「モック」の意味とは?「モックアップ」やIT・スマホ業界の使い方も

「モック」という言葉は、原寸大の模型や店頭に置かれている見本のこと。「モックアップ」の略語で、Webやスマホ業界、デザイン業界では異なるニュアンスで使われています。ここでは「モック」の意味や分野別の使い方、例文、英語や類語などをご紹介。なぜわざわざモックを作るのか、その理由も解説します。

「モック」の意味とは?

「モック」の意味は”試作品の模型・店頭の見本”

「モック」の意味は、“試作品の模型・店頭の見本”のことです。たとえば、開発したものを正式に商品化する前に、あらかじめ試作品の模型として作る原寸大の模型や、店頭に置く「本物ではない見本」のことを”モック(つまりモックアップ)”と呼んでいます。

つまり、設計やデザインなどの中途段階で「試作」として作られる、実物そっくりのものが「モック」です。

「モック」とは”モックアップ”の略語

「モック」とは英語の”mock”を語源に持つカタカナ語で、「モックアップ(mock-up)」を省略した言葉でもあります。つまり「モックアップ」は、ずばり”モック”のことです。

もともと英語の「mock」には”ふざけてマネをする・物まねをしてからかう・あざ笑う”という動詞での意味と、「偽物の・見せかけの・模擬の」という形容詞での意味があります。加えて「模造品・まがい物」という名詞での意味も持ち併せています。

軸となる意味が「相手を真似る」となるため、転じて”模造品・試作品”という意味でも広く使われています。

「モック」を使った例文

  • 今回のプロジェクトでは、Webサイトのモックを制作することになった
  • ユーザー目線で考えながらモックを作ることが重要だ

「モック」の分野別での意味とは?

IT分野ではウェブサイトやアプリデザインのサンプル

IT分野における「モック」の意味は、ウェブデザインやアプリなどのデザインを確認するために、クライアントに提示する「完成形サンプル」のことです。

たとえば、クライアントが依頼したウェブサイトのデザインや機能などと、制作側が理解したものが、何らかの理由でちぐはぐになってしまうこともあるでしょう。つまり、イメージや個人的な感覚なものが原因で「依頼したものと違う」というトラブルを防ぐために、あらかじめ完成形サンプルとして提示するものが「モック」となります。

クライアントと制作側のイメージを「モック」の段階で共有し、完成した後の修正や追加へのリスクを減らすのが最大の利点です。

スマホ業界では原寸大の模型のこと

スマホ業界で「モック」は”原寸大の模型”という意味で使われます。スマートフォンや一般的な携帯電話でも「モック」は欠かせないアイテムです。これから売り出す予定の携帯電話や品切れの商品を「モック」を使って店頭に置いておくことで、顧客へのビジュアル化を高めることを目的としています。

また近年では、スマホを含む携帯電話の場合、「モック」でも”ホットモック・コールドモック”の2種類が存在します。

「ホットモック」とは、模型でも電源が入り、感触的にも温かく実感できるのが特徴です。一方、「コールドモック」は本来のモックのことで、電源が入らない「純粋なる模型」となります。つまり、触り心地が冷たいため、「コールドモック」と呼ばれているわけです。

工業デザインではプレゼンテーション的な役割

服飾関係を含め、一般的な工業デザイン分野では、「モック」は商品を完成させる前の「プレゼンテーション・モデル」というようなニュアンスで使われます。

「モック」は商品モデル、外観、色使いをはじめ、大きさ、持った時の感触、着心地などを確認するために行なわれる重要なプロセスの一つです。この時点で修正や追加部分を検討し、受注側と発注側の双方が納得するまで、モックを繰り返すのが通例となります。

「モック」の類語とは?

「プロトタイプ」とは”大筋の模型・原型”

「プロトタイプ」とは英語の”prototype”のことで、完成品を目指したデザインや構造、色や大きさなどを試作品として作る「大筋の模型」や「原型」を意味します。

「プロトタイプ」は「モック」とはややニュアンスが異なり、後で修正や改良などを見込んだものを指します。そのため、プロトタイプの原型と完成したものが大幅に異なる場合もあります。

例文
  • 給料管理システムのプロトタイプをもとに、改良を進めたい。
  • 原型モデルを見たいので、新車のプロトタイプを見せてくれないか?

「起こし絵図」とは”日本古来の簡易模型”

「起こし絵図」は日本に古くから伝わる「簡易模型」のことです。別名「建て絵図」とも言い、伝統的な折り畳み式の簡略的なひな形を指します。

「起こし絵図」は、現代では工業図面やデザインにおける「展開図」のような位置づけで、主に建築関係では天井や壁など立体的に表現するツールとして用いられています。その他、公園やマンションなどを設計する際、人物や樹木などを切り抜いて、枠の中に入れることで、風景や周囲の様子を含む全体像を、多角的に表現する時にも使われます。

「モック」とは用途がやや異なりますが、相手に大まかなイメージを立体的に提供できるのが特徴となります。

例文
  • 新築マンションの起こし絵を作成する。
  • 起こし絵では、噴水や自転車置き場などリアルな様子を多く取り入れよう。

「モック」を作る目的とは?

「モック」の目的は”視覚的に表示し確認する”

そもそも「モック」は、商品の色合いや形、また機能を正式に固めていくプロセスで、なくてはならない工程の一つです。完成アイテムを視覚的に表示することで、具体的に商品化された時のイメージを具体的に掴むことが「モック」の最大の目的と言えるでしょう。

「モック」は商品と同じ素材を使うとは限らない

実際のマテリアルが金属や鉄であっても、軽量素材であるプラスチックや紙などを使って「モック」を作る場合もあります。そのため、正式に商品化されたものが、完全に同じものになるとは限らないのが特徴です。

たとえば、店頭に置かれた新商品の携帯電話の「モック」がプラスチックや紙製だったりすることも多いでしょう。これがまさに「モック」と呼ばれるのもので、顧客は本物の携帯電話でなくとも、視覚的に商品の概要をイメージすることができます。

まとめ

「モック」とは英語の”mock”のことで、いわゆる「モックアップ」の略語として使われています。携帯電話をはじめ、あらゆる工業品やウェブサイトなど制作する際に、実寸大の試作品や模型、また完成形のサンプルとして作るものを「モック」と呼んでいます。

つまり「モック」は、クライアントと制作側との間で、イメージや形を共有できる欠かせない工程でもあるのです。

舞台やお芝居で本番前にリハーサルがあるように、工業デザインや制作においても「モック」は非常に重要となります。あとでダメ出しを受けないためにも「モック」の段階でしっかりとイメージや機能などを確認しておきましょう。