文章の前に置く言葉の一つに「さしずめ」がありますが、普段はどのように使っていますか?言葉のニュアンスで何となく使っている人も多いと思いますが、後に続く内容を強調する大切な表現でもあります。今回は「さしずめ」の意味と漢字、使い方の例文、類語や英語フレーズをご紹介します。
「さしずめ」の意味とは?
「さしずめ」の意味①どんづまり・行き詰まること
「さしずめ」の意味は、“どんづまり・行き詰まること”です。名詞や形容動詞として使う場合にこの意味となります。ものごとや状態が指し詰まってしまったり、お仕舞であることを表します。
「さしずめ」の意味②今のところ・現時点でみて
「さしずめ」の意味は、“今のところ・現時点でみて”です。副詞的に使う場合にこの意味となります。将来のことや未来に何が起こるかはわからないが、今の時点で見てみるとこうである、というニュアンスで使われます。どちらかと言うと「さしあたり」や「とりあえず」という意味合いに近いです。
「さしずめ」の意味③結局・要するに
「さしずめ」のもう一つの副詞での意味は“結局・要するに”です。上記でご説明した意味「今のところ・現時点で見て」からやや意味が転じて、「今の段階で結論を出すとすれば」また「結果的に」といったニュアンスで使われます。
「さしずめ」の漢字表記とは?
「さしずめ」は漢字で”差し詰め”
「さしずめ」の漢字表記は”差し詰め”です。「差し詰め」の「差し」は「差す」のことで、「差し当たり」や「差し伸べる」と同様に、動詞の前につけて意味にアクセントをつける強調の語句です。
また「差し詰め」の「詰め」は「詰める」のことで、「追い詰める」や「話を詰める」といった表現からきていると言われています。つまり、ものごとや状況の最終局面を示す言葉として使われています。
「さしずめ」の使い方と例文とは?
最終局面を表す名詞として使う
「さしずめ」には「どんづまり」や「行き詰まること」を意味する名詞です。そのため、事業やイベントなどのように「ものごとがもう前に進まない、止まってしまった」という場面や「ものごとの最終局面を迎えた時」に使われることができます。
- 万が一、工事が差し詰めになっても慌てず会社に一報するようにして下さい。
- 新規商品へのアイデアがさしずめになり、広報部がプレッシャーをかけてきた。
- いよいよ、コンサートもさしずめに近づいてきました。
- マーケティング調査をさしずめにせず、あと一週間だけ顧客の動きを見てみませんか?
原因や理由の後に「結果を述べるとき」に使う
おおむね「さしずめ」を使うのは、ものごとの原因や理由を説明した後に、最終的な結果や現時点での報告をするときが多いでしょう。最後に「結果として・今のところ」というようなニュアンスで、結論の文脈を引き締める意図で使われます。
- 工場の機械が止まってしまった。さしずめ生産は注視となるだろう。
- 担当地域への営業は終わりました。さしずめ30件と言ったところでしょうか?
- プロテスト活動は加速するばかりだが、さしずめ軍を配備して様子を見ている。
- 手術は無事に終わり、さしずめ様態は安定しているとのことだ。
- 心配するな。さしずめ、食べるものには困っていない。
- さしずめ、彼女に振られたというわけだよ。
「さしずめ」は独特の固い語勢を持つ言葉であるため、フォーマルな場面やビジネス環境で好んで使われる表現です。
「さしずめ」の類語とは?
類語①「ひとまず」は後のことはともかく
「ひとまず」は”後のことや将来についてはともかくとして”という意味があります。
「さしあたり」と同義語で日常的にも使われる副詞の一つです。「ひとまず」には、色々な出来事や事情があり「後のことは置いておき、ここで一息ついて何かをする」と意味で使われますが、「さしずめ」は文語的であるのに比べ「ひとまず」はどちらというと口語的な要素が多い言い回しとなります。
- やっとホテルに到着した。ひとまず、荷物を置いて休もうとしよう。
- ひとまず、作業を止めて、明日のスケジュールの確認をすることにした。
類語②「目下のところ」は只今のところ
「目下のところ(もっかのところ)」とは”只今のところ”や”現在においては”という意味の副詞表現です。
「目下」には「目の前・すぐそば」という意味があり、「さしずめ」と同じく、「さしあたり・今の時点では」という意味で使われます。普段の会話では使いにくいことがありますが、職場での業務報告や事業の進ちょく状況などに対して使われることが多いです。
- 目下のところ、A社にアプローチをかけて感触を確かめているところです。
- 急な雷雨により、マラソンは目下のところ延期となっている。
類語③「当面」は今のところは
「当面(とうめん)」とは、今のところはという意味で使われます。
「当面」は今まさに直面していること、またはその様子を表す言葉で「現在の時点では」「今直面している状況を考慮する限りでは」というニュアンスで使われます。「さしずめ」とはほぼ同義語となりますが、比較すると言葉の響きが軟らかいのが特徴でしょう。
- マンションの修復工事は、当面のところ続く予定です。
- 当面のところ、海外出張を余儀なくされそうだ。
「さしずめ」の英語表現とは?
「さしずめ」は英語で”at the moment”
「さしずめ」の英語フレーズは“at the moment”が最も一般的です。たとえば、何かを説明したり伝える時に、「At the moment it is still working(今のところは稼働している)」というように使います。英語圏では誰もが使う定型フレーズです。この機会に覚えておきましょう。
まとめ
「さしずめ」は漢字で「差し詰め」と表記し、名詞や形容動詞として使う場合は「どんづまり」や「行き詰まること」、また最も多い使われ方である副詞としては「現時点では・今のところ・結局・要するに」と言った意味合いで使われます。
表現の響きが固いため、カジュアルな会話ではあまり選ばれない言葉ですが、ビジネスシーンでは、後に続く結論や結果などを強調する意図で用いられます。「さしずめ」を上手に使って、文章を賢くまとめていきましょう。