「はたまた」はやや古めかしい響きがする言葉ですが、舞台や小説などのセリフでは好まれて使われる表現です。語源や漢字表記も気になるところですが、正しい使い方を習得すれば日常生活でも活用することができます。今回は「はたまた」の意味を中心に、使い方とその例文、また類語表現などをご紹介しましょう。
「はたまた」の意味と漢字表記とは?
「はたまた」の意味は”それとも・あるいは”
「はたまた」の意味は、“それとも・あるいは”です。「はたまた」は文章と文章の間に置かれる接続詞で、主に疑問的な2つの内容を強めて表現する時に使われます。
また「はたまた」は方丈記にも使われている古語であり、「漢文訓読語」の一つでもあります。前述したように、2つの疑問文の間に用い、2つの内容の1つを追及する目的で使われる言葉ですが、とくに「はたまた」については中世紀以降に流行った「和漢混交文」で見られる表現としても知られています。
「はたまた」の漢字表記は”将又”
「はたまた」を漢字で表記すると“将又”となります。「はたまた」は文書や書籍においても通常ひらがな表記で用いられることがほとんどです。
そもそも「将」は副詞の働きを持ち、他の事象と関連付けながら羅列して述べる時に使われる言葉です。その「将」に「もしくは」という意味を持つ「又」を付けることで、前後に置かれた内容を強調する役割を持ち合わせています。つまり「将又」は「それともの強調系」とも説明できるでしょう。
古めかしい語勢を持つため、日常生活で見聞きすることは少ないかもしれませんが、漢字で表記する場合は「将又」となります。知識の泉として覚えておきましょう。
「はたまた」を上手に使うには?
「はたまた」は状況をドラマチックに語る時に効果あり
「はたまた」というフレーズを見聞きするのは、小説や舞台など状況をあえて強調して、ドラマチックに描写しなければならない環境で使われることが多いです。たとえば刑事もののドラマを想定して、下記の文章を比べてみて下さい。
- 可憐に見えるが彼女はシロなのか?それとも、クロなのか?
- 可憐に見えるが彼女はシロなのか?あるいは、クロなのか?
- 可憐に見えるが彼女はシロなのか?はたまた、クロなのか?
さて、上記の1から3の文章で、どれが最も強く胸に高唱するでしょうか?おそらく3番目の文章でしょう。「それとも」や「あるいは」という基本的な意味を持ちながら、2つの疑問的な文章を強調し、加えて1つを追及するという役割を立派には果たしています。「はたまた」を使うと、より一層受け手の興味を引き付けることが理解できるでしょう。
「はたまた」を使った例文
「はたまた」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。
- 給料の良いA社を選ぶか、はたまた福利厚生が充実しているB社を選ぶべきか?
- 会社を休むべきか、はたまた無理をしてでも行くべきか悩んだ。
- もしやこれは謎解きなのか、それとも罠なのか?
- 逃げるが勝ちが、はたまた石の上にも3年か?難しい選択だ。
- 夢か、将又現実か…。
上記の例文のように「はたまた」は、一つの考えを述べた上で、続けて可能性が低そうな考えや案を思い巡らしたり、また平行する話題のどちらかに言及するような状況で時に使われます。
「はたまた」と言い換えができる類語とは?
類語①「翻って」
「翻って(ひるがえって)」とは、使い方がやや難しい言葉の一つですが、意味は”別の立場で見て・違った方面に目を転じて”などになります。砕けて解釈すれば「これとは反対に・一方では」という意味です。日常会話でも使われますが、とくに国会や企業でのディベートや正式な文書で好んで使われています。
- 第三国のパソコン普及率は低いが、翻って発展途上国の現状は極めて高くなっている。
- 現在の職場は高待遇だが上司は最悪だ。翻って考えれば、前社の部長はフレンドリーだった。
類語②「他方」
「他方(たほう)」とは、名詞的に別の方向やもう一方という意味のほか、副詞的に”一方では・他の方面から見ると”などの意味で使われます。「はたまた」や「翻って」と同じように、2つの文章の間に置き、内容を強調する意図で用いられる表現です。
- 郊外では安価で家が購入できるが、他方、やはり通勤に時間がかかりすぎる面もある。
- 大家族は温かみがあり笑い声が絶えない。他方、プライバシーがないのは苦痛である。
まとめ
「はたまた」は漢字で「将又」と表記し、意味は「それとも」や「あるいは」となります。古語であるため、古めかしい風格のある語調が特徴的で、二つの疑問的な文章の間に置かれる接続詞として使われます。
「はたまた」は「それとも」や「あるいは」という意味をさらに強調する意図で用いることが多く、劇的にスリリングに描写する場面で言葉の威力を発揮します。また、日常的なシーンでも、あえて雰囲気を出すためにスパイス的な感覚で使うこともあるでしょう。ぜひ、「はたまた」が与える反響を想像しながら、会話を楽しんでみて下さい。