恋愛にはさまざまな形がありますが「横恋慕(よこれんぼ)」もその一つ。一般的で純粋な恋心とは異なる、ちょっとイケない恋のあり方ですが、実際には意外と多くの人が経験しているのではないでしょうか?
ここでは「横恋慕」の意味と語源、使い方と例文、類語と対義語表現をわかりやすく解説します。
「横恋慕」の意味と語源とは?
「横恋慕」の意味は”相手がいる人に思いを寄せること”
「横恋慕」の意味は、“相手がいる人に思いを寄せること”です。相手というのは、結婚をしている人、婚約中の人、付き合っている相手がいる人など、周囲に公認されている伴侶がいる人、決まった恋人がいる人を指します。歌や小説などのタイトルにも使われています。
つまり「横恋慕」とは、すでに相手のいる人を好きになってしまい、勝手に恋心を抱いてしまうことを意味します。言葉はあまり良くないですが、わかりやすく説明すれば「恋愛の横入り」のことです。
「横恋慕」の語源はそれぞれの漢字から
「横恋慕」の語源は“横合いから恋をし、慕うこと”です。あえて、「横」と言葉を使っているのは、面と向かって堂々と正面から入ることが難しい(または、許されない)恋事情であるからでしょう
「横恋慕」と「不倫」の違いとは?
「横恋慕」と「不倫」はまったく別のもの
「横恋慕」の意味を解釈する上で大切なのは、相手を略奪したり、浮気をしたりという状況を表す「不倫」ではないということです。
「横恋慕」は本当はいけない恋でもブレーキがかからなくなり、勝手に思いを募らせてしまうことです。「不倫」は相手も同意の上でお互いが恋愛感情を抱き、実際に倫理に欠ける行動をしてしまうことを指します。
「横恋慕」はその先の行動や結果は関係ない
「横恋慕」とは、伴侶や恋人がいる相手に思いを寄せることで、状況によっては非常に辛い恋のカタチです。しかし、ここで大切なのは、その思いをぶつけて横取りしたり、略奪したり、結果的に結ばれるというような、先の事態は含まれていないということです。
「横恋慕」とは、相手のいる人につい恋心を抱いてしまう状態のことを表すため、意味的にはそこまで止まりです。そこからどう恋を仕掛けて発展するのか、はたまた泣きを見るのか、そんなことは関係ないのです。道徳上はいけないと思われる相手に恋をしてしまう、辛い恋愛の形が「横恋慕」となります。
「横恋慕」の使い方と例文とは?
自分の恋心をドラマティックに描く時に使う
「横恋慕」を日常生活やビジネス環境で使う機会はあまりないかもしれません。しかし、伴侶がいる人や交際相手がいる人を、好きになってしまうことはあるでしょう。いけない相手とは知っていても、好きになってしまう自分がいるというのは、時によっては息苦しいものです。
自分の立ち位置が正面ではなく「横」であることを知りながら、恋心を持ち続けることは、解釈によってはとてもロマンティックに映ります。
歌のタイトルや歌詞で使われることが多い
「横恋慕」はいけない恋とは言いながら、どこか切ない響きがあるのが特徴です。
歌のタイトルや歌詞に使われるのは、普通の人が抱く、辛くやるせない恋心を歌にしたため、聞き手の感情に問いかけるためでしょう。逆に、歌のタイトルや歌詞に「不倫・浮気・略奪」など、不道徳なイメージを直接植え付けるような表現はあまり選ばれません。
「横恋慕」を使った例文
「横恋慕」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。
- 横恋慕といっても、もうすぐ別れそうだから罪悪感はない。
- 職場で伴侶のいる男性が気になり始めたが、横恋慕にならないように自制している。
- 友達の彼女に恋心を抱き、徐々に横恋慕が加速し始めてしまった。
- 横恋慕止まりにしておけば良かったが、結果的には相手は離婚してしまった。
- 私の恋愛の形はストレートじゃない。気付けばいつも辛い横恋慕ばかりしている。
「横恋慕」の類語と対義語とは?
類語「岡惚れ」は横恋慕とほぼ同義語
「横恋慕」とほぼ同じ意味を持つ言葉が「岡惚れ(おかぼれ)」です。もともと「岡」には”傍ら(かたわら)”という意味があり、一般的に人々が暮らす場所が「平地」であるのに対し、「岡」が小高く脇にある存在という意味で使われてきました。つまり「岡惚れ」は”脇から惚れる”という意味で、心に背徳心を伴いながらも相手のいる人に恋をしてしまうという意味となります。つまり「横恋慕」とほぼ同義語です。
また「岡惚れ」は「傍惚れ」とも表記することができます。どちらも正しい表記となりますので、併せて覚えておきましょう。
- 岡惚れもほどほどにしないと、後で後悔するよ。
- 独身生活が長いのは、岡惚ればかりしているからだ。
対義語「相惚れ」は相思相愛のこと
「横恋慕」の対義語は相思相愛を意味する「相惚れ」です。お互いの気持ちを寄せ合い、恋心を双方で募っているさまを表します。
- 先輩はまだあの女性と相惚れなのだろうか。
- 相惚れである以上、他の異性に目を向けることは御法度だ。
まとめ
「横恋慕」は読んで字のごとく「横合いから恋をし、慕うこと」、つまり「伴侶や恋人など、決まった相手がいるのを知りながら、横から勝手に恋心を抱くこと」を意味する言葉です。「横恋慕」は歌のタイトルや歌詞、小説やドラマなどにも使われる表現ですが、思いを打ち明けてどうのこうの、といったその後の事情は含まないのが特徴です。
「横恋慕」で相手への思いに終止符を打つ場合は問題はありませんが、恋を仕掛けて刺激的な結果を求めるのは賛否両論あるでしょう。恋愛でのチャンバラごっこから本格的なバトルが始まる前に、できるだけ早くブレーキをかけることも大切なのかもしれません。