「くだん」と読む言葉は複数あります。特に、妖怪をモチーフにした小説や漫画で見られる「くだん」と、会話の中で修飾語として使う「くだん」は、漢字も同じ「件」なので注意が必要です。また「件」には他の読み方も。「くだん」の3つの意味や、「件」の3つの読み方をご説明します。
「くだん」の意味とは
会話や文章でよく使われる「くだん」には主に3つの言葉があります。
「件(くだん)」の意味①「前に述べたこと」「いつものこと」
1つ目の「くだん」の漢字は「件」です。
意味は「前に述べたこと(前述)」「いつものこと」で、後ろに続く言葉を説明する修飾語のように使われます。「くだんの店」「くだんの件(けん)」と使われている場合は、ほぼこの意味だと判断して問題ないでしょう。
「件」は他にも「けん」「くだり」と読み、それぞれ意味が違う言葉があります。そちらは後程ご説明します。
「くだん(件)」の意味②妖怪の名前
2つめの「くだん」は、江戸時代から昭和ごろに現れたとされる妖怪です。漢字では「件」と書きます。
人偏に牛と書く漢字の通り、人の顔と牛の体を持った姿が最もメジャーです。人間の言葉で病気や戦争を予言し、その後は短期間で亡くなるとされています。目撃証言が多く、件のものとするミイラも残っています。また、家に貼ると厄除けになるという件の絵付きの瓦版が江戸時代に発行されていました。
同じように予言をし、姿絵が厄除けになるとされる妖怪の伝説は他にもあります。顔だけが人の人魚・神社姫や、アマビエなどです。
「くだん」の意味③東京の地名「九段(くだん)」
「九段」という漢字で書く場合は、東京の地名になります。千代田区にあり、靖国神社や日本武道館、九段会館が有名です。
また、東京メトロ・都営地下鉄の駅名には「九段下駅」があります。「九段」の語源は、九段屋敷だと言われています。江戸時代の幕府の御用屋敷で、9層の石段で築かれました。
「くだん(件)」の使い方と例文
「くだん(件)」は「件の」で事柄を省略する際に使う
修飾語のように使う「くだん(件)」は、「件の」という形でよく使用されます。お互いに分かっている事柄の名前を出さず、省略する場合に使用します。
「件の」を使った例文
お互いが分かっていない事柄に使うと話が通じなくなってしまうので、注意が必要です。
「件(くだん)」の類語
「件(くだん)の類語は「例の」
修飾語のように使う「くだん(件)」と似た意味の類語は「例の」だと言えるでしょう。
「例の」の意味は「お互いが知っている人や事柄」「いつものように」です。「くだん(件)」より伝わりやすい言葉ですので、相手によっては「例の」に言い換えるとよいでしょう。
「件」の類語「例の」を使った言い換え例
「件の話は、絶対に言いふらさないでください」
=「例の話は、絶対に言いふらさないでください」
「くだん」以外の「件」の意味
「けん(件)」の意味は「事柄」「事柄の単位」
「けん(件)」は「事柄」や「事柄の単位」という意味です。「案件」「物件」「別件」など、他の言葉に続けて使うこともあります。よく使われているため、もっとも浸透している読み方と言えるかもしれません。
「くだん(件)」とあわせて「件の件(くだんのけん)」と使うこともあります。意味は「前述の件」「例の件」です。読みやすいように「くだんの件」と書くこともあります。
「けん(件)」を使った例文
- 「メールにはきちんと件名をつけて送信しましょう」
- 「忘年会の件ですが、出欠の返事がまだ半分も集まっていません」
- 「保留になっている案件が4件も溜まってしまった」
- 「今日の作業で処理できた申請は23件です」
「くだり(件)」の意味は「話の一部分」
「件」は「くだり」とも読みます。「くだり(件)」は「小説などの文章や話の一部分」です。「条」とも書きます。
- 「主人公が子猫と再会する件はとても感動した」
- 「中盤のバスで移動する件はあまり重要ではないから、もっと短くまとめても良いと思う」
なお「くだん(件)」は「くだり(件)」が変化したという説もあります。そのため、厳密には「くだり(件)」にも「前述の」「いつものこと」という意味があります。ただし、現在ではあまり使用されず、相手に通じない可能性があるため、無理に使わない方が無難です。
まとめ
「くだん」と読む言葉は複数あります。特に「件」は「くだん」と読む意味が2つ、違う読み方の言葉が2つあるため注意して区別する必要があります。
自分が「くだん」を使う場合も、相手に誤解を与えていないか配慮した言葉遣いをしましょう。
→「前述の店(もしくは「いつもの店」)は完全禁煙だから、ヘビースモーカーのAさんとの待ち合わせには向いていない」
→「前述の客(もしくは「いつもの客」)から、またクレームがあった」