生活保護受給者は年金を受け取れる?生活保護条件や保護費も解説

収入の道が絶たれたとき、頼りになるのが「年金」や「生活保護」です。生活保護を受けている人が65歳以上となったとき、生活保護といっしょに年金もダブルで受給することはできるのでしょうか?

知っているようでよくわからないことが多い社会保障の制度について、この記事では「生活保護」と「年金」に焦点をあてて解説します。

「生活保護」と「年金」の関係とは?

年金受給額が「最低生活費」を満たさない場合は「生活保護」を受給できる

生活保護制度では、厚生労働大臣が定めた基準から計算される「最低生活費」に対して収入が足りない生活困窮者に、その差額の保護費を支給します。

収入には年金も含まれるため、最低生活費の額より年金額が低い場合には、その差額が生活保護費として支給されることになります。収入の種類には、勤労収入や親族等からの仕送り、年金や福祉手当など他の公的制度からの給付があります。

年金受給額が「最低生活費」を上回ると生活保護は受給できない

前に説明したとおり、生活保護費は、「最低生活費」から年金も含む収入を差し引いた額となります。そのため、最低生活費よりも年金受給額が上回った場合は、生活保護を受けることはできません。

これは年金に限らず、先に説明した収入に該当するすべての種類の収入に対して同じ考え方となります。

また、生活保護は世帯単位で給付されるため、世帯全員の収入が認定可否の対象となります。年金の例でいえば、夫婦二人が年金受給者であった場合は、二人の額を合算して判断されます。

「生活保護条件」はあらゆる努力をしても生活に困窮する状態であること

なお、生活保護を受給できるかどうかの条件とは、土地や家屋などの資産があれば売却し、預貯金や保険等があれば解約して生活費にあて、年金などの各種手当を受給し、それでもなお最低限の生活が送れない困窮の状態であることが条件となります。

また、生活保護における誤解の一つとして、年金や勤労による収入が少しでもあると生活保護を受給できないとの誤解がありますが、上記の努力に加えて、一定の額以下の収入であれば生活保護を受けることはできます。

生活保護を受給できる基準の「最低生活費」とは?

「最低生活費」は地域や年齢によって細かく設定されている

生活保護は、日本国憲法第25条の1項で「生存権」に規定された「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」との理念を保障する制度です。健康で文化的な最低限度の生活を営むために必要な額が「最低生活費」です。

その額の計算基準は厚生労働大臣が決定し、地域や年齢などによって細かく設定されています。また、生活保護は世帯単位で申請するため、家族構成によっても変動します。具体的な生活扶助の計算基準は、厚生労働省のホームページで確認できます。

参考
厚生労働省の資料による平成30年度の1か月の生活扶助例は、68歳と65歳の高齢者夫婦世帯では、東京都で120,410円、地方郡部で100,190円となっています。

生活扶助に加えて、必要に応じて住宅扶助や医療扶助等も受けられます。

「最低生活費」よりも「年金受給額」が低いことが問題

非正規雇用の増加や企業の給与水準の低下にともない国民の年収が低くなっていることから、相対的に生活保護費が高くみえてしまう現象が起きています。加えて、年金を払い続けたにもかかわらず受給額が少なく、年金だけでは生活できないという高齢者が増えていることも問題となっています。

厚生労働省の資料による平成29年度の国民年金・厚生年金保険の平均受給額は、自営業や専業主婦などで国民年金を受け取る人が約56,000円、会社員や公務員などで国民年金と厚生年金を受け取る人が約145,000円です。

なお、国民年金は、20歳から60歳まで40年間の加入が義務付けられていますが、全ての期間を納めていても受け取れる満額は6万5000円/月です。

まとめ

生活保護の基本原理は「国家責任による最低生活保障の原理」です。医療保険制度や年金保険制度などほかの制度を利用たり、収入を増やす努力をしても、どうしても生存権が保障されない人を無差別平等に国が保障するものです。

最低限度の生活かどうかをはかる基準として「最低生活費」があり、地域や年齢、家族構成などからなる基準に個別にあてはめて計算します。最低生活費に不足する分が生活保護として給付されます。

生活保護制度に対する誤解として「収入が少しでもあると生活保護を受けることができない」あるいは「収入を得ると生活保護を打ち切られる」などがありますが、最低生活費以下の収入であれば生活保護は受けることができます。

なお、現在の社会保障の問題として、年金収入だけでは生活できず、不足分を生活保護に頼らざるを得ない高齢者が増えていることがあります。高度成長期に設計された社会保障の枠組みが、急激な少子高齢化と低経済成長を迎えた今日の社会に適応できなくなっているためです。

今後も年金制度では受け止めきれなかった高齢者の最後のセーフティネットとして、生活保護制度の利用が増加することが予想されます。