「未必の故意」という言葉を聞いたことがありますか?事件を扱うドラマや映画の中で、罪状を下す時に耳にする言葉です。犯罪心理に関係する専門用語の一つですが、意味がよくわからないという人もいるでしょう。
ここでは「未必の故意」や「認識ある過失」について、わかりやすい例を挙げながら紹介します。英語フレーズも載せていますので参考にしてみて下さい。
「未必の故意」とは?
「未必の故意」の意味は”結果的に犯罪になっても仕方ない”
「未必の故意(みひつのこい)」の意味は、“結果的に犯罪になっても仕方ない”ということです。法律用語の一つで、計画的に犯罪を行おうとする意図はないが、結果として犯罪行為に及んでも仕方がないと思い犯行に及ぶ、容疑者の複雑な心理状態を指す言葉です。
たとえば、最初は確定的な殺意や意図が存在しなくても、相手が「もしかしたら死んでしまうかもしれない」と認識し、あえて犯罪行為を実行すること表す言葉となります。
「未必の故意」は最初は犯罪を希望していない
「未必の故意」とは、最初は犯行を希望していないのが特徴です。つまり、当初は確定的な殺意や動機はありません。しかし、自分がこれから罪となる行為をしてしまい、また相手を傷つけてしまうという可能性を認識しながら、「結果的に犯罪に及んでも構わない、差支えない。」と思うことを指します。
犯罪となる事実が発生する危険性があると思いながら、もしそうなっても、それはそれで良いと思うのが「未必の故意」です。
「未必の故意」で有罪になる例
たとえば、確定的な殺意や動機を持たない元交際相手の男性が、相手の女性「死ぬかもしれない」という可能性を認識しながら犯罪に及んだ場合は「故意」と判断され、「殺人罪」が適用されます。
また、車の暴走運転で通行人を殺傷してしまったケースでは、「通行人を傷つけてしまうかもしれない」という認容が存在するため、過失犯ではなく「故意犯」として扱われることがあります。
「認識ある過失」の意味とは?
「認識ある過失」とは”犯罪が起こる可能性を軽率に考える”
「認識ある過失」と「未必の故意」は非常に似た言葉ですが、「認識ある過失」は”罪という事実が起こるかもしれない。しかし多分問題ない、大丈夫だ”と思うことを意味します。こちらも「未必の故意」と同じく、重要な法律用語の一つです。
ある行為をすれば、罪に触れることを認識していながら、それを防ごうとする努力をせず、結果的に違法となり、罪に問われるという法律上の原則を指します。
つまり「未必の故意」と「認識ある過失」は、”犯罪が起こる危険性があるかもしれない”と思う心理状態は共通しています。しかし「認識する過失」は、軽はずみな感覚で”おそらく大丈夫”と軽視してしまうのが特徴です。
「認識ある過失」が有罪になる例
たとえば、車を運転中、50m先に一人の子供が道端で遊んでいるのが見えます。運転者は「たぶん、道路に飛び出してこないだろう」「たとえ飛び出しても、軽くよければいい」と、状況を軽率に状況を捉えるようなエースが「認識ある過失」の例です。
この場合「自分に罪の意識がなく、自分は大丈夫である」と思っています。罪の意思はなく、もともと犯罪を受け入れていません。そのため、故意犯は適用されず「過失犯」とみなされます。
「未必の故意」の英語表現とは?
「未必の故意」は英語で”willful negligence”
「未必の故意」を英語で表す時は“willful negligence”が一般的です。英語圏では「認識ある過失」と同等のニュアンスで使われる法律用語の一つです。「willful」は”意図的な、故意の”、また「negligence」は”義務を怠ること、不注意”という意味があります。
ちなみに「認識ある過失」は英語で”reckless disregard(無頓着に無視する)”といいます。あわせて覚えておきましょう。
「未必の故意」を使った英語例文
「未必の故意」の英語表現を使った例文をご紹介しましょう。
- 容疑者Aは義理の父親への未必の故意があったことを認め始めた。
The suspect A started admitting his willful negligence of his father in law. - 未必の故意が適用され、元妻を殺害した殺人罪に問われることになった。
I have been charged of murder my ex-wife applied to willul negligence
まとめ
「未必の故意」とは”最初は確定的な意図はなくとも、犯罪となるような事実が発生してしまい、もしそうなっても構わない”という容疑者の心理状態を表す言葉です。
また「認識ある過失」とは”罪となることが発生するかもしれないと思いながら、おそらく大丈夫であると軽視してしまうこと”を指します。
「未必の故意」は複雑な犯罪心理であるため、理解しにくいこともあるでしょう。初めは殺意がなくても、結果的に犯罪に及んでしまい、それはそれで仕方がないと消極的に受け入れれるような心の状態が「未必の故意」です。難しい言葉の一つですが、ぜひ理解を深めておきましょう。