「内弁慶」は家の中では威張っているのに、外に出るとしぼんだ花弁のように急に大人しくなる様子を表す言葉です。親が子供の性質を表現する時によく使われる言葉ですが、言葉の由来や外弁慶についてご存知でしょうか?
今回は「内弁慶」の意味と気になる由来、使い方の注意点と例文を解説します。また言い換えのできる類語と反対語についてもまとめました。
「内弁慶」の意味と由来とは?
「内弁慶」の意味は”家で威張り外で大人しくする”
「内弁慶」の意味は、“家の中では威張っているのに、一歩外に出ると別人のように大人しくなること”です。自分の伴侶や奥さんなど、一緒に住んでいる家族に対して偉そうな態度をとっているが、家から出ると突然意気地がなくなり、静かになるような性格を表します。
「内弁慶」とは家と世間での表裏を表す
「内弁慶」は家の中と世間で見せる自分の姿が真逆であるのが特徴です。家の中では自分に最も権威があり怖いもの知らずという態度を取るのに対して、ひとたび世間に出ると、他人にペコペコ頭を下げたり、気弱な面を見せます。家では自慢ばかりしているのに、外では自信なさげに周囲の反応ばかり気にする人ということで、性格の「うらおもて」は明確です。
「内弁慶」は子供に対してだけではなく、大人になっても、また男女の関係なく使われる性格のあり方です。おじいちゃんになっても、おばあちゃんになっても「内弁慶」の性質を背負うことは往々にしてあります。
「内弁慶」の由来は”武蔵坊弁慶の強さ”
「内弁慶」は平安時代末期に活躍した僧兵「武蔵坊弁慶(むさしぼうべんけい)」に由来しています。「弁慶」の愛称で知られる武蔵坊弁慶は、敵軍を前に複数の矢の束を浴びても動じず、怯まず、そして主君を最後まで守り抜き、立ちはだかったままで亡くなったと言われています。この時「弁慶」は想像を絶する精神力の強さと、主君へのロイヤリティの高さを見事に示したのです。
「弁慶」は今もなお「強さ」を象徴する人物として崇められていますが、「内弁慶」は「内=家の中」にいる家族や親しい人に対してのみ強靭な姿を見せる、「弁慶」の性格をたとえて使われるようになりました。
その他、「弁慶」を使った表現に「弁慶の泣き所」があります。人が最も痛みを感じる「脛」の部分を指し、いくら強さの象徴である弁慶でも我慢ができず、思わず泣いてしまうという比喩表現を用いた表現となります。
「内弁慶」の使い方の注意点と例文とは?
「内弁慶」をネガティブな性格として使わない
「内弁慶」は一見ネガティブな性格として映りますが、世間に出ると大人しく抵抗することがないので人当たりは良いと言えます。たとえば、「内弁慶」な人は険悪な職場のムードを和らげてくれるかもしれません。また、気弱に振舞い相手に媚びるような傾向もあるため、同僚や上司からも好まれる確率も高いです。
もちろん、これらの長所は家庭では強気で威張っているという事実が、外に出れば見えないためですが、「内弁慶」をネガティブな性格として一括りにして考えるのは適切だとはないと言えます。
「内弁慶なので〇〇は苦手です」「内弁慶が理由で〇〇ができません」というように、どうしてもネガティブなニュアンスで言葉を使ってしまいますが、「内弁慶」にも世間的には長所や良い面がいくつかあることを忘れないようにしましょう。
「内弁慶」を使った例文
「内弁慶」を使った例文をご紹介しましょう。
- 私は昔から内弁慶で、外に出ると急に大人しくなってしまう。
- 弁論大会の代表に選ばれたが、内弁慶のため自信がない。
- 内弁慶の性格を直すために、駅前で募金活動に参加した。
- 子供のころ親子面談で母が「うちの子は本当に内弁慶で…」と常に言っていた。
「内弁慶」の類語と反対語(対義語)とは?
「内弁慶」の類語は”亭主関白”や”かかあ天下”
「内弁慶」と言い換えができる表現は「内気」や「引っ込み思案」などのほか、家で威張っていることを強調する「亭主関白・かかあ天下」などが挙げられます。また性格が家と外で真逆であるという点では「二重人格・うらおもてがある」なども類語の仲間と言えるでしょう。
また、「内弁慶」の同義語に「陰弁慶(かげべんけい)」があります。「陰弁慶」は人のいない場所や一人の時は強気でいるのに、人前に出たとたんに気弱になり縮こまってしまうことを意味します。
「内弁慶」の反対語(対義語)は”外弁慶”
「内弁慶」の対義語にあたり、逆の言葉を表す言葉が“外弁慶(そとべんけい)”です。家にいる時は大人しく家族に抵抗したり文句を言ったりしないのに、一旦外に出ると自慢たっぷりに振舞い威張ることを指します。
「外弁慶」とは、たとえば、職場では好き勝手で傲慢な態度を取っているのに、家に帰ってくると急に大人しく優しくなるような人のことを表します。もちろん、家事や子育て、教育方針や家族旅行などに対して伴侶の意見に抵抗なく同意するような姿は好意的ですが、仕事先での威張り具合は家族にとって想定外となる場合が多いでしょう。
まとめ
「内弁慶」とは家の中では自慢ばかりして偉ぶっているのに、ひとたび外に出ると気弱になり相手にペコペコしたりする性格を表します。世間では周囲の目を気にしながら、衝突しないように大人しく振舞うのが特徴で、「強い人」の代名詞である「武蔵丸弁慶」が由来となった言葉です。
家族や親友は強気で威張る一面しか知らないため、全く異なる世間での振る舞いに驚愕してしまうこともあるでしょう。「内弁慶」に輪がかからないように、世間での自分にも自信を持って堂々とパフォーマンスしていきたいものです。