「しじま」とは物音がなく静まり返っていることを意味しますが、風流で温かい響きがある言葉でもあります。文学的な響きを持つことから「夜のしじま」「波のしじま」など歌詞や本などで好んで用いられることが多い表現です。
この記事では「しじま」の2つの意味と使い方の例文を紹介します。似た言葉の「静寂」との違いとは何でしょうか?
「しじま」の意味とは?
「しじま」の意味①「静寂」
「しじま」の意味は、“物音が何一つせず、静まり返っているさま”。つまり「静寂」です。周囲が森閑とし、ひっそりと静かなようすを表しています。
「しじま」の意味②「無言」
「しじま」には“無言”という意味も持ち合わせています。口を閉じて何も言わないこと、口を固く締めてだまりこくっていることを表す言葉でもあります。
「しじま」は大和言葉の一つ
「しじま」という表現を聞いて、何となく昔懐かしく、感性が揺れるような気持ちになる人も多いでしょう。「しじま」とはもともと「大和言葉」であることから、意味の奥深さやぬくもりを感じるのが特徴です。
大和言葉には「おおむね・お手すきの時に・いとおかし」などがあり、言葉が運ぶ風流さや艶然さが会話を温めてくれることも多いと言えます。
「しじま」の漢字表記は「静寂・沈黙」
「しじま」を一般的に漢字表記する場合は「静寂」となります。「静寂」は”せいじゃく”とも読みますが、これは「紅葉」を”コウヨウ・もみじ”、「今日」を”コンニチ・きょう”と読むことと同じです。どちらの読み方でも同じ内容を示すユニークな言葉の一つとなります。
「しじま」は苗字や名前にも使われる
「しじま」は”静寂”や”静けさ”を表す言葉ですが、実際は苗字や名前にも使われています。漢字表記は「志島・四島」また、非常に珍しいですが「四十万(しじま)」と表記する場合もあります。
「しじま」の使い方と例文
「しじま」は歌詞や小説などで使うことが多い
「しじま」は大和言葉であるため、非常に文学的な響きのある言葉です。そのため「静寂」や「静けさ」という表現に比べて、歌詞や小説、舞台のセリフなど、文学的な題材を軸とするシーンで好んで使われます。
「静」という言葉を使わずに、「しじま」という表現を用いて、聞き手の想像力やイメージ感を膨らませる効果が期待できます。
「しじま」と「静寂」を上手に使い分ける
「しじま」とはズバリ「静寂」のことです。しかし、実際に「しじま」と「静寂」には意味において若干の違いがあります。
「しじま」は”黙り込んで話をしない”という意味が中心であるため、その場所に人がいて口を閉ざして静かにしている様子を表し、一方「静寂」は自然の中で物音が一切せず、静まり返っている様子を表しています。
そのため、たとえば家族団欒の場で誰も一言もしゃべらないような様子なら「しじま」、また森の中で少しの音も聞こえてこない状況を表すなら「静寂」を使うのがより適切だと言えます。もちろん、話し手の感性によって選ぶ言葉が変わってきますが、基本的にはどちらを使っても間違いではありません。
「しじま」を使った例文
- 夜のしじまを縫うように、時間が過ぎた。
- 彼女が家を出て行ってしまった。悲しみのしじまが僕の心を打ち付ける。
- 五月雨を降りやまぬように、君が残したしじまの跡は延々と続いた。
- 仲間との楽しい時間はとうに消え、今は残業でしじまと戦っている。
- 夕暮れの秋空を見ていると、閑静なしじまを味わることができる。
「しじま」の類語
類語は「ひっそりとした」「静粛」「サイレンス」
「しじま」の類語には“ひっそりとした・静粛・サイレンス”などがあります。日常生活でカジュアルに使われるのは、音がない様子を意味する「ひっそりと」でしょう。また「静粛」は緊張感を持って静まり返ること、「サイレンス(silence)」は沈黙や無口を表し、歌のタイトルや小説などで好んで使われています。
- ひっそりとした森の中で、突然カラスが鳴いた。
- 皆さま、ご静粛にお願い致します。
- 理由を問いただしたが、サイレンスを貫き通した。
「寂然静虚」は物音一つ立てない様子
「寂然静虚(せきぜんせいきょ)」とは、物音一つ立てない静かな様子を表します。落ち着いた心を持ち、静かでわだかまりの無いさま、またひっそりと寂しげなさまを表す際に使われます。場合によっては「じゃくねんせいきょ」とも読みます。
- 夜半を過ぎてから、家の中は寂然静虚と化した。
- 小学生の子供を持つ親は、寂然静虚とは無縁の生活であろう。
まとめ
「しじま」は漢字で「静寂」と表記することができ、意味はズバリ「静寂」となります。「静まり返って、物音が全くしないさま」「口を閉ざしてしゃべらないこと」「黙りこくって無言でいること」を表す時に使われ、大和言葉がもたらす風流な響きから、文語的な用途で用いられることが多い言葉でもあります。「しじま」が歌詞や小説でよく見聞きするのはこのためでしょう。
ビジネスシーンで用いられるシーンはあまりありませんが、同僚や仲間うちでのチャット場面や、ビジネスでブログを書いている人は活用できる言葉です。ぜひ、この機会に使い方や「静寂」との微妙なニュアンスの違いを整理してみましょう。