「賽は投げられた」はドラマや歌の歌詞などで比喩的な表現として用いられる「ことわざ」の一つです。ビジネスシーンでも使われますが、本来の意味を知っていますか?
早速「賽は投げられた」を取り上げ、意味と使い方、ことわざが出来上がった背景、例文などを中心に、英語表現を含めて紹介します。
「賽は投げられた」の意味と使い方とは?
「賽は投げられた」の意味は”後戻りはできない”
「賽は投げられた」の意味は、”後戻りはできない・ものごとが始まってからではどうしようもない”という状況です。広く考えれば「考えている暇はない」「あれこれ迷う余裕がない」ということでもあります。
また、ことの強弱によっては「もう、運命に任せてやるしかない」という、「決意」の意味で使われることもあるでしょう。
そもそも賽とは「サイコロ」のこと
「賽は投げられた」の「賽(さい)」とは”博打で使用するサイコロ”のことです。もともと「勝敗を決めるためのサイコロは、もう既に振られている」という意味から、”もはや、進むしかない・断行するしか道はない”ということを表現することわざとして使われるようになりました。
ラテン語で使われた言葉
「賽は投げられた」は、古代ローマ時代に放たれた言葉の一つです。ユリウス・カエサル(シーザー)が元老院の召喚命令に反旗を翻し、軍隊を率いてルビン川を渡る際にラテン語で「alea iacta est(賽は投げられた)」と言ったことが語源となっています。
当時、北の防衛線として知られていたルビコン川を、軍隊と共に渡る行為は禁止されていました。そのため「もう後戻りはできない」と追いやられた状況に対し、口にした言葉がラテン語の「賽は投げられた」であったのです。
「やるしかない」の状況で活躍
「賽は投げられた」は古代ローマで進撃の際に使われた言葉ですが、現代のビジネスシーンでも「やるしかない」という状況下で使われることわざでもあります。
たとえば、スタッフの人数が大幅に足りない状況でゴーサインが出された新店舗開店、競合が渦巻くマーケットへの新規進出、自分の能力を上回る仕事のオファーに「できます!」と思わず言ってしまったこと、これらは全て「賽は投げられた」という状況を指しています。
「断行するしかない」という状況は「決意の確認」へと結びつくと考えられますが、ビジネスシーンでは厳しい状況だからこそ「運命の後押し」が必要なこともあるのかもしれません。
「賽は投げられた」の例文5選とは?
ビジネスシーンでの「賽は投げられた」を使った例文
それでは、ビジネスシーンでの「賽は投げられた」を使った例文を挙げてみましょう。
- 賽は投げられたが、まだまだ交渉する余地はあると捉えよう。
- 月の売り上げ目標をはるかに高く設定してしまった。まさに、賽は投げられただ。
- 自分から飛び込んだ未経験の営業職。賽は投げられた。
- 商談への賽は投げられたが、話の持ちかけによっては良い返事がもらえるかもしれない。
- 社長令嬢との結婚が正式に決まった。ついに賽は投げられたということか。
「賽は投げられた」の類語とは?
「事は進み始めた」で言い換える
「事は進み始めた」はものごとが進行してしまった状況において「途中で止めることはできない」「やり遂げるしかない」という意味のある熟語です。
- 具体案が定まっていない状況であったが、事は進み始めたようだ。
- 大幅な人事異動で社内は混乱をしていたが、バタバタと事は進み始めた。
「始まったからには仕方がない」で言い換える
「始まったからには仕方がない」はやや諦めに近い気持ちを含む類語となります。しかし、状況を把握し、一旦は諦め、そして決意へとつながるなら、「賽は投げられた」の全体の意味にかなり近い表現となるでしょう。
- 仮契約のままであるが、取引が始まったからには仕方がない。
- 始まったからには仕方がないが、最後まで諦めずに目標を遂げたい。
「賽は投げられた」の英語表現とは?
「賽は投げられた」の英語表現は”The die is cast”
「賽は投げられた」を英語で表現すると“The die is cast”です。「die」はサイコロの単数形で、日本で聞きなれている「dice=ダイス」は複数形となります。「ものごとが始まったら、どんなことがあっても最後までやり通さなければならない」の意味を持つ定型文です。ぜひ、覚えておきましょう。
職場で使える英文例
状況に応じて職場でアレンジして使ってみて下さい。
- The new project has been commenced just then. Oh well. The die is cast.
新しいプロジェクトがついに始まっちゃたよ。もう、やるしかないね。 - The die is cast. We are at the headquarters to discuss about the issue with CEO now..
賽は投げられたの心境だ。CEOと問題について議論すべく本社にいるよ、私たち!
まとめ
「賽は投げられた」の「賽(さい)」はサイコロのことで、ことわざの全体の意味は「勝負を決定するサイコロは振られた」そのため「後戻りはできない」です。
ビジネスシーンでは「断行するのみ」という状況は多くあるでしょう。自分の気持ちを「やるしかない」という方向へ完全にシフトさせるにも、座右の銘として心に置いていくのも良いかもしれません。