ニュースやドラマでよく聞く「検挙」を、なんとなく「逮捕」と同じ意味だと思っている人もいるかもしれません。また「検挙率」「検挙人員」などの言葉も「検挙」の意味を把握していないと理解が難しいでしょう。「検挙」の意味や「逮捕」「書類送検」との違いをご説明します。また、類語「摘発」もご紹介します。
「検挙」の意味と例文とは?
「検挙」の意味は”被疑者を特定し捜査すること”
「検挙(けんきょ)」の意味は、“警察官・検察官などが被疑者を特定し、取り調べること”です。逮捕した場合だけではなく、在宅での取り調べも含まれます。また、殺人などの凶悪事件だけではなく、交通違反などにも使われる言葉です。ニュースや警察内部で一般的に使用される表現ですが、法律用語ではありません。
被疑者(ひぎしゃ)とは、事件を起こした犯罪者ではないかと疑われている人のことです。裁判で罪が確定するまで犯罪者としては扱わないのが原則です。
「検挙」を使った例文
「検挙」を使った例文をご紹介しましょう。
- 毎年、この道路は交通違反の検挙が多いので、標識をもっと大きくした方が良いのかもしれない。
- 家族を傷つけた事件の犯人を検挙するため、刑事さんは懸命に捜査してくれた。
- 密輸の一斉検挙で母が逮捕されてしまった。これからどうすればいいのだろう。
- 証拠不十分で不起訴になったが、検挙されたことが近所に広まり嫌がらせを受けるようになってしまった。早く引っ越すとしよう。
「検挙」と「逮捕・書類送検」の違いとは?
「検挙」と「逮捕・書類送検」の違いは拘束されるかどうか
「検挙」と「逮捕・書類送検」の違いは、被疑者の身柄が拘束されるかどうかです。先ほどお伝えした通り、拘束されるかどうか決まっていない(どちらでもよいため)のが「検挙」です。
- 逮捕:被疑者の身柄が拘束される
- 書類送検:被疑者の身柄が拘束されない
- 検挙 :身柄の拘束はどちらでも良い
「逮捕」とは被疑者を拘束・留置すること
「逮捕(たいほ)」は、被疑者の身柄を拘束・留置することです。検挙とは違って、法律用語になります。逮捕は以下の3種類に分かれます。
- 【通常逮捕】
裁判所に請求した逮捕状を基に逮捕すること。 - 【緊急逮捕】
先に逮捕してから逮捕状を請求すること。重い罪を犯したと思われる被疑者かつ、今すぐ拘束しなければ逃亡や証拠隠滅を防げない場合にのみ認められます。 - 【現行犯逮捕】
犯罪が起きたその場で犯人を拘束すること。逮捕状が不要で、民間人でも行うことが可能です。
「書類送検」とは拘束せず捜査書類のみ送検すること
「書類送検」とは、被疑者をの身柄を拘束せず(逮捕せず)、書類だけを検察官に送ることです。これに対して、逮捕して送検することを身柄送検と呼びます。軽い罪だったり、逃亡の恐れがない場合は、逮捕されずに書類送検になる可能性があります。
警察が被疑者を特定した後、検察官に引き継ぐのが捜査の流れです。その後は、検察官が裁判所へ審理を求めるかどうかを判断します。
「検挙」のかかわる言葉とは?
「検挙人員」とは”検挙された被疑者の人数”
「検挙人員(けんきょじんいん)」とは、事件で検挙された被疑者の人数です。1つの事件に検挙される被疑者が1人とは限りませんので、検挙件数と差が出ることもあります。
検挙人員は、法務省が作成する「犯罪白書」で調べられます。犯罪白書は法務省のWebページでも閲覧可能です。
- この事件の検挙人員は4人だ。
- 〇〇町は検挙人員が増加している。だが、人口も大幅に増加しているので治安が悪化したとは断言できない。
「検挙率」とは”検挙できた事件の割合”
「検挙率」とは、検挙できた事件の割合です。「検挙件数÷認知件数」で計算することで求められます。認知件数とは、警察などで認知されている犯罪の件数です。犯罪全体の検挙率だけではなく、特定の犯罪や地域の検挙率を表記することもあります。
- 〇〇県の検挙率は、全国平均を大幅に上回っている。
- 去年より放火の認知件数が増えているが、検挙件数も伸びているため検挙率には変化がなかった。
なお、その年に検挙・認知された件数で計算するため、年をまたいだ事件が多いと検挙率が100パーセントを超えることもあります。
「検挙」の類語とは?
「検挙」の類語は”摘発”
「検挙」の類語は“摘発(てきはつ)”です。検挙と同じく法律用語ではなく「悪事をあばき、世間に公表する」という意味があります。意味合いには差がありますが、悪事をあばくことは被疑者の特定につながるため、言い換えられる場面もあります。
◇◇氏が脱税で検挙された。
→◇◇氏の脱税が摘発された。
「補導」は言い換えに使えない
「補導(ほどう)」は”正しい方向に導く”という意味でも使われますが、一般的には「青少年の非行を防ぐ警察活動」で用いられます。検挙を含むこともありますが「対象が青少年に限定される」「犯罪をしていない状態での声掛けも補導に含まれる」ことから、言葉の意味合いは大きく違います。検挙の言い換えに使える場面はないと言えるでしょう。
まとめ
「検挙」とは、被疑者を特定し捜査することです。逮捕されてもされなくても「検挙」で表現可能です。
法律用語ではありませんが、「検挙人員」のように検挙がかかわる言葉があり、ニュースでもよく使われます。意味を把握しておけば、ニュースへの理解も深まるでしょう。