輪をかけての意味と語源とは?使い方の例文と類語もあわせて紹介

「輪をかけて〇〇である」というように、何かと比較をして使う言い回しに「輪をかけて(輪を掛けて)」があります。人の性格や物事のあり様をを大げさに表現する時に使われることが多いですが、普段はどのような場合で用いるのが適切なのでしょうか?

ここでは「輪をかけて」の意味と語源の他、使い方の例文や類語とあわせてご紹介します。

「輪をかけて」の意味とは?

「輪をかけて(輪を掛けて)」の意味は「さらに大げさに」

「輪をかけて(輪を掛けて)」とは「さらに大げさに」という意味を持ちます。人の性格や物事の状態などに対して「いっそう甚だしく」「かてて加えて激しくなる」という意味で使われます。

「程度やレベルをさらに甚だしくする」「さらに誇張する」また、古い表現を用いれば「之繞(しんにゅう)をかける」ということを表す言葉となります。

「輪をかけて」の語源1「弓道の弦」

「輪をかけて」の由来は「弓道の弦(つる)」だと言われています。弓道で矢を射る時により強く正確に射るには、弦を掛ける輪に、弦が調度良い状態で張られていることが重要です。

つまり、弓道において弦が適切な長さと強度を持って張られていれば、より甚だしくダイナミックに矢が飛ぶ、というところから来ているという説があります。

「輪をかけて」の語源2「樽を締める箍」

「輪をかけて」の語源とされているもう一つの由来は「樽を締めている箍(たが)」です。木製の樽や桶を頑丈にまとめるために締める竹製の箍(たが)」は、樽谷桶の寸法よりさらに大きい円形を描いています。つまり程度がさらに大きいことを示しているため、これが由来となってできた言葉、という説もあります。

このように「弓道説」と「箍説」の2つがありますが、今のところ、どちらが正しいかは明確ではありません。

「輪をかけて」の使い方と例文

「輪をかけて」は人の性質や特徴を表す時に使われる

「輪をかけて」で最も使われるのが、人の性質や特徴を表現する時です。誰かと比較をして、「それ以上に、さらに輪をかけて〇〇である」という意味合いで用いられます。

例文
  • 課長は小言が多いが、部長はそれに輪をかけて口うるさい。
  • この絵も素敵だが、あっちの絵も輪をかけて美しいね。
  • 今日も、昨日に輪をかけて気温が下がるらしい。

「輪をかけるように」と比喩的に使うこともある

「輪をかけて」の別の言い回しで使われるのが、「輪をかけるように」という比喩的なニュアンスで用いる場合です。「まるで輪をかけるように〇〇だ」というように使い、「輪をかけて」というストレートな言い回しに比べると、やや軟らかい響きがあると言えるでしょう。

例文
  • 昨晩が満月だと思ったけど、今晩も輪をかけるように月が真ん丸だよ。
  • 誰にでも優しい彼。それに輪をかけるようにお兄さんも心が広く温和である。
  • このデザインは時代遅れじゃない?ましてやこっちのデザインなんか輪をかけて古臭くさいよ。

ネガティブに使う時は比較される人に注意する

たとえば「課長は、あなたに輪をかけて細かい」と言われたら、あなたはどのような気分になりますか?この例文を砕いて解釈すると「あなたは細かいことで知られている、しかし、課長の方がもっと細かい」という意味です。

もちろん、あなたより課長の方が細かいという意味ですが、比較される題材として使われた側はあまり良い気分にはならないはずです。「輪をかけて」をネガティブに使う時は、比較される題材となる人にも気を付けて使うようにしましょう。

「話に輪をかける」というようにも使われる

「輪をかけて」は「輪をかける」を副詞的に言い換えたものです。「輪をかける」でよく使われるのは「話に輪をかける」で、「話を大げさに言う」という意味です。本来や実際よりも程度を増して話をすることを表す時に使われます。

例文
  • 彼は実際の話に輪をかけているだけだ。
  • 話に輪をかけることなく、素直に気持ちを言ってもらいたい。

「輪をかけて」の類語とは?

「輪をかけて」の類語は「一段と」「特段」「尚更」

「輪をかけて」と言い換えができる類語は「一段と」「特段」「尚更」などがあります。ニュアンスがそれぞれちょっと異なりますが、どの類語も「輪をかけて」が持つ「程度がさらに増える」「大げさになるという意味」を含んでいます。

例文
  • 一段と:程度が増えること、いっそう、ますます
  • 特段:格別、特別
  • 尚更:その上、それにも増して

下記で類語に言い換えた場合のニュアンスの違いを見てみます。

例文
  • さっきより、雲行きが輪をかけて怪しい。
  • さっきより、雲行きが一段と怪しい
  • さっきより、雲行きが格別に怪しい
  • さっきより、雲行きが尚更に怪しい。

「尾ひれを付けて」は「余分なことを付け加えること」

「尾ひれを付けて」とは、話に余計なことを加えることを意味します。事実ではないことを大げさに話して誇張すること、また話をオーバーに、針小棒大に語ることを「尾ひれを付けて」といいます。

「輪をかけて」には物事をオーバーに話すという意味が軸となりますが「尾ひれを付けて」は事実とは異なることを付け足すというニュアンスが強くなります。下記で言い換えの例文を見てみましょう。

例文
  • 話に輪をかけて言いふらす。
  • 話に尾ひれを付けて言いふらす。

まとめ

「輪をかけて(輪を掛けて)」とは、「さらに大げさに」「いっそう甚だしく」という意味があります。語源は二つあり、弓道の弦がピンと正しく張っていればさらに勢い良く飛ぶこと、また樽谷桶を締める箍がそれより大きい円形であること、などが由来をされています。

また「輪をかけて」を使う時は、比較される対象となる人に気を付けることが大切です。「あなたに輪をかけて、彼も性格が悪い」という表現では、基本的にあなたの性格も悪いが、さらに彼も悪いという意味となります。言葉を使う環境や周囲にいる人にも気を付けていきましょう。