「奥ゆかしい」は漢字で「奥床しい」とも書きます。誉め言葉としてよく使われますが、意味を勘違いしている方が多い言葉です。「奥ゆかしい」の本来の意味を、例文とあわせて確認しましょう。また、古文にでてくる語源になった言葉や、類語・対義語もご説明します。
「奥ゆかしい」の意味は?
「奥ゆかしい」の意味は「上品で心がひかれる」「もっと知りたい」
「奥ゆかしい」には2つの意味があります。「上品で気遣いができていて、心がひかれる」と「奥にあるものに心がひかれる、もっとよく知りたい」です。主に使われるのは前者の意味になります。性別を限定する意味は含まれていませんが、女性を表現するために使われることが多い言葉です。
「奥ゆかしい」は漢字で「奥床しい」
「奥床しい」という漢字で書かれることもあります。「床」は音からの当て字のため、「奥床しい」に「床」の意味はありません。
「ゆかしい」だけでも「心がひかれる」という意味になる
「ゆかしい」は漢字にすると「床しい」または「懐しい」です。意味は「気品があって趣深く、心がひかれる」「見たい、知りたいと思う」「なつかしく感じられる」です。後者の意味では「古式ゆかしい」と使われることが多くあります。
前2つの意味は「奥ゆかしい」とよく似ています。違いは「ゆかしい」は人だけでなく自然や感覚的な事柄にも使われることです。「奥ゆかしい」は人や、人為的なことに使用されます。
- 「お香のゆかしい香りでリラックスして眠ることができた」
- 「ゆかしい風情の町並みをたくさん写真に残した」
「奥ゆかしい」の語源は古語の「奥床し」
「奥ゆかしい」の語源は古語の「奥床し(おくゆかし)」です。意味は「もっとよく知りたい」「上品で心ひかれる」です。「床し」は元は「行きたい」という意味でした。転じて「見たい、知りたい」という意味でも使われます。
現代では使われることが少ない前者の意味も使われていたようです。例えば、平安時代の歴史物語「大鏡(おおかがみ)」には「おくゆかしき心地する(もっとよく知りたい気がする)」と書かれています。
「奥ゆかしい」の使い方と例文
「奥ゆかしい」は「控えめで気配りができる」という誉め言葉として使う
「奥ゆかしい」は主に女性の誉め言葉として使われます。「控えめで気配りができる」「落ち着いていて気品がある」ような女性を表現する言葉です。「アピール不足」「積極性が足りない」といったネガティブな意味で使われることはほとんどありません。
- 「彼女はとても奥ゆかしい人だ」
- 「結婚相手に求めるのは、奥ゆかしさです」
言葉の意味としては誤用ではないのですが「奥ゆかしい」を男性に使うのは避けた方が無難です。女性に使うイメージが強い言葉のため、誤用や嫌味だと感じる人がいる可能性があります。
誤用に近いが「目立たなくて従順な人」にも使われている
「奥ゆかしい」は「目立たなくて従順な人」にも使われています。言葉の意味は時代によって変化していくものではありますが、今のところは誤用に近い使い方になるため、避ける方が無難かもしれません。
「奥ゆかしい」には「心がひかれる」「もっと知りたいと思う」という意味合いがあります。控えめながらも魅力的で、注目を集める人を表す言葉です。「目立たない」とは反対だと言えるでしょう。また気遣いや心遣いも含まれるため、指示の通りにする「従順」も意味が一致するとは言えません。
「奥ゆかしい」の類語
「奥ゆかしい」の類語は「淑やか」「慕わしい」
「奥ゆかしい」の類語は「淑やか」「慕わしい」です。「淑やか」は上品な人(主に女性)を誉める言葉として使います。「慕わしい」は心がひかれる様子が「奥ゆかしい」と近い意味です。
- 淑やか(しとやか)
物静かで上品であること。主に女性を誉める言葉。「おしとやか」とも。
「淑やかなふるまいをするお嬢様」 - 慕わしい(したわしい)
相手に心がひかれ、恋しく思う。懐かしく思う様子にも使われる。
「ずっとお慕わしく思っておりました」
「奥ゆかしい」の対義語
「奥ゆかしい」の対義語は「おてんば」「がさつ」
「奥ゆかしい」の対義語になるのは「おてんば」です。女性に限定しない場合は「がさつ」が当てはまります。
- おてんば
慎みがなく、はしゃぎ回る若い女性。活発でかわいいとポジティブに受け取る人もいる。
「あんなおてんばな娘が、式典の間おとなしくしていられるのだろうか」 - がさつ
言動が荒っぽく、落ち着きがない。細かい配慮ができない。
「がさつな彼が作った書類は毎回読みにくい」
まとめ
「奥ゆかしい」の意味は「上品で心がひかれる」「もっと知りたい」です。控えめながら魅力ある人(主に女性)への誉め言葉です。誤用に近いのですが「地味で従順な人」にも使われます。
外国の人とのやり取りが増えた昨今では、アピールできる力が重要だと言われています。「もっと知りたい」と思わせる本来の「奥ゆかしさ」で上手にアピールしていきましょう。