「赴く」の意味と読み方は?「趣く」との違いと使い方・類語も解説

「赴く」はある場所に向かって行くという意味で使われる言葉です。「赴任」や「赴くまま」などの表現に用いられますが、実際は複数の意味を持つため、使い方への正しい理解が必要となります。

ここでは「赴く」の意味をはじめ、読み方と語源を紹介します。また「趣く」との違いや使い方の例文、類語表現もわかりやすく解説します。

「赴く」の意味とは?

「赴く」の意味①ある場所や方角に向かって行くこと

「赴く」の意味は、“ある場所や方角に向かって行く”ことです。実家や取引先のビルなど住所が明らかな場所など限定された場所に限らず、抽象的に海外や北の方、山、温泉など、ある程度の目途ある目的地に対して使われます。

具体的な場所に自ら足を運ぶこと、徒歩でも車でも、電車や飛行機を乗り継いでも、人がある場所に向かって行くことを「赴く」と言います。

「赴く」の意味②ある状態に向かうこと

「赴く」は“ある状態に向かうこと”を意味します。たとえば、今は病気で寝込んでいるが、少しずつ良い状態に向かっている時、また七転八倒の職場が徐々に落ち着いてき始めている時など、ある状況から別の状態に変わりつつある時に「赴く」を使います。

おおむね、状態が悪い方向に向かう時には使われず、むしろ、良い方向になびく場合に使われることが多いです。

「赴く」の意味③その方向に気持ちが向かうこと

「赴く」は、前述の二つの意味に加えて、“気持ちの上でその方向に向かうこと”も意味します。つまり、心がある別の状態へと傾き、徐々にその方向へと動いていくことを表しています。

たとえば、断固として拒否していた転勤の話に、上司や同僚の説得が重なり、心がそのように傾くような状況を言います。また、一定の趣旨や主張、方針や考えがある場合、そのような方向で考えることも「赴く」と表現できます。「学歴不問という条件に赴く」「週末出勤を廃止する意見に赴く」などのように、考えや意見がそのような方向に向かうことを指します。

「赴く」の読み方は「おもむく」

「赴く」の読み方は“おもむく”です。誤って「とく」や「ふく」などと誤読してしまわないように気をつけましょう。

「赴く」の語源は「面向く」

「赴く」はもともと「面(おも)」と「向く(むく)」に由来し、顔(面)をその方向へ向けるという意味で出来た言葉です。

漢字の「赴」が使われるようになったのは、「走」に”ト(急に伏せるの意味)”を付けた「赴」が、”転倒しながら急いでかけつける”という意味があることから、結果的に現在の意味と漢字表記に落ち着いた背景があります。

「赴く」は敬語でどう使う?

「赴く」は「行く」「訪問する」の敬語表現

「赴く」は”行く・訪問する・足を運ぶ”などの敬語表現としても使われます。たとえば、取引先を訪問する時に「これから伺わせていただきます」という代わりに、「これから赴かさせていただきます」と伝えることもできるということです。

「赴く」は「伺う」と同等の表現であるため、「訪問する」の謙譲語としても活用できます。

普段の会話では「赴いてくる」ではなく「行く」でよい

言うまでもありませんが、「赴く」は敬語表現であるため、普段の会話で「ちょっと、コンビニまで赴いてくるわ」「明日から旅行に赴いてくる」というような使い方は適切ではありません。カジュアルな雰囲気で使う時は、普通に「行く」を使いましょう。

「赴く」の使い方と例文

「赴く」と「趣く」は同じ意味を持つ

「赴く」は「趣く」とも表記することができます。主に「海外に赴く・実家に赴く」など、実際的にその場所や方向へ向かっていくという意味では「赴く」が使われ、考えや状況に対してそのような方向性で考える意味では「趣く」と表現することがほとんどとなります。

また「趨く」と表記も存在します。古い書物や故事で使われることはありますが、常用漢字ではないため、日常生活において見かけることは稀でしょう。

「赴くままに」は”心が向かうままに”という意味

「赴く」でよく使われる言い回しは「赴くままに」です。「赴くままに」は”心が向くままに”という意味で使われる熟語表現で、深く考えずに勢いにまかせること、衝動のままになんとなく、というニュアンスを持ちます。

好き勝手にものごとを始めるというネガティブな意味合いではなく、どちらかと言えば、自分の気持ちに逆らわず、ごく自然にといった肯定的な意味合いの方が強いと言えます。

例文
  • 心が赴くままに
  • 本能の赴くままに
  • 感興の赴くままに
  • 衝動の赴くままに
  • 感情の赴くままに
  • 意思の赴くままに

「赴く」を使った例文

  • 来月から地方支店に赴くことになりました。
  • 田舎に赴いたのは、小学校時代の旧友に会いに行くためだ。
  • 戦場のような職場も、閑散期に向けて静かな雰囲気へと赴き始めた。
  • 経営状態が赤字から黒字へと少しずつ赴き始めた。
  • そろそろ社長の意思も、合併合意へと赴いてきたようである。

「赴く」の類語とは?

「赴く」の類語は”参る・出向く・来訪する”など

「赴く」の類語には“参る・出向く・来訪する”などがあります。「参る」は”行く・来る”の謙譲語で、自分をへりくだる時に使われる表現です。「出向く」は”自分からそちらへ足を運ぶ”、「来訪する」は”訪問する・訪ねる”という意味があり、ビジネスでもよく使われる一語です。

それぞれ同じような意味合いを持ちますが、言葉の響きや相手に与えるニュアンスが異なるため、状況に合わせて適切に使うことが大切です。以下で言い換えの例を挙げて比較してみましょう。

類語の比較例
  • 取引先に赴く
  • 取引先に参る
  • 取引先に出向く
  • 取引先に来訪する

上記の4つで最もしっくりくる言い換えの類語は「出向く」です。しいて言うなら「参る」はこの状況において必要以上に堅苦しい印象があるでしょう。また「来訪する」は文脈的にピッタリときません。

まとめ

「赴く」とは”趣く”とも表記することができ、「ある方角や場所で向かって行く・ある状態で向かっていく・ある状態へ気持ちや心が動いていく」という意味で使われます。

ビジネス環境では「海外出張に赴く・契約へと赴く・別の意見に赴く」などのように、さまざまな状況で活用できる便利な表現です。ぜひ、この機会に「赴く」を習得して上質なコミュニケーションへと役立てていきましょう。