「努力の賜物」などと使われる「賜物」という表現があります。一般的な意味とは違う意味で『聖書』にも多く登場するため、その意味があいまいだと感じる人も多いかもしれません。
この記事では、「賜物」の一般的な意味と聖書の意味を解説します。あわせて使い方と例文や、類語と英語表現についても紹介します。
「賜物」の意味と読み方とは?
「賜物」の意味は”試練のあとに得られる良い結果”
「賜物」の意味は、“苦しい試練などのあとに得られる良い結果のこと”です。
苦労した結果に得ることができた物や、その結果として生じた良いことを表すことが多いため、「苦心の賜物・苦労の賜物」などの表現がよくみられます。
「賜物」のもう一つの意味は”上位の人から授かる恩恵”
「賜物」は、人が自らの行動によって獲得する良い結果、つまり報酬的な意味で使われるとともに、上下関係における上位の人から授かる良いものや結果という意味でも使われます。
例えば、上位の人からの援助などによって良い成果が得られた時に「先生のご指導の賜物です」などと表現します。
「賜物」の読み方は”たまもの”
「賜物」の読み方は“たまもの”です。もともとは「賜」の一字で”たまもの”と読んでいました。両者は同じ意味の語です。
他に「賜り物(たまわりもの)」という語がありますが、この意味は”いただいた品物・頂戴したもの”という意味で、いただいた物を丁寧に言う表現です。「賜物(たまもの)」とは別の意味の語となります。
聖書での「賜物」は「神からの贈り物」の意味
キリスト教の『聖書』においては、「神の賜物」や「天からの賜物・恵みの賜物」という表現が多く登場します。キリスト教における「賜物」は、”神から人への贈り物”という意味です。聖書には、「言いつくせない賜物のゆえに、神に感謝する」などの表現があります。
日本語における「賜物」の一般的な意味は、前に説明したように「試練のあとに得られる良い結果」であり、自分の努力の結果として得られるなんらかの報酬のことを指します。その一方で、キリスト教における「賜物」は神からの一方的な恵みであり、無償で与えられるものを意味します。
「賜物」の使い方と例文とは?
「苦労の末の成果」として使う場合
苦労の末に自分で獲得した成果という意味での「賜物」は、次のような例文がその使用例です。
- 消防士の迅速な消火活動は地道な訓練の賜物だ
- このたびの栄転は苦心を重ねた末の賜物だと言える
- 父が健康を保っているのは、母の日頃の気遣いの賜物だ
「上位の人から受ける恩恵」として使う場合
上位の人から受ける恩恵の意味での「賜物」は、次のような使い方がされます。
- 今日の私があるのは、先生の援助の賜物です
- 心に響く名言は先人たちが残してくれた賜物である
「天からの恵み」という意味で使う場合
キリスト教における「賜物」には、”神から人への恵み”という意味があることを先に説明しましたが、それと似た概念で日本では”天から人への恵み”という意味で「賜物」が使われることがあります。
- 高齢で授かった子どもは天の賜物だと感じている
- 四季折々の豊かな食材は天からの賜物だ
「賜物」の類語・対義語とは?
「賜物」の類語①:恩恵
「賜物」の類語に”恩恵(おんけい)”があります。「恩恵」とは、”恵み”という意味で、「恩恵を授かる・自然の恩恵に浴する」などと使われます。
「恵み」という意味では「賜物」も「恩恵」も同じ意味を持ちますが、「賜物」は苦労の末に自分で獲得した成果や恵みという意味があるのに対し、「恩恵」は自然の恵みというように、無償で授かる恵みという意味が強いといえます。
「賜物」の類語②:恩寵
キリスト教における「賜物」の類語としては”恩寵(おんちょう)”があります。「恩恵」とは、「神の恩寵」と使われることが多いように、神から受ける恵みという意味です。
「賜物」の対義語:弊害
「弊害」の意味は、”害となる良くないこと”です。何かをすることで生じるというニュアンスも含まれているため、「賜物」の対義語にあたります。ただし、”上位の人から授かる恩恵”の意味の「賜物」の対義語にはなりません。
「賜物」の英語表現とは?
「賜物」は英語で”the fruit”
「試練のあとに得られる良い結果」の意味の「賜物」の英語には“the fruit”があります。手にした成果のことを「果実」と日本語でも表現しますが、同様の使い方です。
他にも「成果・結果」などの意味では、”the result”とも表現できます。「努力の賜物」は英語で”the fruit of one’s efforts”や”the result of one’s efforts”です。
また「上位の人から授かる恩恵」といった「賜りもの」の意味では”gift”や”present”も使われます。「天からの恵み」に近い意味では”blessing”です。
まとめ
「賜物」とは、”試練のあとに得られる良い結果”という意味と、”上位の人から授かる恩恵”という意味で一般的に使われています。『聖書』に多く登場する「賜物」は、”神からの贈り物”という意味で使われています。
「賜物」には報酬的な意味と、一方的な恵みの意味の両方があるわけですが、日本においては「神の恵み」という概念はなく、自然や天からの恵みという概念のもと使われています。
キリスト教における「賜物」の概念は、キリスト教の教義を深く知らなければ、理解しにくい概念であるといえるでしょう。