「夕凪」の意味や読み方とは?使う季節や類語・英語表現も解説

「夕凪(ゆうなぎ)」という言葉は、夕方の静かな海のようすを表します。旧日本海軍の駆逐艦の名称として使われていたりバンドの名前や歌詞にも使われていたりと、耳にすることも多い言葉です。

この記事では、「夕凪」の意味や読み方、類語や英語表現などについて解説。また、使われている「凪」という漢字や「いつの季語なのか?」についても紹介します。

「夕凪」の意味とは?

「夕凪」の意味は”夕方の無風で穏やかな海”

「夕凪」の意味は、“夕方の凪のこと”です。「凪」とは、風や波が止まり静かな海のようすを表す漢字。「夕」には”ひぐれ”や”日が暮れる時”という意味があるため、「夕凪」は”夕方に波風が止まり静かな状態の海”を表す言葉です。

海岸の地域では、海と陸の気温差により海から陸へと流れる「海風」と陸から海へと流れる「陸風」が発生し、その気温の変化によって風向きが変わるタイミングがあります。この、昼の海風から夜の陸風へと風向きが変わる夕方のタイミングに無風になる状態のことを「夕凪」です。

「夕凪」の読み方は”ゆうなぎ”

「夕凪」の読み方は“ゆうなぎ”です。

「凪」という字は和製漢字

「夕凪」に使われている「凪」という漢字は和製漢字です。和製漢字とは、中国から伝わった漢字ではなく、日本で独自に作られた漢字のこと。「凪」は、江戸時代の文字研究書である「同文通考(どうぶんつうこう)」に和製漢字(国字)としても紹介されています。

また、「凪」という漢字は、名づけの際に使える人名用漢字として1990年(平成2年)に追加されました。

「凪」には「風や波が止まり静かなようす」という意味があり、この「凪」が夕方に起きるものを「夕凪」、朝に起きるものを「朝凪」と言います。

「夕凪」の使い方や例文とは?

「夕凪」は晩夏の季語

「夕凪」は海と陸の気温差によって起こる現象ですが、これは夏(特に晩夏)に多く見られます。そのため、「夕凪」は晩夏の季語になっています。晩夏とは夏の終わりごろのこと。季語として使う場合の晩夏は旧暦で考えるため、7月7日ごろの小暑から8月6日ごろの立秋の前までをさします。

夕凪は瀬戸内海の海で起こることが多く、風が止まっている状態のためその時間帯は蒸し暑くなるのも特徴のひとつです。

「夕凪」は歌詞などで使われることも多い

「夕凪」という言葉は、「凪」という漢字のイメージや響きの良さから、叙情的な表現の言葉として歌のタイトルや歌詞などに使われることも多い言葉です。また、バンド名としても使われており、旧日本海軍の駆逐艦の名称としても使われるなど、古くからなじみのある和製漢字です。

「夕凪」を使った例文

  • 「夕凪」の穏やかな海が白く光っています
  • 海に沈む夕陽が「夕凪」の海に映える
  • 「夕凪」の時間帯は風が止まっていて蒸し暑い

「夕凪」の類語や対義語とは?

類語の「凪(なぎ)」とは”風や波が止まっている海”

「凪(なぎ)」は”凪(な)ぐ”とも読み、風や波が止まっている状態の海を表す言葉です。また、無風で海が静かになることから「心が穏やかなようす」という意味もあります。風を意味する部首である「かぜかんむり」に止まるという字で、風が止まり穏やかなようすを意味して作られた和製漢字です。

夕方に発生する凪を「夕凪」、朝に発生する凪を「朝凪」と表現します。

例文
  • 風も止まり海が凪いできた
  • あわただしい日々がウソのように、凪のような静寂が訪れた

朝に起きる凪の「朝凪」は対義語

「朝凪」は「夕凪」の対義語に当たり、朝に起きる凪の状態を表す言葉です。

「夕凪」が、夕方に発生する陸風から海風に切り替わるときの風が止まる状態をさすのに対し、「朝凪」は、夜の陸風から昼間の海風に切り替わるタイミングである朝の時間帯に風が止まる状態をさしています。

例文
  • 夏の晴れた日の朝には「朝凪」が見られます
  • 「朝凪」が見たくて夜明け前から海岸にでかけた

「時化(しけ)」は”荒れている海”という意味の対義語

「時化(しけ)」とは、強い風などの悪天候により海が荒れることを表す言葉。海が荒れたために漁ができない状態のとき「今日は時化で漁に出られません」などと使われ、無風で静かな海を表現する「凪」の対義語に当たる言葉です。

また、時化で不漁になることで漁師にお金が入らないことから、景気の悪いことや商品の売れ行きが悪いことなどを「しけている」とも表現します。

例文
  • 「時化」のため島に渡るフェリーが欠航している
  • 先週から「時化」が続いているので魚の入荷がありません

「夕凪」の英語表現とは?

「夕凪」は英語で”evening calm”

「夕凪」は英語で“evening calm”というフレーズで表現します。

「evening」には”夕方”や”日暮れるころ”という意味があり、「calm」には”穏やかな”や”風がないこと”という意味があるとともに「凪」という意味もあります。

同じように、朝凪は英語で「morning calm」と表現します。

まとめ

「夕凪(ゆうなぎ)」とは、夕方に発生する凪のこと。「凪(なぎ)」とは、海風と陸風が入れ替わるタイミングで起きる無風で波が穏やかな状態の海を表す言葉です。主に、陸と海の気温差が激しい夏に起きる現象であり、「夕凪」や「朝凪」は晩夏の季語としても使われています。