「さながら」は古風な響きがする言葉ですが、普段は意識して使っていないことが多いと思います。文章の中でやんわりと意味はなすものの、具体的な意味や語源を把握している人は少ないのでしょうか?
ここでは「さながら」について、意味と語源、使い方、また類語や英語フレーズを例文付きでわかりやすく紹介させていただきます。
「さながら」の4つの意味と語源とは?
「さながら」の意味①まるで・そっくり
「さがなら」の意味は、“まるで・そっくり”です。非常によく似ているということを指す言葉です。具体的には「〇〇のようだ」「〇〇顔負けの」といったニュアンスとなり「さながらプロ級の業だ」「さながらネイティブ並みの英語力ですね」というように使われます。
「さながら」の意味②全く・ひたすら
「さながら」には“全く・ひたすら”という意味があります。たとえば、「彼のメッセージはさながら意味が不明だ・私はさながら走り続けた」などのように使います。この場合は「とにかく」というニュアンスを持って使われるパターンです。
「さながら」の意味③もとのまま・そのまま・そのもの
「さながら」には“もとのまま・そのまま・そのもの”という意味があります。例を挙げてみると、「本番さながらの演技」「台風さながらの強い雨」などになり、「〇〇と同じの」「〇〇と変わりない」という意味合いで文脈で使われています。
「さながら」の意味④全て・全部
「さながら」最後の意味は“全て・全部”です。文章を強調する意図で、「まさに・残らず」という意味合いで使われます。文章の例文としては「ニューヨークはさながら人種のるつぼである」や「さながら廃墟と化した」などのようになります。
「さながら」の語源は副詞”さ”と助詞”ながら”の組み合わせ
「さながら」とは、もともと一つの連なった言葉ではなく、副詞の「さ」に助詞の「ながら」がついて完成した言葉となります。副詞の「さ」には「そのよう」「そう」という意味があり、また「ながら」には「〇〇にも関わらず」「〇〇のまま」という意味があります。この二つの言葉がつらなり使われるようになったのが「さながら」で、これが語源となります。
「さながら」とは古語?
「さながら」とは源氏物語にも使われている古語の一つ
「さながら」は、源氏物語や方丈記、徒然草などに使われている古語の一つです。たとえば源氏物語の夕顔では、「帰り入りて探りたまへば、女君はさながら臥して(部屋に戻って手探りすれば、女君はそのまま横たわっていた)」、また方丈記では「七珍万宝さながら灰燼となりにき(あらゆるお宝がすっかり全部灰になってしまった)」と書かれています。
「さながら」は現代に伝えられる美しい古語
普段、何気なく使っている「さながら」とは、日本の歴史に残る名作に多く使われている古語です。余談となりますが、「さながら」は中世日本を代表する説話文学「宇治拾遺物語」や室町時代に上演された人気演目「羽衣」にも使われています。こういった背景が、古風な響きを醸し出す理由なのかもしれません。
「さながら」の類語とは?
「さながら」と言い換えのできる言葉はたくさん
「さながら」は、多くの意味を持ち、さまざまな異なる文脈で状態を「強調」する意図で使われます。そのため、言い換えできる類語は多岐にわたります。例えば、以下のような表現が類語として挙げられます。
- のように
- あたかも
- 言うならば
- たとえるなら
- 完全に全く
- ひたすら
- 丁度
「さながら」の言い換え例文
- さながら龍のように火を噴くキャラクターだ。
- あたかも龍のように火を噴くキャラクターだ。
- 言うならば龍のように火を噴くキャラクターだ。
- 完全に龍のように火を噴くキャラクターだ。
- 彼はさながら彼女に恋をしている。
- 彼は完全に彼女に恋をしている。
- 彼は全く彼女に恋をしている。
- 彼はひたすら彼女に恋をしている。
「さながら」の英語フレーズとは?
「さながら」は英語で「as if」「just like」「tottally」「nothing but」
「さながら」は日本独特の表現の一つであり、複数の意味を持ち合わせるため、一辺倒に英語変換がしにくい言葉です。あえて意訳するなら、「as if(まるで)」「just like(のように)」「totally(全て・完全に)」「 nothing but(全く)」などが適切です。また、「そのまま・その通り」という意味合いなら、文末に「as it is 」を加えても良いでしょう。
「さながら」を使った英語例文
「さながら」を使った英語例文をご紹介しましょう。
- さながら本物に近い作品だ。
This art is just like real thing.
This art looks like real thing
This art apears totally real thing.
This art seems nothing but real thing.
まとめ
「さながら」は源氏物語や方丈記などに登場する表現で、現代では「まるで」「全く」「そのまま」「全て」と、主に4つの意味を持つ言葉となります。ビジネスシーンでも趣のある表現として加えられることがありますので、ぜひとも使い方を把握しておきましょう。
「さながら」のように固定した意味を持たず、複数のニュアンスで使われる言葉は珍しいかもしれませんが、使い方を習得して、毎日の会話に花を咲かせていきませんか?