「庶子」とは?もう戸籍に使わない?対義語「嫡子」との違いも

「庶子」とは時代によって意味が変わってきている言葉です。現在は「婚姻関係にない男女の子」という意味ですが、一般的には使用されません。かつては戸籍に関する正式な用語でしたが、今は別の語が使われるようになりました。「庶子」のそれぞれの意味や使う場面を紹介しましょう。また、対義語「嫡子」や類語「私生児」との違いも説明します。

「庶子」とは?

「庶子」の意味は”婚姻関係にない男女の子”

「庶子(しょし)」の意味は、“正式な婚姻関係にない男女の子ども”です。婚姻届を提出していない内縁状態の夫婦や、愛人との間に生まれた子どもを意味します。

現在では差別的だとされ、一般的には使用されません。

戸籍に関する古い意味は「父が認知した本妻以外との子」

戸籍に関する用語としては、かつては「父親が認知している、本妻以外との間に生まれた子ども」という意味で使われていました。認知したことで、法律上でも父親と子ども(庶子)は親子関係が認められます。

第二次世界大戦後の法改正で、戸籍に関する用語としては廃止されています。

古代・中世では「跡継ぎ以外の実子」

古代・中世時代の「庶子」は”跡継ぎ以外の実子”という意味で使われていました。両親の婚姻条件は関係ありません。

日本史では、古代は奈良・平安時代、中世は鎌倉・室町時代を意味します。ただ、それより後の江戸時代でも、この意味で「庶子」を使っていたとも言われています。また、古代の貴族社会ではこの意味で用いられていないという説もあります(「本妻以外の子」という意味で使われていました)「古代・中世」というくくりは大まかなものだとイメージした方が良いかもしれません。

「庶子」の使い方と環境とは?

現在は「庶子」は歴史用語として使う

現在、庶子は歴史の研究、あるいは歴史ドラマなどのフィクション作品に使われています。基本的にはその時代の「庶子」の意味で用いられますが、フィクション作品の場合は注意が必要です。読者の分かりやすさを優先し、時代に関わらず現在の意味で使われることもあり得ます。

かつての日本では、跡継ぎの確保のために庶子を設けることは一般的でした。庶子が家督を継ぐことも珍しくありません。例えば、戦国時代の有名人である織田信長、豊臣秀吉、徳川家康は、3人とも庶子を跡継ぎにしています。

現在使う用語は「嫡出でない子・非嫡出子」

現在、庶子の代わりに法律で使われる言葉は「嫡出でない子」や「非嫡出子」です。「嫡出(ちゃくしゅつ)」とは、正式な婚姻関係のある夫婦の間に生まれることです。

庶子を使わなくなった理由は「差別的なため」だとされています。古い戸籍を請求しても「庶子」の記載は塗り潰したり空白に変えたりして対応しているようです。

「庶子」と対義語「嫡子」の違いとは?

「嫡子」との違いは”家督を継ぐか”

庶子の対義語は「嫡子(ちゃくし)」です。「家督を継ぐか継がないか」という点で反対の意味の言葉になっています。

「嫡子」は”家督を継ぐ子”という意味です。「てきし」と読むこともありますが、あまり一般的ではありません。

「両親が婚姻関係にあるか」で使い分けることもある

「嫡子」にはもうひとつ意味があります。「本妻の生んだ子ども」という意味です。この場合は「両親の関係」において対義語の関係になります。

こちらの意味の場合は「嫡出子(ちゃくしゅつし)」とも呼びます。法律に関する用語としては「嫡出子」の方が適切です。

「庶子」と類語「私生児」との違いとは?

「私生児」との違いは”父親が認知しているか”

庶子の類語は「私生児(しせいじ)」です。違いは「父親の認知の有無」になります。本妻以外の女性が生んだ子どもを、父親が認知した(法律上も親子になる)場合は「庶子」、しない場合は「私生児」と呼びます。

「私生児」も現在は使われない用語

「私生児」も、庶子と同じで以前は戸籍に使う用語でした。第二次世界大戦後に、庶子とともに廃止されています。理由は庶子と同じく「差別的なため」です。法律上の父親がいない私生児は庶子以上に苦しい立場で、差別的な扱いを受けやすかったと言われています。

現在、法律用語では父親の認知の有無で言葉を分けていません。どちらも「嫡出でない子」や「非嫡出子」と呼ばれています。

「庶子」の外国語表現とは?

「庶子」の英語表現は”illegitimate child”

「庶子」の英語表現は“illegitimate child”です。「illegitimate」には複数の意味がありますが、ここでは”嫡出でない”という意味で使われています。

古い辞書には「bastard」と記載されているかもしれませんが、これには注意が必要です。「bastard」は現在は”嫌なやつ・気に入らないやつ”などの悪口に使われているためです。今も「庶子」の意味で用いられていると思って使用すると、トラブルにつながる可能性があります。

「庶子」の韓国語表現は”사생아”

「庶子」の韓国語表現は“사생아”です。「혼외자」という表現もあります。韓国は女性の貞操観念を重視する歴史があるため、庶子は強い差別を受けていたと言われています。

まとめ

「庶子」とは現在では歴史的な言葉として、過去の研究や、歴史ドラマ・小説などで接する言葉になっています。時代によって意味が変わるため、注意して読み取りましょう。

現在では差別的な言葉とされ、代わりに「嫡出でない子」「非嫡出子」という用語が使われています。