「衆生(しゅじょう)」とは「生きているものすべて」という意味ですが、仏教用語であり、仏や菩薩による救済や済度などの言葉と結びつきやすくもあります。今回は、「衆生」の読み方と意味の他に、「衆生救済」の意味や「衆生」の使い方と例文、さらに英語表現も紹介します。
「衆生」の意味と読み方とは?
「衆生」の意味は”生きるものすべて”
「衆生」の意味は、“生きるものすべて”という仏教用語です。生きることを命という意味でとらえることもできますし、心と解釈されることもあります。
「生きるものすべて」とは具体的には人や動物などですが、人を指すことが多いです。また「衆生」の広義では、仏や菩薩を含めることもあります。仏とは仏陀の略語で悟りを開いた者を指し菩薩とは、”悟りを開くことを目的に修行している者”を指します。
「衆生」の読み方は”しゅじょう”
「衆生」の読み方は、“しゅじょう”です。
「しゅうじょう」以外の読み方として、”すじょう・しゅうじょう・しゅうせい”などがありますが、こうした読み方は1900年代初期以前の文学作品等に記載されているものの、現代では「しゅじょう」と読まれています。
「衆生」の使い方と例文とは?
「衆生」が仏教用語なので、「衆生」が使われるときは仏教に関連した内容がほとんどです。
「衆生済度」とは”衆生を救い悟りの世界に導くこと”
「衆生済度(しゅじょうさいど)」とは、衆生を救って、悟りの世界へと導くことを意味します。
- 「仏は衆生済度を願っている」
- 「衆生済度の精神が貫かれている」
「一切衆生」とは”すべての生きるもの”という意味
「一切衆生(いっさいしゅじょう)」とは、すべての生きるものを指す仏教用語で、とくに人間に対して使われることが多いです。また「一切」とは、すべてやあらゆるという意味です。
類語には「一切有情(いっさいゆうじょう)」があり、同じく生きているものすべてという意味です。「有情」は生きているものという意味ですが、とくに人のことを指しています。
- 「一切衆生を救済する」
- 「大乗仏教では、一切衆生とともに悟りへと至ることを目指している」
「衆生の恩」とは”人から受ける恩恵”のこと
「衆生の恩(しゅじょうのおん)」とは、人から受けるめぐみを意味し、仏教で教えられる「四恩」のひとつです。
「四恩」についてはいろいろな解釈がありますが、「衆生の恩」が一つの恩として数えられるのが、『平家物語』の説です。『平家物語』では、四恩を天地の恩、国王の恩、父母の恩、そして衆生の恩と分けています。
「下化衆生」とは”迷い苦しむものの救済”のこと
「下化衆生(げけしゅじょう)」とは、迷い苦しむ生きるものすべてを救済することを意味します。「下化」とは、仏や菩薩が悟りを上の位置に置くと、下には救済すべき衆生がいることから生まれた言葉です。そのため「下化」は衆生を指します。
衆生を下化と呼ぶときは、特に迷いの世界にいる苦しみながら生きるものという意味合いが含まれます。
「下化衆生」の対句は「上求菩提(じょうぐぼだい)」で、上に向かって悟りを求めることという意味です。
- 「前任者が下化衆生の精神であらゆることを教えてくれたから、今の私がある」
- 「下化衆生には、人のために尽くすという意味がある」
仏教における「衆生救済」とは何か?
衆生救済の誓願を「本願」という
仏や菩薩が衆生救済を願うときに立てた誓いのことを「本願(ほんがん)」と言います。
薬師如来は12願、阿弥陀如来は四十八願などがありますが、「四弘誓願(しぐせいがん)」が特に有名です(※曹洞宗では「しくせいがん」と読む)。「四弘誓願」は、仏や菩薩が修行の初めに誓う願いで、次の四つがあります。
- 「衆生無辺誓願度」:すべてのものを悟らせようという願い
- 「煩悩無量誓願断」:すべての迷い(煩悩)を失くそうという願い
- 「法門無尽誓願学」:すべての仏の教えを学び知ろうという願い
- 「仏道無上誓願成」:無上の悟りに達しようとする願い
大乗仏教では「衆生」は救済の対象
仏教には大乗仏教と小乗仏教と呼ばれる二大宗派があります。そのうちの大乗仏教では、衆生、つまり生きているものすべてを、救済しようとする考え方が根幹にあります。
仏教では、「衆生」は地獄、餓鬼、畜生、阿修羅、人、天の六道を輪廻転生していると説いています。輪廻において、衆生は迷い、生死を重ねて終わることを知りません。
この輪廻転生の苦しみから解放されることを解脱(げだつ)と呼びますが、その方法は自己修練やなにかにより救済されるなど、宗派によって違いがあります。
各宗派で救済のされ方の違いはあっても、誰もが救われるという考え方は共通しています。
日本に伝わった宗派は大乗仏教なので、日本でどの宗派に属していても衆生救済を実践しています。
小乗仏教では個人が悟りを開くことが優先
大乗仏教に対するもう一つの流派が小乗仏教です。小乗という言い方は大乗仏教側が貶めた表現なので、上座部仏教や部派仏教という呼び方もあります。
この小乗仏教では、衆生救済の前に、修行を通して個人が悟りを開くことが優先されます。悟りを開いていなければ他人を救えないと考えられています。
「衆生」の英語表現とは?
「衆生」は英語で”all living things”
「衆生」は英語で“all living things”です。「all living things」は生きているものすべてという意味の表現で、ちょうど「衆生」の意味と同じになります。
「衆生」の意味を人と限定するなら、「mankind」や「men」、「human being」の英訳も当てられるでしょう。
「衆生」を使った英語例文
「衆生」を使った英語例文をご紹介しましょう。
- “Buddha wishes all living things are relieved.”
「ブッダは衆生が救済されることを望んでいる」 - “All living things are to be saved.”
「一切衆生を済度する」
まとめ
「衆生」とは「生きているものすべて」という意味で、特に人を指すこともある仏教用語です。あまり使いなれない言葉ですが、仏教に触れることがあれば耳にすることも多い言葉です。