「腹に一物」の意味と使い方とは?よく使う言い回しと例文・類語も

「腹に一物」とは”腹に一物ある・腹に一物抱える”というように、心の中で何か企んでいること表す時に使われる言葉です。ここでは「腹に一物」の意味の他、使い方と例文、また類語や英語表現とあわせてご紹介します。

「腹に一物」の意味と語源とは?

「腹に一物」の意味は”心に企みがあること”

「腹に一物」の意味は、“心に企みがあること”す。言葉には出さないものの、心の中で何かを企んでいるさまを表しています。つまり、周囲には「何かしら思っているようだが、はっきりとはわからない」ということのたとえが「腹に一物」です。

「腹に一物」は人や物事、状況などを自分の思う方向へ動かすために、策略的に心のうちで思っているため、表面上は何もなく見えます。また「腹に一物ある」はよく見聞きする言い回しです。

「腹に一物」の語源は”腹・一物”それぞれの意味

「腹に一物」の語源は、それぞれ”腹”と”一物”が持つ言葉の意味にあります。

「腹に一物」ということわざでの「腹」とは”本心・心の中”を意味しています。もともと「腹」は精魂が宿る場所として信じられていました。

また「一物」とは、考えや思いを露骨に口に出して言うことができない時に、その代わりとして使われる語を意味します。本心や心の内を開けっぴろげに出来ない時に、置き換えられる”別の言葉・遠回しの表現”が「一物」です。つまり「企み」のことを指します。

「腹に一物」の使い方と例文とは?

よく使う言い回しは「腹に一物抱える」「腹に一物背に荷物」

「腹に一物」でよく使われるのは「腹に一物ある」という定番の言い回しの他、「腹に一物抱える」や「腹に一物背に荷物」があります。

「腹に一物抱える」は”腹に一物ある”と同じような意味を持ちますが、あえて「抱える」を使うことで”心の中で企みをしっかりと強く抱いている”と、言葉のニュアンスをさらに強調しています。

「腹に一物背に荷物」は「一」に「二」を掛けた言葉遊びで、「一物・荷(二)物」とシャレのようにした言い回しです。その他「腹に一物、手に荷物」という場合もあります。

「腹に一物」を使った例文

「腹に一物」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。

  • いつもしかめっ面の部長が笑っている。腹に一物ありそうだ。
  • 彼は腹に一物を抱えている様子だったので、今回はミスを大目に見た。
  • ライバルであるがゆえ、腹に一物がありなのは当然だろう。
  • 疎遠になっていた弟から久しぶりにメールがきたが、腹に一物あるのは間違いない。
  • 腹に一物抱えるそぶりを見せるより、ここてゃ率直な考えをぶつけてみたらどう?

「腹に一物」の類語とは?

類語①「下心」とは”心の奥に深く思うこと”

「下心(したごころ)」とは、基本的には心の奥に深く思うことを意味する言葉です。

しかし、実際的には、表向きとは裏腹に本心で何かを隠していることを表し「下心のある行動」や「下心は見え見え」などというように使われることがほとんどです。そのため、良い意味として使われることはあまりないでしょう。

また「下心」は男女間において、俗的な意味で用いられることが多いですが、「腹に一物」は俗的なニュアンスをもって使われることはほとんどありません。

腹に一物の類語「下心」を使った例文

腹に一物の類語「下心」を使った例文をご紹介しましょう。

  • 表向きは笑っていたけど、何だか下心がありそうな感じがする。
  • 初めてデートに誘われたけど、下心が見え見えだった。

類語②「面従腹背」とは”内心では従わないこと”

「面従腹背(めんじゅうふくはい)」とは、表向きは相手に服従をする姿勢を見せるが、心の中では従わないことを意味します。たとえば、上司からの命令を表面上では好意的に受けるふりをするが、実際は心の中で「従うものか」と逆らうことを表しています。

「腹に一物」と「面従腹背」は、表向きと心のあり方が真逆であるという点では共通しています。

しかし「腹に一物」は”心に何かを企むこと”、また「面従腹背」は”相手に従うふりをして、そうしない”という「服従の有無」にフォーカスしています。それぞれの意味を理解して上手に使い分けをしましょう。

腹に一物の類語「面従腹背」を使った例文

腹に一物の類語「面従腹背」を使った例文をご紹介しましょう。

  • サラリーマンたるもの、面従腹背は慣れっこである。
  • 面従腹背の時代は終わった。これからはハッキリと自分の意思を伝えよう。

「腹に一物」の英語表現とは?

「腹に一物」は英語で”have something up one’s sleeve”

「腹に一物」は英語で“have something up one’s sleeve”を使います。英語圏ではよく使われる定番フレーズで、直訳すると「シャツの袖をまくると、何かが隠れている」という意味になります。

ビジネスシーンでも取引や商談の際に、相手を警戒を促す意図で使われることがあります。「シャツの上からは見えないが、一旦袖をまくると何が見えてくるかわからない」といった、英語ならではのユニークなたとえを用いたフレーズです。

また、口語で使われるやや俗的で言い回しで「smell a rat(ネズミの匂いがする)」があります。主に物事が疑わしかったり、故意に何かを隠しているような状況で使われます。

「腹に一物」を使った英語例文

「腹に一物」を使った英語例文をご紹介しましょう。

  • Just don’t say yes straight away. He might have something up his sleeve.
    イエスとすぐ言うなよ。腹に一物あるかもしれない。
  • My evil sister sounded like having something up her sleeve. She called me darling brother!
    意地悪な妹が「大好きなお兄ちゃん!」と呼んできた。これは腹に一物あるな。

まとめ

「腹に一物(はらにいちもつ)」とは”心の中で企みがあること”を意味することわざです。顔の表情や行動では見られないものの、何かしらの計画や考えが心のうちに潜んでいることを表しています。

とくにビジネスシーンでは、巧妙な取引や策略的な考えを含むやりとりにぶつかることもあるでしょう。相手を疑ってかかる、とまではいきませんが「腹に一物」がありそうな場合は、慎重に物事を対処するように心がけたいものです。