「苦肉の策」とは「苦しまぎれの手段」を意味する故事成語です。「苦肉の策として」のように使いますが、本来は「苦しまぎれの策」という意味で使うことは間違いだと知っていますか?
本記事では「苦肉の策」の語源である『三国志』の「苦肉計」について、類語も解説します。加えて「苦肉の策」の英語表現も解説しましょう。
「苦肉の策」の意味とは?
「苦肉の策」の意味は「苦しまぎれの手段」
「苦肉の策(くにくのさく)」とは「熟考した結果うまれた苦しまぎれの手段」を意味する故事成語です。本来は「自分や仲間を苦しめてまで、敵をあざむく手段」という意味でのみ使われていましたが、現代では主に「苦しまぎれの手段」という意味で使われます。
語源・由来は『三国志』の「苦肉計」にある
「苦肉の策」の語源は『三国志演義』でも使われている「苦肉計」にあります。「苦肉計」とは自軍が劣勢の場合に使われる「敗戦計(はいせんけい)」の1つで、「人は自分を故意に傷つけない」という心理を利用して、自分や身内をあえて傷つけることで相手を騙すのです。
「苦肉計」は17世紀につくられた兵法書の『兵法三十六計(へいほうさんじゅうろっけい)』に記載されている戦術で、日本では「苦肉の策」と表します。
「苦肉の策」のよくある間違いとは?
「苦しまぎれの策」という意味は本来間違い
「苦肉の策」を「苦しまぎれの策」という意味で使うことは、本来は間違いでした。正しくは「自分や仲間を苦しめてまで、敵をあざむく手段」という意味で使われており、「苦しい」という漢字が使われていることから「苦しまぎれの策」という意味で使われるようになったのです。
ただ、現代では辞書にも記載されていることから、「苦しまぎれの策」という意味が間違いであると言い切ることはできません。
「苦肉」を「狗肉」「苦に苦」と表すのは間違い
「苦肉の策」の「苦肉」を「狗肉」「苦に苦」と表すのは間違いです。「苦肉」と同じ読み方をするものの「狗肉」は「犬の肉」を意味しており、「苦に苦」に関しては単に「苦」という漢字を当てはめただけの表現です。「狗肉の策」や「苦に苦の策」と表さないよう注意しましょう。
「苦肉の策」の使い方と例文
「苦肉の策として」のように使う
「苦肉の策」は「苦肉の策として」や「苦肉の策を講じる」のように使います。熟考した結果うまれた、苦しまぎれの策」を表す状況で使用しましょう。
・苦肉の策として、縁のあった会社へ手あたり次第に営業をかけている。
・苦肉の策を講じるも、なんのやくにも立たなかった。
「反間苦肉の策」は敵の仲をさくこと
「苦肉の策」の使い方の1つが「反間苦肉の策(はんかんくにくのさく)」です。「反間苦肉の策」とは「自分を故意に傷つけて相手を騙し、敵同士の仲をさく作戦」を意味します。「反間」が「内通者を使って敵同士を戦わせたり、偽の情報で混乱させたりすること」を意味しています。
反間苦肉の策を講じることで、見事勝利をおさめた。
意味:自分を犠牲にして敵同士の仲をさくことで、見事勝利をおさめた。
「苦肉の策」を使った例文
- できることが限られている故の苦肉の策である。
- これ以上の衰退に堪えかねた上層部が、苦肉の策を編みだした。
- 業界での生き残りをかけて講じた苦肉の策だ。
「苦肉の策」の類語とは?
「苦肉の策」の類語は「苦肉の謀」
「苦肉の策」の類語には「苦肉の謀(くにくのはかりごと)」が当てはまります。「苦肉の謀」とは「敵を騙すために自分を苦しめる作戦」を意味する言葉で、「苦しまぎれの策」という意味でも使われます。
また、「どうしようもないときに思いついた作戦」を意味する「窮余一策(きゅうよのいっさく)」も「苦肉の策」の類語です。「窮余一策」には「敵を騙すために自分を苦しめる」という意味はないため、「苦しまぎれの策」という意味のみ共通しています。
・苦肉の謀…敵を騙すために自分を苦しめる作戦。苦しまぎれの策。
・窮余一策…どうしようもないときに思いついた作戦。
「苦渋の決断」も「苦肉の策」の類語
「苦肉の策」と似た意味をもつ言葉(類語)には「苦渋の決断(くじゅうのけつだん)」も当てはまります。「苦渋の決断」とは「苦しく辛い思いをしながら決定すること」を意味する言葉です。
「悩み苦しみながら決断する」という意味が「苦肉の策」の「苦しまぎれ」という意味と似ていることから、類語として使用できるのです。
「苦肉の策」の英語表現とは?
「苦肉の策」は英語で「Desperate measure」
「苦肉の策」の英語表現には「Desperate measure」が適しています。「Desperate measure」とは「苦しまぎれの策」を意味する英語で、「Desperate」が「やけくそ」や「自暴自棄」を、「Measure」が「手段」をそれぞれ意味します。
まとめ
「苦肉の策」とは「熟考した結果うまれた苦しまぎれの手段」を意味する言葉で、本来は「自分や仲間を苦しめてまで、敵をあざむく手段」という意味でのみ使われていました。「苦しまぎれの手段」としての使用は間違いだったものの、現代では主な意味として使われています。
「苦肉の策として」や「苦肉の策を講じる」のように使いましょう。
苦肉の策(くにくのさく)