「鬼の首を取ったよう」は誤用されることもあることわざです。言葉の意味は時代とともに変わっていくものですが、会話相手に「誤用をする人」と思われるのは得になりません。正しい意味や使い方を押さえておきましょう。また、由来や例文、類語も合わせて解説します。
「鬼の首を取ったよう」の意味
「鬼の首を取ったよう」の意味は「大きな手柄をたてたように得意になる」
「鬼の首を取ったよう」は「小さな手柄なのに、大きな手柄をたてたように過剰に喜んだり得意がったりする」様子を意味します。非難や冷やかしの意味合いで使うネガティブなことわざです。
あまり単独で使われませんが「鬼の首」自体に「大きな手柄・功績」という意味があります。このことわざは実際に鬼の首を取ってはいないのに、取ったようにふるまっている様子を表しています。
「鬼の首を取ったよう」の由来は「鬼を退治したように得意になる」こと
「鬼の首を取ったように」は意味通り、鬼の首を取る=鬼を退治したように、得意になっていることが由来だとされています。
鬼は空想上の存在ですが、昔話にもよく出てくるポピュラーな怪物です。普通の人はとても敵わないぐらい強い怪物のため、鬼退治は非常に困難でしょう。だからこそ、大きな功績や手柄の比喩として使われているようです。
「鬼の首を取ったよう」の使い方と例文
「鬼の首を取ったよう」は相手を冷やかす・非難する際に使う
「鬼の首を取ったよう」は小さな手柄なのに大げさに喜ぶ人を冷やかしたり、高慢にふるまう人を非難する際に使用されます。また、最終結果が出ていないのに喜んで油断する人を注意することもあります。
- 彼女は小学生でもとれる簡単な検定でも、合格したと鬼の首を取ったように喜んでいる。
- ちょっとした成功でも鬼の首を取ったようにいばるので、誉める気がなくなってしまう。
- 予選通過ぐらいで鬼の首を取ったように浮かれるんじゃない。我々は優勝を狙っているんだぞ。
「大きな手柄をたてる」という意味で使うのは誤用
「鬼の首を取ったよう」の誤用の1つに「大きな手柄をたてる」という誉め言葉として使ってしまう、というものがあります。文面だけ見ると「鬼の首を取ったような偉大な手柄」の比喩に感じてしまうのが原因かもしれません。
相手に「嫌味を言われている」と受け取られる可能性があります。使用しないように注意してください。
「小さな失敗を過剰に責める」は誤用ではないとする説もある
「鬼の首を取ったよう」でよく勘違いされている意味が「小さな失敗を、大事のように騒いで責める」です。言論を強く非難するという意味も持つ「叩く」と合わせて「鬼の首を取ったように叩く」と使われることもあります。
- 部長はちょっとしたことでも鬼の首を取ったように叱りつけるので、新人がすぐに辞めてしまう。
- 彼は丁寧で礼儀正しい人なのに、弓道について誤った記述を見つけると鬼の首を取ったように叩くので驚いてしまった。
一部の辞典では実用的な意味として掲載しているものもありますが、厳密には誤用ですので使用は避けた方が無難です。ただし「相手が失敗したことを、自分が手柄をたてたように得意がって非難している」と捉えて誤用ではないと考える人もいます。
「鬼の首を取ったよう」の類語
「鬼の首を取ったよう」の類語は「鼻にかける」
「鬼の首を取ったよう」の類語は「鼻にかける」です。漢字で「掛ける」とも書きます。「自慢する」「得意になる」という意味です。
「鬼の首を取ったよう」との違いは、自慢する理由に制限がないことです。「鬼の首を取ったよう」は小さな手柄にしか使用できませんが、「鼻にかける」はどんな事柄にも使えます。
- 彼はタワーマンションに住んでいることを鼻にかけている。
- 美人で仕事もできるのにまったく鼻にかけないとは、なんて謙虚ですてきな人なんだろう。
小さな失敗を過剰に責めることの言い換えは「重箱の隅をつつく」「親のかたきのよう」
誤用として広まっている「小さな失敗を過剰に責める」様子の言い換えは「揚げ足を取る」や「親のかたきのよう」で可能です。
「小さな失敗を責める」ことがメインの場合は「重箱の隅をつつく」を使います。意味は「細かいことを問題にすること」です。
「過剰に責める」がメインの場合の言い換えは「親のかたきのよう」です。「強く憎んだり嫌悪したりする様子」「程度が異常である様子」を意味します。
まとめ
「鬼の首を取ったよう」の意味は「大きな手柄をたてたように得意になる様子」です。喜んだり、自慢したりする人を非難することわざです。「小さなミスを、過剰に責める」という誤用が広まっているので注意してください。
ネガティブな表現のため、使用には注意が必要です。相手に聞こえる場所で使うのは避けた方が無難でしょう。