イギリスは上級・中級・下級階級の3つの階級に分かれていると言われてきましたが、2013年にイギリスの階級は7つに分けたほうが現代社会に合っているという発表がありました。この記事では、イギリスですでに定着している3つの階級制度の特徴を紹介して、次に新しく提案された7つの階級制度についても解説します。
※この記事の担当:Light1(海外在住20年。イギリス在住経験あり。イギリスのビネガー味のフライドポテトが好き)
イギリスの3つの階級制度とは?
上流・中流・下級階級という3つの階級がある
イギリスの階級制度には、「上流階級」「中流階級」「下級階級」の3つがあります。イギリスには今でも根強く階級制度が生きています。階級は出自と関係していますが、経済との結びつきも強く経済的に裕福だと階級が高くなることもあります。
上流階級は王室と貴族で独占
上流階級は、王室と貴族だけで独占されています。いくら経済的に豊かになっても上流階級になることは基本的にはありません。
しかし上流階級のイメージは時代とともに変わってきました。中世時代では上流階級が国を統制していたため上流階級は別格の階級というイメージがありましたが、現在では階級の壁が少し低くなりました。以前はオペラを観に行くのは上流階級に限るといったイメージがあったものの、現在ではそうした典型的な階級イメージがなくなってきました。
イギリスの階級社会は中世時代から始まる
イギリスの階級制度は中世時代から始まったと言われています。中世時代の産業革命により都市が活発化してくると、市民の中から経済的に実力を得て抜きんでた人々が出てきました。この人々を中流階級と位置付けることにより、中流階級に属さない労働者を下級階級、王室と貴族を上流階級と分けたことがイギリスの階級制度の起源です。
階級制度と国民の割合
現在のイギリスの階級ごとのイギリス国民の割合はおおよそ次の通りです。
- 上流階級(Upper Class):全体の約1%。
- 中流階級:全体の約40%
- 下級階級:全体の約55%強
上流・中流・下級階級の特徴とは?
「上流階級」は王族や世襲貴族が属する階級
上級階級はイギリスの階級制度の中で最も上に位置する階級で、王族や世襲貴族が属しています。
「王族」とは英国王室で、女王夫妻や第1王子のチャールズ王太子夫妻、チャールズの息子のウィリアム王子とその家族とヘンリー王子とその家族になります。
また「世襲貴族」とは昔から爵位を継承してきた貴族のことです。貴族には世襲貴族とそうではない貴族があり、世襲貴族ではない爵位を与えられた一代貴族などは上流階級には入りません。
ただし上流階級の人と結婚すると、別の階級だったとしても上流階級に仲間入りすることはできます。例えばウィリアム王子と結婚したキャサリン妃は中流から上流階級になりました。
「中級階級」とは専門職や実業家が中心のアッパークラス
「中級階級」とは専門職や実業家が中心の階級で、収入的に安定したアッパークラスです。教育水準も高く、ほとんどの人が大学に進学します。
「下級階級」とは労働者階級のこと
「下級階級」は肉体労働を中心とした職業に就き、収入において不安定なため経済的に苦しい生活をしていることが多くなります。また教育水準は低く、大学進学は稀です。
上級・中級・下級階級の違いとは?
【職業】選ばれる仕事や収入が違う
階級の違いは、生活をする上でも大きな違いとして表れます。例えば職業ですが、階級によって選ばれる職業も違います。収入面では、階級が上がるほどに収入が高くなります。
- 上流階級:王室や世襲貴族、大地主で大変な裕福な階級。
- 中流階級:医師や弁護士など専門知識を有する職業。成功しているビジネスマンや実業家など。
- 下級階層:農業や工場、清掃業など、肉体労働が中心で特に地位がない。
【教育】階級によって通う学校が変わる
階級は教育面でも違いがあります。中級階級の人は私立の学校に通い、特に上位の中級階級から上級階級は名門のパプリックスクールに通います。パプリックスクールとは中世のラテン文法学校を起源とする学校で、寮生の私立中等学校です。多額の寄付金を有する場合が多く、ほとんどの卒業生は大学に進学します。
一方、下級階級は学費の安い公立学校に通い人がほとんどで、大学に進学することも少ないです。
【話し言葉】階級によって言葉違いが違う
上流階級と中流階級の中でも上位にいるイギリス人は、クイーンズイングリッシュ(Queen’s English)と呼ばれる英語を話します。特徴としては単語の最後の「r」はアメリカ英語のように巻き舌にして話さないなどがあります。
上位以外の中流階級はクイーンズイングリッシュと訛りが混ざった英語になり、下級階級は訛りのある英語を話します。
新しい階級制度「7つの階級制度」とは?
2013年発表の7つの階級制度
イギリスの階級社会は上級・中級・下級の3つに分かれていましたが、2013年にBBCは7つに分けた階級制度を発表しました。現代社会では、階級は3つではなく7つに分けたほうが相応しいと判断しました。
この7つの階級制度は、職業や収入、資産などの経済的な側面、学歴や教養などの文化的な側面に人脈などの社会的な資本を基準にして分けられています。
- エリート階級(elite)
- 確立した中流階級(established middle class)
- 技術系の中流階級(technical middle class)
- 新富欲労働者階級(new affluent workers)
- 新興サービス労働者階級(emerging service workers)
- 伝統的な労働者階級(traditional working class)
- プレカリアート階級(precariat)
7つの階級のそれぞれの特徴
ここでは7つの階級のそれぞれの特徴を紹介します。
- エリート階級:職業や収入、教育、人脈などのあらゆる側面でトップクラスであり、特に経済的に裕福な人です。大学は世界的にもトップクラスの大学を卒業していて、ロンドンからイギリス南部を中心に住んでいます。
- 確立した中流階級:エリート階級ほどではありませんが、職業や収入、教育、人脈などのあらゆる側面でトップクラスです。大学を卒業して、イギリス全体で占める割合が最も多い階級です。
- 技術系の中流階級: 教育レベルは高くないものの、経済的には恵まれている人が集まる階級です。研究職や薬剤師、パイロットなどの専門的な知識が必要な職種で働いています。
- 新富欲労働者階級:収入はそれほど高くないですが、教育面や人脈面で豊かな階級です。 若く活動的な人が集まっていて、エンジニアなど技術系の職種が多いです。
- 新興サービス労働者階級:経済的には裕福とは言えませんが、教育は受けていて社会的な人脈もあります。主にサービス業に従事している人たちが多く、レストランやカフェ、カスタマーサービスなどの職に就いています。
- 伝統的な労働者階級: 経済的、文化的、社会的な側面から低い位置づけになりますが、ある一定の労働条件のもとで働いています。主な職業としてトラック運転手やケアワーカーなどが挙げられます。
- プレカリアート階級:経済的、文化的、社会的な側面から最も低い位置づけになります。不安定な労働条件で働いていて、年収は約100万円強で清掃業やパートタイマーなどの職種に就いています。
まとめ
イギリスには階級制度が存在していて、イギリス人は自分がどの階級に属するのかを意識したり、意識させられたりすることがあるようです。イギリスの社会構造を理解するためには、階級制度は欠かせない要素だと言えるでしょう。