「無頼」は、仕事の有無や人の生き方などに対して用いられることが多いですが、正しい意味を把握していますか?映画や本のタイトルとしても使われる言葉です。今回は「無頼」の意味と読み方の他、言葉の使い方や言い換えの類語などをご紹介します。
「無頼」の意味と読み方とは?
「無頼」の本来の意味は「頼みがないこと」
「無頼」の本来の意味は「頼みにする場所ないこと」です。自分が拠り所としたり、信頼できる場所がなく、居場所が限られていない時に使われる言葉でもあります。
「無頼」の一般的な意味は「正業を持たないこと、そのような人」
「無頼」とは「正業をもたないこと、そのような人」を意味します。決まった職業に付かず、無法で勝手な行いをすること、またそのような様子や人のことを指します。
簡単に言うと「無法者」や「手に負えない人」のことですが、世間的にも素行が良好ではなく、破天荒であるイメージが強いのが「無頼」です。
「無頼」の読み方は「ぶらい」
「無頼」の正しい読み方は「ぶらい」です。「むらい」ではなく、「ぶらい」が正式な読み方となりますので気を付けましょう。
「無頼」の使い方と例文
「無頼」はニートや無職を指す時に使わない
「無頼」とは「定職につかず、好き勝手に生きる」というイメージが強くありますが、ニートや無職の人を直接指す言葉としては、適切ではないと言えます。
もともとニートの定義は、15歳から34歳までの年齢に該当し、家事をせず、学校や仕事に行かず、職業訓練などのトレーニングも受けていない人となります。そしてニートは少なくとも家族や知人などのように「拠り所」がある場合が多いです。
また「無職」は「就業をしていないこと」を大きな括りで表す言葉ですが、療養中であったり家族の介護などで無職である場合もあり、その理由はさまざまでしょう。
そのため「無頼」をニートや無職の人に対し「無法者」や「破天荒」というようなニュアンスで用いるのは控えた方が良いです。
「無頼漢」はならず者を表す時に使われる
「無頼」のつく言葉でよく使われるのは「無頼漢(ぶらいかん)」です。定職を持たず、住む場所が一定ではなくウロチョロしているような、その日暮らしの生活をしている人を指します。
言ってみれば「ならず者」や「無法者」といった意味で使われる言葉となりますが、「漢」は「男性」を表す言葉であるため、主に男性に対して用いるのが適切となります。
現代においては、女性に対しても使われていることもあるようですが、本来は正しい使い方ではありません。この点に注意して会話に用いるようにしましょう。
「無頼」を使った例文
- 彼は小学校の時は優秀だったが、今は無頼のように生きているようだ。
- 両親は、まるで無頼のように遊びまわっている私が気に入らないようだ。
- 無頼のしきたりを主張するかのように、兄は一向に定職に就こうとしない。
- 一人っ子だが、無頼という性質が後を引き、ついには家から追い出された。
「無頼派」の意味と代表的な作家たち
「無頼派」とは「戦後の混乱期に活躍した作家たちの総称」
「無頼派(ぶらいは)」は、激動の第二次世界大戦が集結した後に、反道徳的・反権威を主張する言動を起こした、一群の作家たちを総称して呼ぶ言葉です。「無頼派」は結社をベースにした「派閥」ではなく、戦後の緊張感から解き放たれた一般の人が、道徳や権威などに反対する作家たちに共感して名づけた「名称」となります。
「無頼派」には太宰治の名前も
「無頼派」と呼ばれる無頼派には、昭和の文豪として最も代表される「太宰治」の姿がありました。太宰治は38歳という若さでこの世を去ってしまいましたが、現代においても多くの作家や著名人が心から親しむ偉人として新たに脚光を浴びています。
酒浸りの日々を送り、女性スキャンダルの多いことで知られますが、奇怪な表現パターン、独特な暗さ、欠点をあからさまにするスタンスは「無頼派」が示す特徴ともいえるでしょう。代表作「走れメロス」「斜陽」「人間失格」はあまりにも有名で、その他にも「ヴィヨンの妻」「グッド・バイ」などが多数の著書があります。
他の無頼派と作品の例を挙げてみます。
- 石川淳:普賢(芥川賞)山桜、佳人、マルスの歌など
- 織田作之助:夫婦善哉、勧善懲悪、青春の逆説、世相、競馬など
- 坂口安吾:風博士、黒谷村、青春論、堕落論、白痴など
- 壇一雄:夕張胡亭塾景観、花筐、天明、リツ子・その愛、ペンギン記など
「無頼」の類語とは?
「無頼」の類語は「不埒」
「不埒(ふらち)」とは「道理に外れていること、またその様子」を意味します。言動や態度などを含め考えが、けしからぬことを表す言葉で「不埒な行動」「不埒な人」というように使われます。
「無頼」と違う点は「定職につかないこと」という意味が「不埒」には含まれていないことですが、道理に外れ呆れた様子というニュアンスでは意味が似ています。
- 同僚の不埒な行動には、周囲もあきれるほどだ。
- 不埒な人間にだけはなりたくない。
「無茶苦茶」も「無頼」の類語
「無茶苦茶(むちゃくちゃ)」」は、物事や人の言動に筋道が立っていない、という意味を持ちます。むやみでハチャメチャという意味で使われ、支離滅裂な様子を表す時に、口語的に使われる言葉です。
「無茶苦茶」は「無頼」の「決まった仕事に付かない」という意味を、直接的に表す言葉ではありませんが、言動の筋道が立っていない様子、という点では共通しています。
- 仕事がバリバリにできる彼だが、性格については無茶苦茶だ。
- 無茶苦茶なことをしたんだから、しっかり責任を取ってもらうぞ。
「風変りな様子」を意味する「型破り」
「型破り(かたやぶり)」とは「風変りな様子」「慣行通りではないこと」という意味があります。言葉が示すように、もともと定まっている形を破ることを表し、常識破りで奇怪なことに対して使われます。
「型破り」には、革新的で斬新というようなニュアンスが含まれるため、良い意味で使われることが多いです。その点で「無頼」とは使い方は異なるでしょう。
- 型破りな発想が名商品を生んだ。
- 彼の型破りな行動が、営業成績の向上を支えている。
「無頼」の英語表現は「outlaw」
「無頼」を表現する英語フレーズはいくつかありますが、カタカナ語としても馴染みのある「outlaw(アウトロー」が最も適切でしょう。
「He is outlaw(彼は無頼だ)」「Acting like outlaw(無頼のように振舞う)」などのように使います。
まとめ
「無頼」の読み方は「ぶらい」で、意味は「定職につかないこと」「無法で自分勝手な様子、またそのような人」、また「頼みのないこと」となります。
また「無頼派」は戦後に反俗や反道徳の風潮を主張する文豪たちに対して、人々が共感して名づけた呼び名です。派閥や結社という堅苦しい枠にとらわれた名称ではないため、「そういう作家たちの総称」と言ったニュアンスで解釈するとよいでしょう。