「彼はすぐ言い訳にするけど、二枚舌だから信じちゃだめよ」と忠告を受けた経験がある人もいるかもしれません。「二枚舌」は漢字から意味を想像するのが難しいため、事前に意味を把握しておきましょう。また、漢字が似た「三枚舌」や類語のダブルスタンダード、二枚舌の人の心理もご紹介します。
「二枚舌」の意味とは
「二枚舌」の意味は「矛盾やうそを言うこと」
「二枚舌(にまいじた)」は「矛盾がある話やうそを言うこと」という意味です。別々の人に意図的にうそをつくことの非難として使われることが多い、ネガティブな言葉です。
語源は仏教用語だと言われています。仏教には「両舌(りょうぜつ)」という「口でつくる悪」があります。別々の人に違うことを言い、意図的に仲たがいさせるという意味です。「両舌」は舌が二枚あることを表しているため「二枚舌」と言われるようになったそうです。
「二枚舌」の使い方と例文
「二枚舌を使う」はうそを言うこと
「二枚舌」は「二枚舌を使う」という形でよく使用されます。矛盾した話やうそを言うことを表現します。
- 「最初は面白い話をする人だと思ったが、二枚舌を使う人だと分かったので縁を切ることにした」
- 「彼女は私以外の人にも、バンドのチケットを譲ると二枚舌を使っていた」
- 「本を読んで考えを変えただけなのに、二枚舌だと言われてしまった」
「二枚舌」は勘違いや配慮には使わない
「二枚舌」は意図的にうそを言う場合に使用されます。勘違いや相手への配慮で事実とは異なることを言った場合は「二枚舌」とは言いません。ただし、事情が伝わらず「二枚舌」だと誤解されることはあり得ます。
- 「その日は先約があるのを忘れて、職場の同僚と飲みに行く約束をしてしまった」
→忘れていたことが言い訳だと思われ、どちらにも行くと返事をする二枚舌だと非難されるかもしれません。 - 「友人には退屈な田舎で嫌だと言っているが、地元愛の強い親戚の前では『静かでよい町』と褒めてしまった」
→多くの人は親戚を気遣った言葉だと思うでしょう。しかし、親戚に嫌われないための二枚舌だと受け取られる可能性もあります。
「二枚舌」の類語
「二枚舌」の類語は「ダブルスタンダード」
「二枚舌」の意味から考えると「ダブルスタンダード」が類語だと言えるでしょう。
「ダブルスタンダード」は「ダブスタ」と略す場合もあります。「同じ基準を用いるべき場合なのに、対象によって異なる基準を設ける」という意味です。不公平な基準に対するネガティブな言葉で、合理的な理由がある場合はダブルスタンダードと言いません。(例:全員同じメニューが基本の学校給食で、病気や宗教で食べられないものがある子どもには別メニューにする)
二枚舌とは違い「ダブルスタンダード」は1つ1つの基準はうそだとは限りません。また、その場でころころ変わるのではなく、対象によって基準が定まっているのも違うポイントです。
「三枚舌」は類語ではなく主に政治用語に使う
「三枚舌」は二枚舌の類語として使われることはほとんどありません。主に使われるのは第一次世界大戦中にイギリスが行った外交「三枚舌外交」です。アラブ・フランス・ユダヤそれぞれに配慮した3つの外交はお互い矛盾していて、さまざまな問題につながったと言われています。なお、論点を分かりやすくするために中東問題だけに注視し「二枚舌外交」と呼ぶこともあります。
二枚舌の類語としての「三枚舌」は、使用例が少ないため無理に使う必要はありません。使う場合は「三枚舌外交」のように三者に向けてうそをつく意味で使われます。
「二枚舌の人」の心理と付き合い方
悪意がない「二枚舌の人」の心理
二枚舌を使う人の中には「自分だけ得してやろう」「うそで注目を集めよう」のような悪意が全くない人もいます。以下のような心理で、つい二枚舌を使ってしまうと言われています。
- 相手を傷つけたくない。
相手の心情を察して本当のことを言いません。「思いやり」や「マナー」とも言えるため、二枚舌だと受け取らない人も多いでしょう。 - 相手に嫌われたくない・怒られたくない。
自分が悪く思われないためにうそを重ねてしまいます。
中には悩みやトラウマが原因のため、病気として治療が必要な人もいるようです。ただし、専門家でないと判断できないため、個人で決めつけるべきではないでしょう。
「二枚舌の人」の話は冷静に対応する
二枚舌の人と付き合う基本は「冷静に対応する」ことです。安易に信用・同調せず淡々と受け答えしましょう。
冷静に判断することで、相手の話の矛盾点やうそを見抜ける可能性が上がります。さらに、悪意があるタイプなら「この人はだませない」と判断して、相手から距離を置いてくれることも期待できます。
まとめ
「二枚舌」の意味は「矛盾のある話やうそを言うこと」で、悪意があることを非難する言葉です。
根拠のない話は安易に信用せず、冷静に対応して「二枚舌」に振り回されないようにしましょう。また、勘違いや過度な気遣いから、相手に二枚舌だと誤解されないよう注意が必要です。