控えめで柔らかい物腰の人を「しおらしい」という言葉で表現することがあります。主に女性に対して褒め言葉の要素を持って使われますが、男性に対して用いるのは適切ではないのでしょうか?また漢字で書きたいときはどうすればいいのか、気になりますよね。
今回は「しおらしい」の意味と語源、使い方、言い換えのできる類語と対義語について、例文を用いて解説させていただきます。
「しおらしい」の3つの意味とは?
「しおらしい」の意味①控えめで物腰がやわらかいさま
「しおらしい」の意味は、“控えめで物腰がやわらかいさま”です。人の前にしゃしゃり出るような感じがなく、言動が控えめで大人しい人のことを指す言葉です。また、なよなよしていて従順であるような様子も「しおらしい」の特徴となります。
「しおらしい」の意味②遠慮深く奥ゆかしいさま
「しおらしい」の意味は、“遠慮深く奥ゆかしいさま”です。また「けなげで可憐・かわいらしい」様子を表す時も、「しおらしい」はピッタリの表現となります。物静かで、おっとりとしている感じが「しおらしい」です。
「しおらしい」の意味③上品で優雅であるさま
「しおらしい」は基本的に口数が少なく、周囲に柔らかな印象を与える時に使われますが、加えて、上品さにあふれ優雅であることも「しおらしさ」の大きな要素になると言えます。優雅さを前面に押し出して、自分をアピールするようなさまではなく、あくまで控えめでいて、大人しいことが「しおらしい」の条件となります。
「しおらしい」の語源と漢字表記とは?
「しおらしい」の語源は”萎る”
「しおらしい」の語源は古語”萎る(しをる)”です。「しをる」は動詞未然形「しをら」に「しい」を後続させて形容詞化し「しをらしい」となった言葉で、同じような変化をとげた言葉に「騒ぐ、騒がしい」「好む、好ましい」などがあります。
もともと「しをる」とは、”悲しみに暮れる・やつれて弱る・しぼみ縮まる”という意味があり、「しおらしい」という形容詞表現で”悲し気な様子の・頼りなさげな”というニュアンスを含んで使われるようになりました。
漢字で「汐らしい」と書くのは誤り
「しおらしい」という言葉は平仮名で表記するため、漢字表記となるものはありません。「しらしい」を「汐らしい」と誤って表記してしまうことがあるようですが、「汐らしい」とは”夕方の干満”を意味する表現で意味が異なります。無理に漢字変換をして相手に誤解を与えないように注意しましょう。
「しおらしい」の使い方と例文とは?
女性への褒め言葉として使う
「しおらしい」は男性が求める理想の女性像の一つとして挙げられますが、逆に、女性が求める理想の男性像として挙げられることはほとんどありません。そういった状況からも、「しおらしい」は女性への褒め言葉として適切だと言えるでしょう。
状況によっては男性にも使うことがある
「しおらしい」は、主に女性の品性や振舞いに対して使われることが多いですが、女性だけに限られた表現ではありません。もちろん、男性に対して使う場合は、容姿に対して”かわいらしい・優雅である”という意味で使われることはありませんが、たとえば、新入社員が緊張のあまりなよなよしていたり、上司に叱られてしょぼくれている姿は「しおらしい」とも言えます。
「陰気・暗い」という意味で使わない
「しおらしい」とは基本的に控えめで大人しい人を指す言葉ですが、”陰気である・性格が暗い”という意味で使うのは適切ではありません。
「しおらしい」には複数の意味があり、”上品で優雅・可憐でかわいらしい”というポジティブな意味のほかに、”悲し気な表情の・なよなよした”というややネガティブな意味も持ち合わせます。しかし「性格的に暗い」や「雰囲気が陰気である」という意味は持ち合わせていません。「しおらしい」という響きがもたらす意味合いをはき違えないように気をつけましょう。
「しおらしい」を使った例文
「しおらしい」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。
- 合コンで人気があるのは、常にしおらしい女性である。
- しおらしくデスクに向かっていると思ったら、急に泣き出した。
- 両親にウソがばれて、暫くの間娘はしおらしくしていた。
- PTAの会長は知的でユーモアがあるが、どこかしおらしさがにじみ出ている。
- 父は長い間会っていない孫の写真をしおらしく眺めていた。
「しおらしい」の類語とは?
類語①「殊勝」とは健気で感心なさま
「殊勝(しゅしょう)」とは、ものごとの行いや心掛けが健気で感心なことを意味します。たとえば、殊勝な態度とは”もっともらしい様子で、大人しく構えること”です。行動が真っすぐで立派、そして優れているさまを表す時に好んで使われます。
- 若手の立候補だとささやかれたが、殊勝な態度で見事に当選した。
- 日々の殊勝な心掛けが、大きな成功を生むものである。
類語②「神妙」とは物静かで畏まるさま
「神妙(しんみょう)」とは、物静かで畏まるさまを意味します。「神妙」を使う時には、いつもの元気で明るい表情とは変わって、いかにも静かな態度をとることを指します。また、行いが健気で立派なさまを表す時にも使われます。
- 私は神妙な面持ちで、部長に退職届を提出した。
- 婚約指輪は彼女に渡す時、思わず神妙になってしまった。
「しおらしい」の対義語とは?
「しおらしい」の対義語は”厚かましい・図々しい”
「しおらしい」の正式な対義語は“厚かましい”と“図々しい”です。この二つの対義語から類義語を探ってみると、「恥知らず・厚顔無恥・平然とした・悪びれる風もない」などが挙げられます。また、「大人しく物静か」という観点から考えると、「おしゃべり・口うやかましい・毒舌」なども対義語の仲間となります。
どの言葉も「しおらしい」とは逆の言動や態度、心持を表す言葉で、相手を非難する意図で文章に用いられますが、好意的な意味合いは皆無に等しいです。これらの表現は状況を確認してから用いるようにしましょう。
「しおらしい」の対義語を使った例文
「しおらしい」の対義語を使った例文をご紹介しましょう。
- 私が苦手なタイプは、厚かましく図々しいです。
- 会議中だというのに大声で笑うなんて、恥知らずも良いところだ。
- 遅刻魔である新人Aは職場でも悪びれる風もなく、平然とした態度をとっている。
まとめ
「しおらしい」は”控えで大人しく、物腰がやわらかいさま・可憐でかわいらしく、奥ゆかしいさま・上品で優雅なさま”を表す言葉です。主に女性に対して使われる表現ですが、女性限定の言い回しではなく、状況によっては男性に対しても使われる言葉となります。しかし、男性に対して「しおらしい」という表現を使い過ぎてしまうと、相手によっては「子馬鹿にしている」と不快な感情を与えてしまうことがあるため注意が必要です。
「しおらしい」は女性に対しての最高の褒め言葉として活用したいものですが、意味を間違った方向に解釈してしまい”性格が暗い・陰気である”という意味で使わないように意をつけましょう。