「無用の用」という言葉をご存知でしょうか?どう見ても必要なものでない、役に立ちそうにないものが、実際は意味のあるという言葉です。しかし、実際にはどのような例が挙げられるのでしょうか?
ここでは「無用の用」の意味と語源をはじめ「無用の用」の身近な例を挙げながら、使い方の注意点や英語をご紹介します。
「無用の用」の意味と語源とは?
「無用の用」とは「無用に見えるものが実は役割を果たしている」
「無用の用(むようのよう)」とは、一見役に立ちそうもないものや事柄が、実際には大きな役割を果たしていることを意味する言葉です。つまり、見かけは大して重要ではないものが、かえって大切な部分として機能しているようなことを指します。
「無用の用」の「無用」とは言葉通り「役に立たないこと」「有用性」や「価値がかけている様子」、また「無用の用」の「用」はその逆を意味する言葉です。つまり「無用の用」で価値がなく必要ではないとされるものが、実は価値があり有用であること、という意味になります。
「無用の用」とは無用なものなどないという教訓
「無用の用」の基本的な意味は、必要がなく役に立たないものが実際はそうではないという意味を持ちますが、転じて「この世界に無用で無価値なものなど存在しない」という意味も持ち合わせています。つまり、存在する物事のすべては価値のあるものである、有用性がるものであるという意味でも使われます。
「無用の用」の語源ある「老子」と「荘子」の現代語訳
「無用の用」の語源は「老子」と「荘子」のそれぞれにある一説からだと言われています。語源となるそれぞれの現代語訳の内容は以下の通りです。
「老子」には「粘土で作る器には空間がある。しかし、この無意味に見える空間がなければ、器はできない」ということが書かれてあります。つまり「無用なものが存在するからこそ、有用性や価値が生まれる」という教えを説いた一文です。
また「荘子」には「人というものは有用に見えるものの価値は理解している。しかし、そうでないものが、実際は人生において価値のあるものだとは気付いていない」と記されています。ここでは「人は役に立つものしか目を向けないものである」「有用なものが決して良いとは限らず、無用がかえって良いこともある」という教えを悟ることができます。
このように「老子」と「荘子」という二大思想家が残した教えから、「無用の用」が生まれたことが理解できます。
「無用の用」の身近な例と使い方は?
「無用の用」の身近な例「社交辞令」
「社交辞令」はビジネスパーソンとしては必須なスキルとも言われていますが、相手の気持ちや意思がストレートに理解できないのが難点です。本当に意味のあるものなのかも疑問でしょう。
ビジネス環境では、取引をする気持ちが全くないのに、相手との衝突を防ぐために「検討して後日ご連絡します」と返事をしたり、心とは裏腹に相手をヨイショして持ち上げたりします。しかし、これらは一見「無意味で役に立たない」と指摘されがちですが、実際にないとビジネスがスムーズに進まないことがあります。
「無用の用」の身近な例「雨が降らない時の折り畳み傘」
社会人になると、その日の天気予報が気になるものです。降水確率が少しであると、おそらく雨は降らないだろうが、念のために折り畳みの傘をカバンにしのばせることもあるでしょう。結局は雨が降らず「無用の用」と思われがちですが、帰り道で思わぬにわか雨に遭遇することもあります。
「無用の用」の身近な例「海外旅行保険」
海外旅行に長期に行く時に多くの人が加入するのが「海外旅行保険」です。しかし、一週間以内の出張やバカンスに行く場合は「海外保険なんて加入しても無駄」と考えてしまうこともあるでしょう。
一見は役に立たずお金の無駄遣いのように映りますが、実際に現地でケガをしたり、盗難に遭った場合に「入っていて良かった」と思うことがあります。もちろん、人それぞれに解釈の仕方は異なりますが「海外旅行保険」の重要性は目に見えにくいものです。
「無用の用」の身近な例「道路」
「道路」は私たちが普段歩いたり、運転したりして使用をします。一見、何であるのだろう?本当に必要なのだろうか?と思うことがあります。考えてみれば「ただの道」に対して費用を使い、いつもどこかで道路工事や舗装などが行われています。
しかし、整った道路がなければ、車の事故が増え、スムーズに目的地まで辿り着くこともできません。言ってみれば、道路という存在がなければ、人々は安全に暮らすこともできないと言えるでしょう。つまり「道路」としての存在価値は見えなくても、実際は重要な働きをしているということになります。
「無用の用」を人に対して使う時は慎重に
「無用の用」は自分の周囲にある物事や人に対して、自分の価値観をベースにさまざまな形で使うことができます。しかし、対象となるものは「一見、役に立たないように見える物事」であるため、とくに人に対して使う時には注意が必要です。
たとえば、下記のような例文を見てみましょう。
- お茶ばかり飲んでいる部長と言えども、無用の用だよね。
- 仕事をしないプロジェクト担当者だが、無用の用とも言えよう。
このような発言をする時は、相手との関係や周囲に与える影響を考慮してからにしましょう。なぜなら「実際には必要だが、役に立たないように見える人」であることが前提になるからです。
「無用の用」は英語で何という?
「無用の用」は英語で「The usefulness of the useless」
「無用の用」を英語で表す時は、ストレートに「The usefulness of the useless(無用の用)」というフレーズを使いましょう。
また「The usefulness from what is not there(本来的に役に立つものは目に見えない)」とすれば、文学的なセンスあふれる丁寧な言い回しとなります。状況に合わせて使い分けてみて下さい。
「無用の用」を使った例文
- Tax is the usefulness of the useless wherever you live
どの国に住もうと、税金は無用の用である。 - The parsley on a kids meal is the usefulness from what is not there, isn’t it? It feels something missing and lack of the colour if it’s not there.
お子様ランチのパセリって無用の用じゃない?ないと盛り付けが寂しいし、色合いも悪くなるよね。
まとめ
「無用の用(むようのよう)」とは「役に立たないように見えるが、実際は有用性のあるもの、価値のあるもの」、また転じて「この世の中に必要のないものは存在しない」「全てのものに価値がある」という意味を持ちます。また語源は「無用の用」は世界的な思想家として知られる「老子」と「荘子」の教えとなります。
人は役に立つものや有用性が高いものだけに視線が行き、価値を理解する傾向があります。しかし「無用の用」はその逆を行く思想をあえて説いたものです。
今までの生活で「役に立たない物や事柄」を見直してみてはいかがでしょうか?案外、ゴミのようなものが実際は有用性や価値があることに気づくかもしれません。