「内縁」とは、婚姻届を出していない同居男女をさします。「内縁」関係を選ぶにはさまざまな理由がありますが、どこからが「内縁」と呼べるのでしょうか?また、事実婚とは何が違うのか知っていますか?この記事は「内縁」の意味や定義、住民票への記載についての解説です。相続や扶養についても解説します。
「内縁」の意味や定義とは?
「内縁」の意味は”何らかの理由により婚姻届を出さない男女”
「内縁(ないえん)」の意味は、“生計をひとつにして共同生活をしているが、婚姻届を提出していない男女”のことです。単なる同棲とは異なり、お互いに結婚する意思があるかどうかが重要です。
婚姻届を提出しなければ法律上は夫婦として認められません。しかし、結婚する意思があっても何らかの事情や理由のために婚姻届を提出できない場合もあります。結婚する意思があるにもかかわらず、何らかの事情で法律上の届ができない男女の権利を保護するためにも用いられる表現です。
「内縁」の住民票記載は”妻(未届)・夫(未届)”
「内縁」を証明する手段のひとつに、住民票があります。「内縁」として認められるためには住民票の記載が重要です。男性が世帯主の場合、男性の欄には「世帯主」、女性の欄には「妻(未届)」と記載します。世帯主が女性の場合にも同じように、女性の欄に「世帯主」、男性の欄に「夫(未届)」です。この記載があることで、「内縁」関係であることが認められやすくなります。
「内縁」関係を認められることによって、公的なサービスや権利を受けることができる場合もあります。住民票を提出する場合には記載しておきましょう。
「内縁」の使い方の例文
「内縁」を使った例文をご紹介しましょう。
- すぐに婚姻届を出せない事情があり、内縁関係での結婚生活をしています。
- あの大物歌手には長年連れ添った内縁の妻がいるらしい。
- 彼女がまだ学生のうちは内縁関係でいますが、卒業したら婚姻届を出す予定です。
「内縁」関係は英語で”partner”
「内縁」の妻や夫を英語で紹介するには”partner”で良いでしょう。ヨーロッパなどでは婚姻関係にこだわることなく事実婚で生活する夫婦や家族も多くいます。そのため、シンプルに「partner」と紹介しても問題ありません。国によっては事実婚に対する法律が整備されている場合もあるため、それほど気にする必要はなさそうです。
どこからが「内縁」と言えるか?
双方に結婚の意思があること
「内縁」関係にあると認知されるには、いくつかの条件があります。そのひとつは、お互いに結婚の意思があること。親族や友人に夫婦として紹介しているなど、第三者がみても夫婦であると判断できる生活をしている場合には、当人同士に結婚の意思があると認められます。
また、子どもがいる場合は認知していることも「内縁」関係として認められやすいポイントでしょう。
共同生活をしていること
「内縁」関係にあると認められるケースとして、共同生活をしていることもあげられます。単純に同居しているだけでは同居人や同棲です。しかし、生計をひとつにするなど、協力して共同生活をしている実態があるかどうかが問題になります。
また、お互いの貞操義務なども含みます。ただし、別居している場合でも正当な理由がある場合には問題ありません。
「内縁」のメリット・デメリットとは?
「内縁」のメリット:姓の変更がいらない
「内縁」関係にはいくつかのメリットがあります。そのひとつは姓を変更する必要がないこと。日本では国際結婚などを除き、婚姻届を提出する場合には夫婦同姓が定められています。そのため、一般的に婚姻届を提出するとどちらか一方が相手の姓に変更します。この場合には、会社での手続きはもちろん、銀行口座から運転免許証に至るまで姓の変更手続きが必要です。
「内縁」関係を選択した場合には、このような煩雑な事務手続きが必要ありません。また、仕事上でも姓が変わることがないため、それまでに培ってきたキャリアが分断されることもありません。
「内縁」関係を選ぶにあたり、姓が変わらないのは大きなメリットのひとつだと言えます。
「内縁」のデメリット:相続や扶養など公的手続きで不利
「内縁」関係を選んだ場合にはデメリットもあります。「内縁」関係にある男女の間に子どもが生れた場合、婚外子(非摘出子)となり、通常は母親の戸籍に入ります。父親の名前が戸籍に記載されるためには、認知の手続きが必要です。
また、内縁の妻は配偶者控除を適用できないため、所得税法上では扶養に入れません。一方、健康保険や厚生年金の場合には被扶養者になることができます。ただし、住民票の続柄に「妻(未届)」ではなく「同居人」としてしまうと、内縁関係が認定されない場合もあるため、注意が必要です。
どちらかが亡くなった場合、財産相続で問題が生じる可能性もあります。遺言書を用意しておいても、相続税に対する配偶者の軽減措置は受けられません。その他のサービスや権利なども認められにくい場合が多くあります。
「内縁」と「事実婚・同棲」の違いとは?
「事実婚」は主体的に婚姻届を出さない
「内縁」と「事実婚」には大きな違いはありません。どちらも夫婦として共同生活をしていながら婚姻届を提出していない男女のことです。
ただし、「事実婚」は当事者が主体的に婚姻届を出さない選択をした状態をさし、「内縁」には何らかの理由や事情で婚姻届を出せない状態というニュアンスがあります。
「同棲」は一緒に住んでいる男女
「同棲」は単に一緒に住んでいる状態をさします。同じ家に住んでいても、結婚の意思はなく夫婦として生活をしているという認識がない男女のことです。
結婚の意思はあるが婚姻届を出していない「内縁」に対し、同居しているが結婚の意思はない状態が「同棲」です。
まとめ
「内縁」とは、”共同生活をしているが婚姻届を提出していない男女のこと”です。お互いに結婚の意思はあるが、何らかの理由や事情により婚姻届を出せない場合を含みます。
「事実婚」も同じく、共同生活をしながら婚姻届を提出していない男女をさします。しかし、「事実婚」は主体的に婚姻届を出さない選択をしているというニュアンスです。
「内縁」関係での結婚は、姓の変更が必要ないというメリットがあります。それまで培ってきたビジネスでのキャリアも分断されることがないため、仕事を続ける上で大きなメリットと言えるでしょう。ただし、公的な権利やサービスが受けにくいというデメリットもあるため、よく考えて選択する必要があります。