すべての関係者に利益などを与えることを「総花的」と言います。「そうかてき」は誤りで、正しい読み方は「そうばなてき」です。
今回は、「総花的」の意味や使い方の例文について解説します。類語・反対語や英語表現についても紹介しましょう。
「総花的」の意味とは?
「総花的」とは「関係者すべてに利益を与えること」
「総花的」とは「すべての関係者にメリットや恩恵を与えるような方法」のこと。また、「全員をまんべんなく引き立てること」です。
「総花」とは、もともと花柳会や料亭などで客が店の人全員に配る祝儀のことで、ここで言う「花」とは祝儀をさしています。そこから転じて「総花的」は、「すべての関係者に利益や恩恵を与えること」や「全員をまんべんなく引き立てたること」という意味で使うようになりました。
「総花的」の読み方は「そうばなてき」
「総花的」の読み方は「そうばなてき」です。「総」を音読みの「ソウ」と読むため「そうかてき」と読みたくなりますが、「花」は訓読みの「ばな」です。このように、上の字を音読みし下の字を訓読みする熟語を総称して「重箱読み(じゅうばこよみ)」を言います。
「総花的」の使い方と例文は?
批判的な意味として使う
「総花的」という言葉は、周囲の人のご機嫌を伺うためや人気取りのために全員に利益を与えるといったニュアンスが含まれています。そのため、全員に平等に分け隔てなく恩恵を与えるというよりは、全員に良い顔をしているというネガティブなイメージで使うことの多い言葉です。
事柄を羅列して具体性に欠ける場合に使う
「総花的」は、「事柄全体を羅列して中身がぼやけている」といった意味でも使うことがあります。あれもこれもと詰め込んで羅列して具体性に欠け内容がわかりにくい話などを「総花的な話」と表現します。この場合は、単純に「羅列して事柄のすべてを網羅している」という意味だけではなく、「羅列的で具体性に欠けて論点がぼやけている」といった批判的なニュアンスが入っています。
「総花的」の本来の意味とは多少違いますが、近年増えている使い方です。
「総花的」を使った例文
- 総花的な経営では失敗が多くなるのも当然だ
- あれもこれもと欲張って総花的な目標を立てたら結局なにも実現しないよ
- 部長の話はいつも総花的で何を言いたいのかわかりにくい
「総花的」の類語・類義語・言い換え表現
「手当り次第」は「中身や順序を考えない様子」
「手当り次第」とは、「手にふれるものや見つけたものが何であろうと中身や順序などは考えない様子」をさす言葉。「投げる」や「読む」など動詞をつけて使います。
「総花的」には「すべてにまんべんなく」という意味が含まれますが、「手当り次第」は「すべてを網羅するとは限らずかたっぱしから」というニュアンスです。
- ひまだったので手当り次第に本を引っ張り出して読んだ
- 頭に血が上ってしまい手当り次第に物を投げつけた
「ばらまき的」は「まんべんなく配ること」
「ばらまき的」とは、「関係するすべての人にもれなく配るようす」という意味の言葉。特に政治関係で使うことの多い表現です。予算や補助金などを全体にまんべんなく配る方策をばらまき的な政治などと表現し、批判的なニュアンスを含んでいます。
「総花的」は「すべての関係者に利益や恩恵を与える」という意味と、「ばらまき的」の「恩恵を全体にまんべんなく配ること」というニュアンスはほぼ同じと言えます。
- ばらまき的な政策では人気取りと言われても仕方ない
「網羅的」は「物事を広範囲にカバーすること」
「網羅的(もうらてき)」とは、「物事の広範囲にわたってカバーすること」です。「網羅」とは「すべて取り入れる」や「余さず集める」という意味の言葉。すべて余さず集めてカバーすることを「網羅的」と言います。
「総花的」を「羅列的で具体性に欠けて論点がぼやけている」といった意味で使う場合はネガティブなニュアンスですが、「網羅的」は広範囲にわたってカバーされているというポジティブなニュアンスで使うことが多い言葉です。
- 網羅的な解説でわかりやすい
- できるだけ網羅的に考えてください
「総花的」の反対語・対義語は?
「重点的」は「重要な事柄に集中する様子」
「重点的」とは、「重きをおく事柄に集中する様子」という意味の言葉。「重点」とは「物事の一番必要な部分」のことであり、特に重要とするところに力を入れることを「重点的」と表現します。テスト勉強などで範囲の全てではなく一部分の項目だけをしっかりと勉強することを「重点的に勉強する」などと表現します。
「総花的」がすべての関係するものをさすのに対し、「重点的」は全体の中でも特に重要な部分をさしています。
- テストの間違えた問題を重点的に復習する
- 週末は筋トレを重点的に行う
「総花的」の英語表現は?
「総花的」は英語で「all around」
「総花的」を英語で表現するには「all around」を使います。「all around」は「みんなに」や「まわり中に」という意味の単語で、「総花的」の「すべての関係者に」という意味を表現します。
また、「全体に」や「すべてに渡って」という意味の「across the board」も「総花的」という意味で使えるフレーズです。
まとめ
「総花的」の正しい読み方は「そうばなてき」で、意味は「すべての関係者に恩恵など利益を与える方法」のことです。「全ての関係者をまんべんなく引き立てる」という意味も持っています。また近年では、「事柄全体を羅列して中身がぼやけている」という意味で使うことが増えており、どちらも批判的なニュアンスを含んでいるため、使い方には注意が必要です。