「食い扶持」の意味とは?「食い扶持を減らす」の使い方・類語紹介

話し言葉の一つに「食い扶持(くいぶち)」という言葉があります。「食い扶持を減らす」や「食い扶持を稼ぐ」などのように使いますが、そもそも「食い扶持」とは、どのような意味があるのでしょうか?

ここでは「食い扶持」の意味と語源のほか、使い方とよく使う言い回しの例、類語についてご紹介します。

「食い扶持」の意味と語源とは?

「食い扶持」の意味は「食費のこと」

「食い扶持」とは、簡単に言うと「食費」のことです。食べ物を購入するために使うお金、費用のことを「食い扶持」といいます。「食い扶持」の「食い」は「食べる」、また「扶持」は「扶助」「俸禄」「給与」などの意味があります。

「食い扶持」の語源は「江戸時代の給与制度」

「食い扶持」は、江戸時代に民衆に対して行なわれていた「給与の支給制度」が背景となった出来た言葉です。

そもそも「食い扶持」の「扶持」とは、江戸時代に主君から家臣・奉公人へ給与の代替え物の米「扶持米(ぶちまい)」のことで、金銭の代わりに支給していたものです。一人あたり一日玄米5合を限度とし、米一年分を与え、「扶持米」を給与として受取ることで、主君に仕える対価としていました。

「扶持米」は身分や藩の掟によって定められていましたが、家臣や奉公人の家族全員が標準的な生計を維持していくために十分な「扶持米」は支給されていたそうです。

「食い扶持」は英語で「money for food」

ちなみに「食い扶持」は英語でシンプルに「money for food」または「food expenses」を使います。たとえば「食い扶持を稼ぐ=I earn moeny for food」「食い扶持の見直しをする=I need improve food expenses」となります。

「食い扶持」の使い方とよく使う言い回し

「食い扶持」を正式な場所・ビジネスで使わない

「食い扶持」とは口語的に使われる「話し言葉」の一つです。そのため、就職試験の面接や結婚式、パーティなどの正式な場所やビジネスシーンで使うのは場違いとなってしまいます。

相手に誤った印象を与えないためにも、「食費」「食べるためのお金」など適切な語句を代用するようにしましょう。

「食い扶持」は「生活費」という意味で使われる

「食い扶持」とは食費のことですが、現代においては「生活をするための費用」「暮らすために必要なお金」というニュアンスが強く、おおむね「生活費」という意味で広く使われています。

「食う」は基本的に「食す(しょくす)」ことを指しますが、現代では「食べていくために仕事をする」「無職だから食べていけない」というように言うこともあるでしょう。実際は「食べる」ことを含め、家賃や光熱費、その他の生活に必要な費用をひっくるめた「生活費」という意味で使われることが多いのが現状です。

「食い扶持を減らす」は「食費を減らす」

「食い扶持を減らす(食い扶持が減る)」とは「食費を減らす」つまり「生活費を削る」という意味合いで使われる熟語表現です。生活費の中で最も消費される「食費」を減らすことで、生活費全体の見直しを図ったり、無駄なお金を使ってしまった時などに使われます。

例文
  • 生活費の見直しには、まず食い扶持からチェックすべきだ。
  • 食い扶持を何とかしないと、家賃が払えない。
  • ギャンブルに没頭していると、食い扶持を減らすことになるぞ。
  • 食い扶持が減ってしまったのは、大好きなブランド品への投資が主な原因だ。

「食い扶持を稼ぐ」は「生活費を稼ぐ」

「食い扶持を稼ぐ」は「生活費を稼ぐ」という意味で使われます。「食い扶持」が持つ「食費」という意味に執着せず、広く「暮らすための費用」「生活に必要なお金」という意味で使いましょう。

例文
  • 今の仕事は好きではないけど、食い扶持を稼ぐために仕方なく行っている。
  • 食い扶持を稼ぐ方法はいくらでもあるし、将来への貯蓄はタップリとある。
  • 実家が金持ちだから、食い扶持を心配する必要はない。
  • 一家の大黒柱たるもの、食い扶持を稼がないでどうするんだ。

「食い扶持」の類語は?

「食い代」は「食費」のこと

「食い代(くいしろ)」とは、「食費」「食べるための費用」という意味で食い扶持とほぼ同義語です。「食い代」の「代」は「費用」「代金」という意味がありますが、現代ではレストランや店でかかった金額を「食い代」を使って表現することもあるようです。

例文
  • 今月も食い代がほとんど残っていない。
  • 今日も割り勘で行く?私の食い代、いくら?

「米塩の資」は「生活必需品」のこと

「米塩の資金(べいえんのし)」とは暮らしに必要な費用、つまり「生活必需品にかかる費用」を意味します。「米」は日本人の生活に欠くことができない食べ物で、「塩」も調味料の中では最低限必要なものという意味で使わています。また「資」は「費用」「資金」「物資」を表します。

「米塩の資」も「食い扶持」とほぼ同義語となりますが、「食い扶持」に比べて、語勢に文学的な響きを持ちます。使う相手によって使い分けをしましょう。

例文
  • 父は昔、米塩の資を稼ぐために、日夜トンネルを掘り続けたそうだ。
  • 我が家には3人の幼子がいる。米塩の資を減らすことは絶対にできない。

まとめ

「食い扶持(くいぶち)」とは「食べるための費用」「食費」「食い分」という意味で、江戸時代の給与制度「扶持米」を語源に持つ言葉となります。

最もよく使う言い回しは「食い扶持を減らす(食い扶持が減る)」「食い扶持を稼ぐ」などで、食費や食べるためのお金という意味だけではなく、暮らすためのお金「生活費」を表す言葉として広く使われています。もちろん「食い扶持」は話し言葉となるため、ビジネスではもちろんフォーマルな場所では控えるように気を付けましょう。