ボーナスを楽しみにしているビジネスマンも多いことでしょう。しかし、そのボーナスにも所得税が課せられるためボーナスの額面と手取り額では違うことをご存知ですか。
今回は、ボーナスなどの賞与に課せられる所得税についての基礎知識や、賞与に対する手取り額の計算の方法を解説します。
「賞与」に所得税はかかるのか
「賞与」には所得税と社会保険料が課される
会社や役所等で務めている人が毎月支払われる給与とは別に支払われる金銭が「賞与」です。賞与は額面通りに受け取れるわけではなく、社会保険料と所得税が課されます。
賞与の手取り額は、社会保険料と所得税分を差し引いた金額になります。
「賞与」とは「ボーナス」または「褒美としての金品」のこと
「賞与」には二つの意味があり、一つはボーナスで主に夏と冬に支払われている金銭のことです。夏場のボーナスは「夏季手当」、冬場なら「年末手当」と呼ばれることもあります。ボーナス額に決まりはなく、多くの会社で月給の2か月分がとしている会社が多いです。
また「賞与」には褒美として与えられる金品のことも指し、金銭だけでなく商品や権利などの場合もあります。金銭でない賞与のことを「現物給与」と言います。
非課税となる「賞与」もある
所得税はボーナスだけでなく現物給与にも原則として課せられますが、現物給与の中には税金が課せられないものもあります。非課税となる現物給与には主に次のようなものがあります。
- 通勤定期券:一か月10万円以内の通勤定期券
- 制服:勤務先で義務付けられている制服の貸与
- 食事の支給:食事価格の1/2以上を社員が支払った場合の金額が月額3,500円以上
- 宿日直料:一回の勤務で4,000円
祝いの品、見舞金など:社会通念として相当な祝いの品や見舞金、10年以上の勤続者への記念品
参照記事:「賞与」とは?労働法による定義と計算方法・パートは支払われる?
「賞与」に対する所得税の計算方法
所得税の計算式は「(賞与-社会保険料)×源泉徴収税率」
賞与に課せられる所得税の計算方法は、次の計算式により算出されます。
- 所得税額 = (賞与-社会保険料)×源泉徴収税率
つまり、所得税額の計算では賞与から社会保険料分は控除されて、その残額に税率を掛け合わせると所得税額が求められます。
賞与計算で控除となる社会保険料には、健康保険と厚生年金保険、雇用保険、さらに賞与対象が40歳以上65歳未満の場合は介護保険も加わります。
「源泉徴収税率」は国税庁によって定められている
所得税の計算式に用いられる「源泉徴収税率」ですが、その税率は前月の給与額と扶養家族の人数を基にして定められています。
その税率の確認は、国税庁がサイトで公表している「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」に前月の給与額と扶養家族の人数を当てはめると確認することができます。
賞与に対する所得税の計算例
ここでは具体的に賞与に対する所得税の計算方法を見ていきましょう。
賞与が50万円で、社会保険料が5万円だったとします。前月の給与が25万円で、独身で扶養家族がいないとすると、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」から源泉徴収税率は4.084%です。
すると所得税額は次のように求められます。
- 所得税額 =(50万円-5万円)×4.084% = 18,378 円
1円未満の端数は切り捨て
賞与に対する所得税額を計算したとき、1円未満の端数が出てきたときは切り捨てられます。
例えば、所得税額は11,370.877円のように算出された場合は、0.877円分は切り捨てられて11,370円になります。
賞与の手取り額の計算方法
賞与に課せられる所得税額の計算方法を紹介しましたが、それでは賞与を受け取る際には実際にどれくらいの金額を受け取れるのでしょうか。ここでは、賞与の手取り額の計算方法を紹介します。
賞与の手取り額の計算式は「賞与-(社会保険料の合計+所得税)」
賞与の手取り額は、賞与の額面から社会保険料の合計金額と所得税を引いた金額になります。
- 賞与の手取り額 = 賞与 -(社会保険料の合計+所得税)
例えば、賞与が50万円で、社会保険料の合計が5万円、所得税が18,378円だとすると、手取り額は431,625円です。
各社会保険料の算出方法
賞与計算で差し引かれる社会保険料には、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、介護保険料がありますが、それぞれ保険料の算出方法が違います。
健康保険料と厚生年金保険料は、1000円未満を切り捨てた賞与額に、健康保険料では573万円、厚生年金保険料では150万円を上限に、金額に応じて50段階に分かれた保険料が設定されています。
雇用保険料と介護保険料は、毎年更新される保険料率を賞与額にかけ合わせて算出します。
賞与を少しでも高く受け取るには
賞与が出る前月の残業を減らす
賞与に対する所得税額の計算は、賞与が出る前月の月給と照らし合わせて算出されます。そのため賞与を少しでも多く受け取ろうと思うのなら、賞与が出る前月の残業などを控えて給与額を抑えることで所得税率を下げれば、賞与の手取り額を増やすことができるでしょう。
ただしこの方法は残業が多く、かつボーナス前の月に残業を減らすことができる環境が条件になるので、もしもできる環境にある方は試してみてはいかかでしょうか。
まとめ
賞与にも所得税がかかると知って驚かれる方もいるかもしれませんが、賞与も報酬のひとつのため所得税が課せられます。賞与の額面と実際の手取り額には差がありますから、賞与を旅行などの遊興費に当てる計画のある場合には、手取り額を基準にプランを立てるようにしましょう。