あの人はいつも「日和見」だから、などという噂を聞いて、わかったようなわからないような気がする人も多いかもしれません。「日和見」の語源を知れば、その意味や使い方に納得することと思います。そこでこの記事では、「日和見」の意味や語源の意味を解説します。あわせて使い方と例文についても紹介しています。
「日和見」の意味・読み方・語源とは?
「日和見」の意味は”有利なほうにつこうと形勢をうかがうこと”
「日和見」の意味は、“有利なほうにつこうと、形勢をうかがうこと”です。また、そのような考え方のもと、自分がどちらにつくかをすぐに決めない態度も「日和見」と呼びます。
「日和見」の読み方は”ひよりみ”
「日和見」の読み方は“ひよりみ”です。「和」が一字であれば”より”とは読みませんが、「日和」の熟語となったときのみ、”より”と読みます。
「日和見」の語源は”天気の状況をうかがうこと”
もともと「空模様・天気」のことを「日和」、その様子をうかがうことを「日和見」といいます。
江戸時代には、船の運航を検討するために船頭が小高い丘の上で雲の動きや潮の流れなどを観測していました。これが転じて「物事の成り行き、形勢・雲行きをうかがう」、あるいは「優勢なのはどちらなのかの様子を見て、つく方を決めること」という意味になったのです。
「日和見」の使い方と例文とは?
「日和見」は自分に都合のよい態度を表す
「日和見」は、有利なほうにつこうと形勢をうかがったり、そのような考え方から自分の態度を決めずにいることを表現する言葉です。よりわかりやすくいえば「自分に都合のよい態度」をとる人のことをいいます。
- あの人はいつも日和見だから、あてにならない
- 損はしたくないからとりあえず日和見と決め込んだ
- どうやら日和見主義の人ほど出世するようだ
「日和見的な〇〇」の使い方
日和見の態度を取ることを「日和見的」と表現することがあります。たとえば「日和見的な犯罪」とは、状況や成り行きによってころころと言動を変えるようないい加減な態度であっさりと行われる犯罪、といった意味合いで使われます。
「日和見」を使った表現とは?
「日和見」の態度を”日和見主義”という
定まった考えを持たずに、その時々の情勢に従うこと、あるいは形勢をうかがい、自分の都合のよいほうにつく態度を「日和見主義」といいます。
「日和見」の語だけでも「日和見主義」と同じ意味を持ちますが、そのような考え方の持ち主であるという意味を際立たせたい場合には、「日和見主義」を用いることが多いといえます。
また、日和見主義の人を日和見主義者といい、「人の不幸につけこむ日和見主義者」などの使い方で、ネガティブな意味で使われます。
体調や状態で変わる「日和見菌」と「日和見感染」
代表的な腸内細菌として、3種類の俗称がよく知られています。「善玉菌・悪玉菌」そして「日和見菌」。「善玉菌」は消化吸収の補助や老化防止などよい影響がある菌で、「悪玉菌」は身体に悪い影響を及ぼす菌です。
そのどちらでもないのが「日和見菌」で、腸内の状態によってよい働きをしたり悪い働きをしたりする、まさに「日和見」の菌。
また、普段は感染症を起こさないような病原体が、免疫力や体力が落ちた時に感染する「日和見感染」という言葉もあります。
「日和見」の類語とは?
筒井順慶の「洞ヶ峠を決め込む」は日和見の代名詞
京都と大阪の堺に「洞ヶ峠(ほらがとうげ)」という峠があります。この峠が、ある伝説によって「日和見」の代名詞となっています。
その伝説とは、織田信長の没後、明智光秀と羽柴秀吉の軍が対陣した山崎の戦いにおいて、双方の軍から加勢を依頼された大名筒井順慶が、最終的にどちらにつくかを洞ヶ峠で日和見したというものです。
そのことから、日和見することを「洞ヶ峠を決め込む」あるいは「洞ヶ峠」と表現するようになりました。他にも、「筒井順慶を決め込む・日和見の順慶」という表現もあります。
日和見の態度は「優柔不断」とも表現できる
「優柔不断(ゆうじゅうふだん)」とは、気が弱かったりぐずぐずしていたりして物事の決断ができないことをいいます。
日和見は、優勢なほうにつこうと形勢をうかがう態度ですが、物事の決断をぐずぐずと先延ばしにするという意味では優柔不断な態度と共通します。
「日和見主義」の類語は”ご都合主義”
「ご都合主義」とは、主張や考え方に一貫性がなく、その時々で都合よく態度を変えることをいいます。自分の都合のいいようにしか行動しない人のことを指すこともあります。
そのような意味で、「ご都合主義」は”日和見主義”と同じ意味であるといえます。
「日和見」の英語表現とは?
「日和見」は英語で”waiting and seeing”
「日和見」は英語で「waiting and seeing」「wait-and-see」「sitting on the fence」などと表現します。
「wait」は”待つ”、「see」は”見る”という意味で「待って見ていること(日和見)」。また、「sit」は”座る”、「fence」は”垣根”という意味から「垣根に座って(見ていること)」(日和見)となります。
また、日和見主義は英語で「opportunism」、日和見主義者は「opportunist」です。
- 彼はいつも日和見な態度をとる。
He always takes a wait-and-see attitude.
まとめ
「小春日和」「日和の良い日」などと「日和」は天候を指す意味で使われます。特に船を出航させるかどうかを判断するために天候をうかがうことを「日和見」といい、天気が良い状態のとき船を出す判断をしたことから「有利なほうにつく」ことを日和見と表現するようになりました。
本来の「日和見」は、ずるい選択をするという意味はなかったものが、有利なほうにつくということが自分勝手であるという解釈となって、状況を見定めて有利なほうにつこうとする態度のことを指して使われるようになったと思われます。
このような、意味が転じて2つの意味を持つ言葉は、本来の意味からひとひねりされた意味合いに変化してゆくことが多いようです。