「後進国」の意味とは?日本は後進国?発展途上国との違いも解説

コロナ過の中、「日本はデジタル後進国」だと問題になっています。ニュースや新聞などの報道で「後進国」という言葉を久しぶりに聞いたと思う人も多いのではないでしょうか。代わりに「発展途上国」をよく聞くかもしれません。「後進国」と「発展途上国」の違いや意味、「〇〇後進国」の使い方を確認しましょう。

「後進国」とは?

「後進国」の意味は”産業・経済の発展が遅れている国”

「後進国(こうしんこく)」の意味は、“生産力が低く、産業・経済の発展が比較的遅れている国”です。世界共通の定義はなく、国連などの団体や、研究者ごとに違う基準を用いています。

1980年頃からは「発展途上国」に言い換えられるようになりました。「後進国」は差別的だという意見があったのが理由とされています。

後進国・発展途上国の目安は「ODA受け取り国リスト」

発展途上国(後進国)の定義はひとつに定まっていません。一般的に目安として使われることが多いのが、ODAを受け取る資格があるとされる国を一覧にした「ODA受け取り国リスト」です。

ODAは英語の「Official Development Assistance」を略したもので、日本語では「政府開発援助」と呼びます。先進国(発展している国)の政府が行う、経済発展や人道支援のための援助のことです。

ODA受け取り国リストは、目的に発展途上国の援助が含まれるOECD(経済協力開発機構)が発表しています。

「後進国」と「発展途上国」の関係とは?

「後進国」は”発展途上国”の旧称

本来の意味の「後進国」は、現在は”発展途上国(はってんとじょうこく)”と言い換えられます。「成長の途中である」という意味合いの言葉にすることで、差別的なイメージがなくなりました。

また、「開発途上国」と言われる場合もありますが、名前が変わっただけで、意味に違いはありません。

「後進国」を本来の意味で使う際は”発展途上国”に言い換える

「後進国」を本来の意味で使用すると、差別的なイメージがあるとされています。そのため、本来の意味である”産業・経済の発展が遅れている国”を言い表したい場合には、「発展途上国」を使用しましょう。

また、「後進国」が避けられ始めたのは1980年頃のため、年代によっては意味が伝わらない可能性もあります。

「発展途上国」を使った場合の例文

「発展途上国」を使った場合の例文をご紹介しましょう。

  • 発展途上国を支援する活動の一環で、インドに学校を設立する運動を行っている。
  • タイは発展途上国だと思っていたが、都心は整備がしっかりされているので快適に過ごせそうだ。

「後進国」の使い方と例文とは?

「後進国」は”特定分野の普及が遅れている国”という意味でも使われる

「後進国」は「特定の分野の普及・発展が遅れている国」という意味で使われることが増えています。辞書にはまだ掲載されていない意味合いですが、ニュースでも話題になることが多いため、知っている人も増えているでしょう。

「〇〇後進国」のように、遅れている分野の名前のうしろにつなげて使われます。〇〇にあげられる分野以外の発展状況は一切関係ないため、本来は先進国とされる国に使用しても誤用になりません。

「デジタル後進国」は”デジタル化・IT化が遅れた国”

「特定の分野が遅れている」という意味でよく使われるのは「デジタル後進国」です。技術力の高さから意外に感じる人も多いかもしれませんが、日本は「デジタル後進国」だとよく話題になります。特に、2020年のコロナ禍の中では、オンライン申請やリモートワークの不備が問題になりました。

例えば、特別定額給付金のオンライン申請ではトラブルが相次ぎ、給付が遅れました。日常的な面でも、リモートワークやキャッシュレス決済の普及が遅れているとされています。

「後進国」の類語とは?

「後進国」の類語は”中進国”

「後進国」の類語に”中進国”があります。発展途上国よりは発展しているが、先進国よりは発展していない国を表す言葉です。

「中進国」を使った経済学の用語に「中進国の罠(わな)」があります。「中所得国の罠」とも使われます。さまざまな要因から、発展途上国の成長がある一定以上に伸びずに停滞してしまう状態です。原因には諸説ありますが、技術力の不足や貧富の差の広がりなどが挙げられています。

「後進国」の類語”中進国”を使った例文

「後進国」の類語”中進国”を使った例文をご紹介しましょう。

  • 中国は「中進国の罠」を回避できるのだろうか。

「後進国」の対義語とは?

「後進国」の対義語は”先進国”

「後進国」の対義語は”先進国”です。意味は「経済や文化が発展している国」です。後進国と同じで世界共通の定義はありませんが、OECDに加盟しているかどうかが目安にされることがあります。

「後進国」と同じように「特定の分野の普及が進んでいる国」を「〇〇先進国」と表現することがあります。その分野以外の状況は関係しないため、経済的には後進国だとされる国にも使用可能です。

「後進国」の対義語”先進国”を使った例文

「後進国」の対義語”先進国”を使った例文をご紹介しましょう。

  • 医療に力を入れているキューバは「医療先進国」だと言われている。
  • 「英語先進国」を目指して、学校教育では英会話にもっと力を入れるべきだろう。

まとめ

「後進国」とは”発展途上国”の旧称で、「産業・経済の発展が遅れている国」のことです。名前が変わっただけなので意味に違いはありません。

現在では「特定分野の普及が遅れている国」という意味で批判的に使われることが増えています。しかし、もともとは差別的だとして変更になった言葉のため、他国に使うことは避けた方が無難です。