「ハードボイルド」の意味や語源とは?使い方や映画・小説も紹介

「ハードボイルド」は文学のジャンルを表す文芸用語ですが、「ハードボイルドな人」「ハードボイルドな人生」などと人や物事を形容する言葉としても使われています。「ハードボイルド」とはそもそもどのような意味なのでしょうか?

この記事では、「ハードボイルド」の意味や使い方を解説します。あわせて語源の英語の意味や、ハードボイルド小説や映画も紹介します。

「ハードボイルド」とは?

「ハードボイルド」の意味は”感情に流されないさま”

「ハードボイルド」の意味は、“感情に流されないさま”です。

「ハードボイルド」とは、第一次世界大戦後のアメリカに登場した新しい写実主義の文学ジャンルを指す言葉です。アーネスト・ヘミングウェイ(1899年~1961年)が反道徳的な内容を含む物語を、感情を抑えて簡潔に描写したのが始まりです。

また、レイモンド・チャンドラー(1888年~1959年)らが、「簡潔な文体で非情な現実を写実する」私立探偵小説を生み出し、探偵小説にハードボイルドのジャンルを確立しました。

日本では1950年代以降にハードボイルド小説が多数翻訳され、ハードボイルドの概念と言葉が定着しました。

映画で主人公を演じたハンフリー・ボガートがイメージを定着させた

チャンドラーの小説は数多く映画化されています。主人公の私立探偵であるタフで優しくクールなフィリップ・マーロウを、アメリカを代表する歴代の人気俳優の多くが演じました。中でも、ハンフリー・ボガートが演じた、トレンチコートを気障に着こなすマーロウのイメージがハードボイルドの世界観として定着しています。

「タフでなければ生きて行けない。 優しくなれなければ生きている資格がない。」などの多くの名言が知られており、感情に動かされず、クールな生き方やそのさまを「ハードボイルド」と呼ぶようにもなりました。

語源は「固ゆで卵」を意味する英語「hard‐boiled」

「ハードボイルド」の語源は、卵などを「固くゆでた」という意味の英語「hard‐boiled」です。転じて、感情に流されず、固く信念を曲げない主人公の生きざまや世情を描く小説のジャンルや、そのようなさまを表す言葉となりました。

「ハードボイルド」の使い方とは?

「ハードボイルドな人」とはハードボイルド小説の主人公に似た人のこと

ハードボイルド小説が映画化されたとき、主人公のキャラクターが身に着けていたトレンチコートやソフト帽、ダークスーツなどのファッションを、「ハードボイルドな格好」と表現することがあります。

また主人公が好んだバーボンやタバコなどの嗜好物も、ハードボイルドの世界観を表す記号となっています。

感情に流されないさまを「ハードボイルド」と表現する

ハードボイルド小説や映画で表現された、軟弱を嫌い、感情に流されないクールな生き方を「ハードボイルド」と形容します。日常的な会話の中などで、そのようなさまを「彼女はハードボイルドだから」などと表現します。

代表的な「ハードボイルド小説」や作家とは?

ハードボイルド小説の古典「ダシール・ハメット」の『マルタの鷹』

ハードボイルド小説の古典であり、不朽の名作として、アメリカのミステリー作家サミュエル・ダシール・ハメット(1894年~1961年)の作品『マルタの鷹』(1930年)が知られています。私立探偵サム・スペードをハンフリー・ボガートが主演して映画化されました。

ダシール・ハメットはハードボイルドスタイルの推理小説をレイモンド・チャンドラーらとともに確立しました。

ハードボイルド探偵のキャラクターを確立した「レイモンド・チャンドラー」

チャンドラーの探偵小説シリーズに登場する私立探偵フィリップ・マーロウは、ハードボイルドな探偵の代名詞ともなっています。感情に流されず、強い信念を持ち、冷徹な判断を下すのが特徴です。

『大いなる眠り』(1939年)、『さらば愛しき女よ』(1940年)、『長いお別れ』(1953年) などが代表作です。また、『ロング・グッドバイ』『大いなる眠り』など、長編小説の多くを、チャンドラーのファンだと公言している村上春樹が翻訳しています。

日本の小説家では「北方謙三」「原尞」「大沢 在昌」

日本では、第二次世界大戦後にアメリカの推理小説やハードボイルド小説が立て続けに翻訳出版され、広く受容されました。小説家の間でもハードボイルド小説がブームとなり、多くの作家が手がけました。

中でも北方謙三(きたかた けんぞう)は、1970年代に日本におけるハードボイルド小説のスタイルを確立しました。北方謙三のハードボイルド小説の代表作には『黒いドレスの女』があり、1987年に映画化されています。

また、80年代後半には原尞(はらりょう)がハードボイルド探偵小説でシリーズを手掛け、『私が殺した少女』(1989年)で直木賞を受賞しました。

大沢在昌(おおさわありまさ)は「新宿鮫シリーズ」などで多くのハードボイルド小説を発表しています。

まとめ

ダシール・ハメットやレイモンド・チャンドラーが中心となって確立したミステリー探偵小説の文体が「ハードボイルド」のジャンルを生み出しました。

それらの小説に登場するタフな主人公のキャラクターに似ている人を「ハードボイルドな人」と呼んだりします。また小説の多くは映画化され、トレンチコートを着て私立探偵を演じたハンフリー・ボガートのイメージが、「ハードボイルド」の言葉が持つ世界観の原型を形づくりました。