「バラード」の意味とは?ショパンの名曲やエレジーとの違いも解説

「バラード」は、物思いにふけたい時や、静かな時間を過ごしたい時に聞きたいジャンルの一つです。「バラード」と言えば、ショパンなどバラード曲などが挙げられますが、「バラード」の正しい意味を知っていますか?

ここではバラードとは何なのか、英語表記を含め、「バラード」に似たジャンルとの違いなどを解説します。

「バラード」の意味とは?

「バラード」の意味は”語り物的な音楽や歌”

「バラード」の意味は、“語り物的な音楽や歌”のことです。音楽のジャンルの一つです。主に感情や思いを声楽や器楽で表現した「比較的ゆっくりとしたテンポをもつ曲」のことを「バラード」と呼んでいます。

もともと「バラード」とは、ヨーロッパで作られた小叙事詩のことで、中世期に盛んに作られた定型詩を意味します。主に3つの詩節と1つの反歌によって構成され、同じ行を繰り返して綴るのが特徴ですが、そこから「音楽」が付けられ、譚詩曲(たんしきょく)、または譚歌(たんか)として定着したものが「バラード」です。

また「バラード」は”バラード曲・バラードミュージック”という呼称で親しまれ、エレジーやブルースと並び、ギターやピアノなどの器楽を用いて奏でる「ポピュラー音楽の一つ」でもあります。

「バラード」の特徴は”素朴な言葉と詩的なフレーズ”

「バラード」は、何といっても”素朴な言葉と詩的なフレーズ”を使っているのが魅力でしょう。そもそも「バラード」は民衆の間で盛んに広まった物語的な詩であるため、難しい表現や学問的な言葉は用いていません。

また、「バラード」はある程度の体系はあっても、基本的には自由な形式で成り立っています。そのため、曲や歌を作る側からすれば、心から湧き出る感情を淡々と表したり、相手への愛情表現を素朴に描写するにはうってつけのジャンルとも言えます。

「バラード」はフランス語・英語で”ballade”と表記

「バラード」の語源はフランス語の「ballade」で、英語でも同様に表記します。発音的には「バラード」というより「バラッド」に近く、日本語でもそのようにこと呼ぶ場合もあります。つまり、音楽雑誌やメディアなどで見聞きする「バラード」と「バラッド」は同じ意味となります。

「バラード」とは具体的にどんな曲?

バラード曲の帝王といえば「ショパン」

「バラードが聞きたい」と思うなら、やはり「バラード曲」の帝王とも称される「ショパン(chopin)」は外せないでしょう。ショパンは「ピアノの詩人」とも呼ばれ、ピアノ世界では「ロマン派」としても知られる天才ピアニストの一人です。

ショパンが奏でる曲の特徴は、何といってもその「抒情性」の強さです。心に響く豊かなハーモニー、そして美しい旋律を奏でるピアニストとしての技術は高次元に域を超えるレベルと言っても良いでしょう。

ショパンはポーランドの作曲家である父と声楽を好む母のもとで育ち、4歳からピアノを始め、7歳で初公演を踏んでいます。音楽に囲まれた環境が、ショパンを「世界の作詞家・作曲家」へと導いたことは間違いありません。

人々が愛し続けるショパンの「バラード名曲」

ショパンのバラード名曲は数多くありますが、中でも以下の作品が有名です。これらはほんの一例ですが、ショパンの繊細な人柄と、感情を巧みに表現するテクニックが調和した感銘たるピアノ演奏曲です。

ショパンのバラード名曲
  • 幻想即興曲
  • 子犬のワルツ
  • 華麗なる大円舞曲
  • 別れの曲
  • ノクターン第2番
  • 革命のエチュード
  • 雨だれ
  • 英雄ポロネーズ など

「バラード」は邦楽でも人気のジャンル

日本の楽曲でもバラード曲は数多く存在します。儚い恋心や叶わぬ夢など、感情の揺れ動きを詩にたとえ、美しい曲に乗せたバラードは、結婚式や祝いのシーンで最も選ばれる曲でもあるでしょう。

邦楽のバラードも、一般的なバラードと同様に、転調が多く見られるのが特徴です。このような構成を用いて、刻々と変わる心模様や揺れ動く感情を、曲の旋律や調子で表しています。

「バラード」と似たジャンルとの違いとは?

「エレジー」とは”悲歌や挽歌のこと”

「エレジー」は”悲歌や挽歌”のことです。語源はギリシャ語で韻律を表す「elegeia」、さらに「死への哀悼詩」を意味する「elegos」となり、英語では「elegy」、またフランス語で「elegie」と表記します。

もともと「エレジー」は、主に悲しみや嘆きなど「悲哀」を歌った詩や文学を指しますが、一般的に知られるのは、そこに音楽が付けられたものです。

「エレジー」を聞くと、なぜだか心の奥が痛んだり、暗く悲しい気持ちになったりします。「エレジー」も「バラード」と同様に詩や音楽の他、映画や絵画にも見られるジャンルですが、あらゆる感傷的な面を綴る「バラード」とは異なり、「エレジー」は憂鬱な気持ちや悲嘆を表現しているのが特徴です。

「ブルース」とは”アフリカ系アメリカ人による哀愁歌”

「ブルース」はアメリカに黒人に対する奴隷制度があった時代に、アフリカ系民族の中で誕生した歌のジャンルです。「英語」では「blues」と表記し、起源は19世紀のアメリカとなります。

「ブルース」は、アフリカ系アメリカ人に対する過酷な境遇や、それに対しての憂いや嘆きを歌ったもので、詩はもとより、曲調に至っても「哀愁」を帯びているのが特徴です。

もともと「ブルース」の語源となる「blue(ブルー)」とは、悲しく落ち込んだ心や哀情を表しています。そのような気持ちを自身や家族の境遇に照らし合わせて生まれたのが「ブルース」です。

「バラード」と「ブルース」は、曲調的には非常に似ています。しかし、やはり「ブルース」の起源を考えても、色恋への哀愁より、むしろ「人生における不平等な境遇や将来への思い」を嘆いた曲が多いと言えます。

まとめ

「バラード」とは英語のフランス語で「ballade」と表記し、「バラッド」とも呼ばれる詩や音楽のジャンルを意味します。感傷的な気持ちを素朴に表現し、心から歌い奏でるスローテンポな声楽や器楽曲を「バラード」と呼んでいます。

感傷的になった時、また心の叫びを共感したい時などに、「バラード」を聞きたくなりませんか?音楽は日々の生活に欠かせない重要なエッセンスです。その日の気持ちにあわせて、さまざまな音楽や詩に触れていきましょう。