「押し問答(おしもんどう)」とは自分の意見や主張を曲げず、言い張ることを表す表現として使われます。言い合いが行われる場面で使う言葉ですが、「押し問答」の正しい意味や使い方を把握してますか?
ここでは「押し問答」の意味をはじめ「押し問答」の使い方と例文をご紹介。類語の「水掛け論」との違いも解説します。
「押し問答」の意味とは?
「押し問答」の意味は「互いに言い張ること」
「押し問答(おしもんどう)」とは「互いに言い張ること」を意味します。両者が自分の主張や意見を譲らず、自分が正しいと意地を張り続けるさまを指します。
「押し問答」になる原因は、そもそも互いの意見が食い違うところから始まります。双方が異なる意見を認めることをしないため、長々と意見の主張だけが続き、決着が付かない状態となってしまうわけです。
このように「互いが主張し合うことで、議論が前に進まない」という、中ぶらりの状態を「押し音頭」と呼んでいます。
そもそも「問答」とは言い合いのことではない
「問答」とは、そもそも「問うこと、答えること」「問いや答えのやりとり」を意味します。つまり、口喧嘩でもなければ、言い争いでもないのです。
しかし、「問答」の頭に「押し」を付けることで「問答」の意味を強調する意図があります。「押す」は圧力をかける、事柄を先に進めようとする、という意味があり、「押し問答」で、強く両者が言い張り、決着がつかないことを表しています。
「押し問答」の語源は「問答法」という説も
「押し問答」の語源は、一説によると「問答法」や「ソクラテス式問答法」が由来とも言われていますが、明確には不明です。「問答法」とは、二人の人物が組みになり、対話ベースで会話を質問と答えを繰り返す手法です。
これら「問答」の特徴は、周囲にはどのような話をしているかがわかりにくい点ですが、双方が言い合いや喧嘩をしているようにも見え、やり取りの行方が読み取りにくいのが特徴となります。
「押し問答」の使い方と例文
「押し問答の末」はよく使われる熟語表現
「押し問答の末(おしもんどうのすえ)」は「押し問答」を使った言い回しでよく使われる熟語表現です。「末」という言葉を使って「押し問答をした結果、やっと〇〇となった」というように使われます。
「押し問答の末」という表現を使う時は、その結果は良い方向に向かった場合でほとんどです。悪い方向へ事態が発展した時にも使われますが、実際的に用いることは少ないようです。下記で例文を挙げてみます。
- 彼と下請け会社の課長は押し問の末、やっと和解した。
- 押し問答の末だが、組合と住民の意見交換は無事終了した。
- 店主と客が、返金する、しない、の押し問答の末、全額返金で事は収まった。
「押し問答」は互いが罵倒する意味で使わない
「押し問答」とは、互いの主張を曲げず、両者が言い合いを続けることです。そのため、相手を揶揄したり、罵倒したりすることを主体とする言葉ではありません。
もちろん「押し問答」では、互いの感情が尖り合って雑言をはいたり、毒付くような言葉や憎まれ口をたたくこともあるでしょう。
しかし「押し問答」の本来の意味は口喧嘩ではなく、互いの主張や意見を言い張ることであるため「互いを罵倒する」という意味では使わないようにして下さい。
「押し問答」を使った例文
- インフルエンザが流行り、町の病院は診察を焦る患者が押し問答が続いていた。
- 空港の待合室では、空席を待つ旅行客で押し問答となっている。
- こうやって押し問答を続けていても、状況は一向に良くならない。
- かれこれ押し問答が1時間も続き、社内は険悪ムードに包まれた。
- ちょっと意地は悪いが、押し問答がてら、取引先に本音を聞いてみるか。
- 了承する、了承しないで押し問答に発展した。
「押し問答」の類語
「水掛け論」は互いの主張が平行線を辿ること
「水掛け論(みずかけろん)」の意味は、互いが理屈や理論を言い合って平行線を辿ることを意味します。それぞれが相手からの非難や指摘を相入れることなく、グルグルと言い合いが続くことを表します。
「押し問答」と「水掛け論」の違いは話が続くかどうか
「押し問答」と違う点は「水掛け論」には、やや論理的に話が続くようなニュアンスを持ちます。「押し問答」は少しながらも解決の意図が見えますが、「水掛け論」の場合は、解決への入口がほぼ見えないことがほとんどです。
- 課長と部長が会議室で、水掛け論を展開している。
- この話し合いは水掛け論なので、おそらく解決はしないだろう。
「千日手」は同手順の繰り返しで進展しないこと
「千日手(せんにちて)」とは、将棋やチェスで使う言葉で、同じ手順を繰り返し、いつまでたっても局面が進まないことを言います。つまり、相手を勝たせないために、また自分が負けないように、同じ動きを続けることを指します。転じて、比喩的に状態が前にも後ろにお転ばないような状態を「千日手」という言葉で表します。
押し問答と異なる点は、「千日手」の方が、互いにかけひきをしているニュアンスが強く、より戦略的に相手を攻めようとする意図が見え隠れします。
- 頭の良い私の新人は、まるで千日手のように同じ言い訳を繰り返した。
- 千日手で責任逃れをしようとしても、そうはいかない。
まとめ
「押し問答」とは「両者それぞれが自己主張をして、言い張ること」を意味し、なかなか議論が進まない様子を表す言葉です。最も使われる熟語表現は「押し問答の末」で、「押し問答の結果、〇〇した」という言い回しで文章に用います。
また「押し問答」は、あくまで両者が言語を使って自己主張を続けることで、フィジカルな喧嘩やもみ合いなどは含まれていません。この点に注意して、会話や文書に取り入れてみて下さい。