現代の読みものでは、なかなか見られなくなった「云う」という言葉。同じ読み方の「言う」とは、意味や使い方について、どのように異なるか把握していますか?
ここでは「云う」を中心に「言う」の意味を比較しながら、使い方と活用法、そして類語をご紹介します。
「云う」の意味とは?
「云う」の意味は「人から聞いたことが伝える」
「云う(いう)」とは、人から聞いたことを伝えることを意味します。例えば、昔から伝わる話、ある一定のエリアや地方などから伝承される事柄や伝説を伝えること、また伝わることを指しています。
- この村では化け物が出ると云う
- 初代社長は苦労人だったと云う
「云う」はそもそも、「云ふ」というように古文や古書に登場する古語となり、「他人から聞いたことを相手に伝える」という意味を持つ言葉です。
「云う」と「言う」の違いとは?
「云う」は主体性なし「言う」は主体性あり
「云う」と「言う」の決定的な違いは、発する言葉に「主体性がるかどうか」という点です。
前述でもご説明したように、「云う」は言い伝えや伝承といった「誰かから聞いた事柄を誰かに言い伝える」時に使われる語句で、他人の言ったことを引いて述べる際に用いるのが特徴です。
一方で、「言う」は自分の思ったことを口にすることであり、「云う」が持つ「聞いた話、伝えられた事柄」ではありません。つまり「言う」は「よかったね!」や「いい調子!」というように、純粋に自分の意思で放たれる時に用いる表現となります。
また、「私は田中と言います」のように、自分の名前やニックネームんど、自己紹介をする時に使ったり、「外でガタガタと言っている」のように物音がすることを表す時にも「言う」が使われます。
「云う」は古語「言う」は現代語
「云う」と「言う」の最も大きなな違いは「古語か現代語か」ということです。「云う」には古語「云ふ」を語源に持つ言葉であるため、古めかしい独特なニュアンスを醸し出すのが特徴ですが、「言う」は現代の生活でごく普通に使っているため、その効果はほとんどありません。
「云う」と「言う」の使い方と例文
辞書やことわざが説明する事柄は「云う」を活用する
例えば、物事の意味が分からない時に、辞書や辞典などを引いて疑問を解決します。その際に「辞書では〇〇と云っていた(説明していた)」と「云う」を使って表現することができます。
また、ことわざや俳句などに対しても同様に「河童の川流れというように、プロでも間違いや失敗をすることがある、と云う」、「この俳句では春の訪れを喜んでいる、と云っている」などのように活用することができます。
人が放つ直接的な言葉ではなく媒体の言葉を借りて何かを説明する際に「云う」は、現代でも大いに活用できます。
「云う」を使った例文
- この建物は地元では誰もが知る有名な酒蔵だと云う。
- 彼が政治家として立候補する理由は、父の後を継ぎたいからだけではないと云う
- 歴史が云うように、明治維新では西郷隆盛が国に多大な貢献を果たしている。
- 我が家系図が云うところによると、先祖は有名な戦国武将がいる。
- 話によると、コーヒーは目覚めに良い他に、がん予防にも効果があると云う。
現代の書き物は「言う」を好んで使う
私たちが日常で一般的に話したり、言葉を放つ時に使われるのは「言う」の方です。例えば、友達にメールを送る時、ビジネスメールや社内文書を打つ時に、口に出して「誰かが言ったこと」を伝える時は、逆に「言う」しか使わないと言ってもいいでしょう。
現代の書き物でも同様に、小説の趣向や作者の意図にある程度の意向がある時は「云う」を用いることもありますが、通常目にするのは「言う」のほうです。
「言う」を使った例文
- 部長は私に「今月はよく頑張ったな」と言った。
- 痩せたと言うわりには、見かけはほぼ変わっていない。
- ミリオンセラーの著者が言うのだから、信用できる。
- 私は出身は大阪府、好きな食べ物はラーメン、新人の田中と言います。
「云う」と「言う」それぞれの類語とは?
「云う」の類語は「伝わる」「説明する」
「云う」の類語は「伝わる」「説明する」などが挙げられます。
「伝わる」は誰かから聞くという意味があり、昔の言い伝えや伝説など対して物事が伝承されてるという時に使います。
一方「説明する」は言葉に出して内容を述べるという意味の他に「本に説明されている」というように読み物に記載されている内容を述べる時にも使われます。現代では「云う」と言い換えることがでいる類語は、この2つくらいでしょう。
- 裏山では毎年クマが出ると云う
- 裏山では毎年クマが出ると伝えられている
- 裏山では毎年クマが出ると説明されている
「言う」の類語は数多く存在する
「言う」は言うまでもなく人が言葉を放つ動作を表す語句の一つです。そのため、類語や言い換えができる語句は数多く存在します。下記で「言う」の性質に分けた類語を挙げてみます。
- 自分の思ったことを表現する:話す、吐露する、言い表す、語る、暗唱するなど
- 言葉を使って話す:物言う、おっしゃる、喋る、放つ、漏らす、弁じるなど
「言う」は言ってみれば抽象的な語句の一つです。どのような状況で、どのように言うのか、より詳細に表すためにも適切な一つを選ぶようにすることが大切です。
まとめ
「云う」は過去にあった出来事や地方や家系に伝わる伝説など、ものごとを主体性なく誰かに伝える時に使い、「言う」は主体性を持って自分が思ったことを口に出して述べることを言います。
一般的な読み物ではほとんどが「言う」を用いるため、ほとんど「云う」という語句は見かけなくなりました。しかし、小説や文庫本などでは、古語である「云う」が放つ古めかしい雰囲気や特有の風情を付加するために、あえて文章に挟むことがあります。