”と読みます。しかし「稟議」の「稟」が音読みで「リン」と読むため、誤読ではありながら次第に「りんぎ」と呼ばれるようになった背景があります。現在はほとんどの職場において「りんぎ」と読み、「ひんぎ」と読むことないようです。
「稟」と「議」の漢字の意味
「稟議」の”稟”には「申す、申し上げる」、また「議」には”意見、提案、相談する”という意味がそれぞれあります。これら二つの漢字が組み合わさって「新しい事柄について提案する、申し上げる」というような意味合いとなりました。
「稟議」と「決済」の違いは”権限者に直接可否を決定してもらうこと”
「稟議」に似た言葉「決済(けっさい)」の意味は、”決定権のある、また権限のある人に直接承認を求めること”です。
「稟議」は全ての関係者に新しい事柄や導入したい内容を順番に回覧し、最終的に最も上の人が「承認」の判を押すことですが、「決済」は関係者に回すという途中のプロセスがなく、ダイレクトに権限者に承認を伺うことを意味します。この二つの言葉「稟議」と「決済」の意味の違いを理解して、適切なアクションをするようにしましょう。
「稟議」の種類とは?
契約稟議:他社と契約を結ぶときの稟議
「契約稟議(けいやくりんぎ)」とは、他の企業や外部との取引で契約を結ぶと際の稟議のことです。契約を結ぶときに重要な価格や条件設定、日程、期限、担当者、返品、ペナルティの内容などに目を通してもらい承認をしてもらいます。
購買稟議:購買全体に関する稟議
「購買稟議(こうばいりんぎ)」とは、社内で使用する備品や必要品などを購入する際の稟議のことです。たとえば、「コーヒー豆の追加オーダーについて」「鉛筆調達のストップについて」など、稟議書をまわして承認を得ます。
採用稟議:新しい社員などを採用するときの稟議
「採用稟議(さいようりんぎ)」とは、第一新卒、第二新卒、中途採用を含め、社員を採用する際の稟議のこと意味します。たとえば、企業が求める人材が正しい記載されているか、採用条件や採用人数は適当であるかなどを関係者を通し、最終的に上の人から承認をもらうことを指します。
「稟議」の言い回しや使い方・例文とは?
稟議にかける・稟議にまわす
「稟議にかける」「稟議にまわす」は新規の事柄を書面にまとめて認めてもらう時に使われます。「かける」はものごとを公正に行うこと、行動を起こすこと、また「まわす」は回覧することを表す言葉です。そのため「稟議にかける」で「稟議という行動を起こす」「稟議を回覧する」という意味で使われます。
- これくらいの内容なら、稟議にかけておけば大丈夫だよ。
- 念のため稟議にまわして、関係者の意向を確認しておこう。
稟議を通す
「稟議を通す」は稟議にかけて、承認をもらうことを前提に会話をする時に使われます。「通す」はそもそもものごとを通過するという意味があり、「稟議を通す」で、「稟議」というプロセスを難なく通過するという意味として使われます。
- 備品を追加するには、まず稟議を通すことが第一前提となる。
- 新人採用の稟議が通れば、新部署確立への準備を始めることができる。
稟議が下りる
「稟議が下りる」は承認してほしい事柄が承認されることを意味します。「下りる」は「許可される」という意味があるため、無事に事柄が「承認」となったことを表す時に使いましょう。
- A社への契約書だが、部長からさっき稟議が下りた。
- 無事に稟議が下りるように、企画内容を分かりやすく説明する必要がある。
「稟議」の英語表現とは?
「稟議」は英語で”internal memo”や”request for decision”など
英語圏では「稟議」を「internal memo」や「request for decision」などのようなフレーズで表すことが多いです。状況や環境によって使う表現は異なりますが、おおむねこれらのフレーズを使っておけば、日本語「稟議」の意味でスムーズに会話ができます。
「稟議」を使ったビジネス英語例文
「稟議」を使ったビジネス英語例文をご紹介しましょう。
- この内容を稟議にまわしておいてくれる?
Would you mind to pass the internal memo, please? - 稟議が下りるまで、A社に契約書を渡さないように。
Make sure you wait to hand the contract over to A company till the request for decision is approved?
まとめ
「稟議」は本来「ひんぎ」と読みますが、現在では誤読が浸透し「りんぎ」と読まれるようになりました。企業や組織に属する人なら一度は「稟議書」が回覧で回ってくると思いますが、内容を確認し、自分の名前をサインしてから次の人に回すようにして下さい。
また「決済」は関係者を通さず、ストレートに権限者や決定権のある人物に「承認」をしてもらうことです。違いを理解して、正しい使い分けをしていきましょう。