「背徳」は後ろめたい気持ちを表す時に使われる言葉です。普段は何気なく口にしていますが、意味や使い方などを正しく把握していますか?「背徳」は花言葉としても使われているため、メッセージを花に託したい人は必見の熟語の一つでしょう。
今回は「背徳」の意味と読み方や言い換えの類語と対義語についてわかりやすく解説させていただいます。花言葉についても参考になれば幸いです。
「背徳」の意味と読み方とは?
「背徳」の意味①道徳に反すること
「背徳」の意味は、“道徳に反すること”です。本来あるべき人の姿や言動から外れ、道徳にそむくことを表す言葉の一つです。おもに人道やルールを従わず、道徳心のないことを表現する時に「背徳」という言葉で使われます。
「背徳」の意味②後ろめたく思うさま
「背徳」の意味は、“後ろめたく思うさま”です。「背徳」とは、やましい気持ちや罪の意識を抱き”間違ったことをしてしまった”と感じることだけでを表す言葉ではありません。どちらかと言えば、言葉では表現しがたい複雑な思いや後悔の念が深く根付いていることが多く、心から後ろめたく思う時に使われる表現となります。
「背徳」の読み方は”はいとく”
「背徳」の読み方は“はいとく”です。どちらも普通に音読みをすれば問題ないと思いますが、「背」の部分を”せ”と読んでしまい「せとく」と誤読しないよう気を付けて下さい。
花言葉でオキナグサは「背徳の恋」を表す
恋愛事情において「背徳」を示す花がオキナグサ(翁草)です。花言葉でオキナグサは「背徳の恋」を意味し、”後ろめたい恋・道徳に反する恋”を表す花として認識されています。現在の恋が「周囲から祝福されない」ことを表すため、意味深げな恋愛関係であることが理解できるでしょう。
オキナグサは別名「白頭草」とも呼ばれるキンポウゲ科の植物で、四国や九州地方の草原や林緑に生息するミステリアスな植物としても知られています。そもそも花の後にできる種に長く白っぽい毛のようなものがあり、風にそよぐと「老人の白髭」のように見えることから「翁草」と命名されたと言われています。
「背徳」の使い方と例文とは?
「背徳感」「背徳心」などのように使う
「背徳」は”道徳に反すること”や”後ろめたく思うこと”を表す言葉であるため、そのような気ちや感情を示す「背徳感・背徳心」などの熟語表現を使うことがあります。むしろ、「背徳の気持ち」や「背徳の心」という言い回しよりも、端的で理解しやすいでしょう。
「背徳」は悪い意味だけで使われる表現ではない
「背徳」は道徳に反したり、自分に悪気があって世間や相手に後ろめたい気持ちになることを表す言葉ですが、悪い意味だけで使われるような表現ではありません。状況によっては、反省の意向を示し、周囲に「申し訳ない」という気持ちを表すことも含む表現とも解釈できます。
また、「背徳」という表現を使って道義をルールを教えたり、人としてあるべき姿を諭すときにも使われています。「背徳」は悪い意味だけで使われるのではなく、教えや悟りのシーンでも役に立つ表現なのです。
「背徳没倫」は人の道から外れること
「背徳」を使った四字熟語に”背徳没倫(はいとくぼつりん)”があります。日常的には見聞きしませんが、講演や社訓などで「人の道から外れ、道徳に反すること」を意味する言葉として使われています。
「没倫」は”倫理を没する”人道から外れることを表す言葉です。つまり、同じ意味を持つ「背徳」と組み合わせることで意味をさらに強調した四字熟語となります。また、訓読みでは「背徳没倫」を”徳に背き倫を没す”と読むこともあるので、あわせて覚えておきましょう。
「背徳」を使った例文
「背徳」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。
- マネーロンダリングが明るみになり、担当者は背徳の気持ちを隠し切れない。
- 背徳だと言われるのは、世話になった会社を裏切ってライバル会社に転職したからだ。
- 仕事で忙しく家庭をおざなりにしてしまったことに、背徳感を抱いている。
- 盗みに入ったが、背徳心に助けられ後戻りした。
- 背徳を背負うことは、罪を認めるに等しい。
「背徳」の類語と対義語とは?
「背徳」と言い換えができる類語は”非道・不徳義・不道徳”
「背徳」を別の表現に置き換える時は、“非道(ひどう)・不徳義(ふとくぎ)・不道徳(ひどうとく)”などを使うと良いでしょう。どの言葉も人の良心を軸とする社会的道義に反した言動や心を表し、正・善・義を排除した言葉です。
中でも「非道」は”極悪非道”というように、まったくもって許しがたい社会における不届きものという意味で、非難の意を強く出した言葉となります。また、カタカナ語では「インモラル(inmoral)」や「アンチモラル(unti-moral)」などが言い換えの語としては適切です。
- 満員電車で高齢者に席を譲らないとは、不徳義も良いところだ。
- 不道徳、不衛生は社会の敵である。
- バス停でタバコの吸い捨てをするとは、まさにアンチモラルではないか?
「背徳」の対義語は”道徳・人道・仁義”
「背徳」の正式な対義語はありませんが、反対の意味を考察すると“道徳(どうとく)・人道(じんどう)・仁義(じんぎ)”などが挙げられます。「道徳」はモラルやひとがあるべき姿のこと、「人道」は人が踏むべき道のことを指しています。また「仁義」は、儒教の世界で道徳の根本となる「仁」「義」のことで、相手への義理を表す言葉となります。
- 人道を踏み外す前に、もう一度自分の行いを振り返るべきだ。
- 借りたら返せ。仁義を忘れるな。
まとめ
「背徳(はいとく)」は「道徳に背くこと」「後ろめたく感じること」という意味があり、人道に反したり、自分の悪事に対して正面を向くことができず背を向け恥じることを表す時に使われる言葉となります。
「背徳」は罪悪感とは多少ニュアンスが異なり、言葉ではアウトプットでき得ない複雑な思いで心が埋め尽くされている状態を指しています。口語や話し言葉で使うことは少ないですが、世間に顔向けができないというダークな心内を表現する際に「背徳感」や「背徳心」を使うと、相手に伝わりやすいでしょう。